1384 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

あの夜を心に抱いて

androp Billboard live Tokyoは唯一無二の最高の夜だった

2017年12月11日。

あの日からもう二週間もの時が過ぎた。それでも、あの日の一夜の光景は私の中から全く色褪せることはない。
忘れたくなくて、少しでも多くのことを覚えていたくて、あの日のことをここに記しておこうと思う。一人でも多くの方に、彼らのくれた素敵な時間のことを知ってもらえたら嬉しい。

あの日、私はandrop Billboard live Tokyo 【1st stage】に足を運んだ。研究室で実験に追われ、迫り来る就職活動に焦りながら闇雲にインターンシップに応募し、落とされ続けた日々。やっと合格して参加したインターンシップでは、自分の至らなさや不甲斐なさに落ち込んで、深夜に泣いてしまうほど。そんな私にとって、このライブはずっと心の支えだった。

12月11日。この日になれば、andropに会える。内澤さんの声が聴ける。
そう思えば、なんだって出来る気がした。未来が怖くてたまらなくても、前を向けると思った。andropの曲を聴いて励まされて、この日のためだけに私はひたすら頑張り続けていた。

そんな時、ライブ前日に偶然、「内澤さんの調子が悪いらしい」というツイートを見た。ビルボードライブの前日に開催されたイベントに出演した内澤さんは、高音が全く出ていなかった、と。相当喉の調子が悪そうだ、と。

頭が真っ白になった。スマホを持つ手が震えて、あんなに楽しみにしていた明日のライブに行くのが、怖くなった。
そう、怖かった。大好きな人が、苦しそうに歌う姿を見るのが怖くてたまらなかった。私にとってandropは、内澤さんはヒーローで、私は彼が楽しそうに歌う姿が大好きだったから。そんな人の苦しそうな姿なんて、見たくないし、見ていられないんじゃないかって思ってしまって。そんな風に思う自分が嫌になって、色んなことを考えてしまい、前日の夜はなかなか眠れなかった。

そして迎えた当日。
「もしかしたら中止の連絡が来るかもしれない」と、覚悟していた。それでも良いとさえ、思っていた。楽しみよりも緊張が勝って、不安に押しつぶされそうだった。
中止の連絡はないまま、会場に着く。大人で素敵な空間と、席からステージへの近さに、不安でいっぱいの胸に期待が広がっていく。「きっと大丈夫」と何度も自分に言い聞かせて、彼らが登場するのを待った。

ビルボード用の衣装に身を包んで現れたandropはとても輝いていて、内澤さんがステージに立ってくれた時点で既に泣きそうになった。聴いたことのないイントロから始まる、何度も聴いた大好きな曲。イントロだけでは何の曲かわからないほどの、ビルボードアレンジのクオリティの高さに驚くと同時に、内澤さんの歌声に胸が苦しくなった。

掠れて、いつもより心なし低く思える声。低音は綺麗に出ていたけれど、どこか引っかかってるみたいな、苦しそうな声。振り絞るように、叫ぶように、無理やり出したとすぐに分かってしまうような高音を聴いた瞬間、涙が溢れた。
「こんばんは、andropです」
そう言った声も、掠れていて。歌うことだけじゃない、話すことすらも辛いほど、今の内澤さんの調子は悪いんだと、始まってすぐに気付いてしまった。

ほぼ1曲ごとに挟まれる長めのMCも、喉を休めるためだとすぐに分かった。私だけじゃなくて、お客さんのほとんどが早い段階で内澤さんの異常に気付いたと思う。みんなが心配そうな顔をしてるのが見えたのか、MCで内澤さんもメンバーも、常に笑顔で冗談を言ったりして、暗い雰囲気にしないようにしてくれていた。おかげで、不安ながらもいっぱい笑えたし、段々素直にライブを楽しめるようになってきた。

だけど、時間が経つにつれ、内澤さんの喉は悪化していくように思えた。高音が当たらなくなり、無理して声を絞り出す歌い方は、すごく辛そうだった。掠れも酷くなってきて、本当に苦しそうで、それなのに彼はステージで歌い続けて。
「ありがとう、もう十分だよ。もういいよ、それ以上頑張ってくれなくていいよ、ありがとう。もう十分だから。ありがとう」
そんな気持ちが溢れて、涙が止まらなくなった。だってもう、明らかに喉がおかしかったから。風邪とか、そういうレベルの話じゃないって、気付いてたから。明らかに喉に異常があって、どうしようもないんだなって。これ以上歌ったら、喉が潰れちゃうんじゃないかって怖かった。どうしてこんなにも懸命に、歌ってくれるんだろうって、もういいのにって、涙は流れ続けた。

足でリズムを頻繁に取りながら、片手でマイクを握りしめて、叫ぶように、らしくない歌い方で歌い続ける内澤さんの姿は、とても苦しそうで辛そうで痛々しくて。でも同時に、恐ろしいくらい神々しかった。気迫みたいなものも、すごく感じた。音楽に、歌に命をかけてると言っても過言じゃないほど、鬼気迫るものがあった。その姿は、今もはっきりと思い出せる。きっと、一生忘れない。それほどまでに、凄まじかった。すごいものを見てしまったと思った。

バンドではないけれど、私も音楽を、楽器をやっていた経験がある。調子が悪い時にステージに立つことが、どれだけ恐ろしく勇気のいることか、それなりに理解しているつもりだ。メンバーにも申し訳ないし、自分に腹が立って仕方がないし、なにより悔しい。期待されている分だけ、ステージに立つ決断をするのは、怖い。

それなのに、内澤さんは、笑顔でステージに立ち続けた。どんなに調子が悪くても、喉のことには一切触れず、歌い続けた。MCでは、笑顔で私たちを笑わせてくれた。こんなことが出来る人は、滅多にいないと思う。本当に優しくて、強い人だと思った。
「今日は本当に、ありがとうございました」
そう言って深々と礼をして、去っていく姿に、手を振り続けた。ありがとうと何度も心の中で言い続けた。

【2nd stage】が、喉の不調のためにライブ中止になったと、帰ってから知った。枯れたと思っていた涙が、また溢れ出した。
【1st stage】は、本当に、ギリギリまで頑張って歌ってくれてたんだって思ったら、涙が止まらなくなった。同時に、歌い続ける内澤さんの姿が浮かんで、胸がいっぱいになる。痛々しくて、でも信じられないほど神々しい姿。言葉にできないほどの想いを、私は確かに受け取って、大きな勇気をもらった。凹んでなんかいられない、落ち込んでなんかいられない。私も、内澤さんのような、強い人になりたい。研究も、就職活動も、なにもかも、頑張れると確信めいたものを感じた。いや、もっと先、これから辛いことがあっても大丈夫と思えるほどに、懸命に歌い続けるあの姿に、私はたくさんの勇気をもらった。

今まで多くのライブに行った。どのライブも、素敵で大切な時間をもらった。それでも、あの夜は、その中でも特に大切で、唯一無二の素敵な時間だった。

内澤崇仁というひとりの人の、本質に触れた気がした。andropというバンドの、強固な絆を見た。本当に、すごいものを見させてもらった。あの夜を、きっと私は一生忘れない。永遠に、心に大切に抱いていく。

たくさんの想いを伝えてくれてありがとう。今までも、これからも、ずっとずっと、andropが、内澤さんが大好きです。

素敵な時間をありがとう!

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい