1147 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

泥だらけになっても進め、The Mirraz

そして出来ることならラブリーな歌で踊り続けて

今年のミイラズは誰よりもキレた活動をしていたと思う。

というかここ何年かの音楽変遷もマジでキレてんなと思っていました。ゼロ年代の洋楽インディーを現在進行形で取り入れながら、ヒップホップを経由した軽快?なメロディに時事ネタと超一人称的な歌詞をぶち込んで、それでいてシンプルなコードでめちゃくちゃ歌モノをやっていたThe Mirraz。

そんなミイラズは2015年9月に”マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。“をYouTubeにアップ、当時流行りまくっていた所謂EDMに手を出す。そこから2年間、シンセサイザーを全面に押し出し続けてアルバムを3枚作り、今年2月にはその文脈でフルアルバム『ぼなぺてぃっ!!!』をリリース。

すると、そこから2ヶ月と待たずして事務所とレーベルを設立して独立して、エイプリルフールに全曲ギターロックに振り切った(戻った?)フルアルバム『Mr.KingKong』を突如リリース。5月には新曲を毎週リリースして、7月にはミニアルバム『バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby』をリリースすると、タイトルの時点で目が回ってきそうだけど8月にも同アルバム収録曲のリミックスを毎週リリース。そして、10月に再びミニアルバム『ヤグルマギク』をリリースしたと思えば、12月にフルアルバム『RED JACKET』をリリース。

会社の後ろ盾もなければ、何かしら活動しないとロックバンドとして倒産する今のミイラズは、Mステに一度でも出たことがあるバンドとは思えないくらいキレてる。リリースを追っただけでもこの通りで、ミイラズのフロントマンであり作詞作曲者でありエンジニアでありデザイナーであり事務所の社長である畠山承平はブログで「自分に印税が支払われなかった問題」やバンドのこれまでの裏側や低迷期を洗いざらいぶちまけて、ライブの物販で古い衣装を売ったり、YouTubeで長尺の花見やら釣りのよく分からない動画を公開したり、メンバーはライトノベルゲームを作ったり、本当にブチギレてる。
 

なんとなく知ってはいたけれど、僕がファンになったのはミイラズがEDMに手を出し始めた頃だった。

EDMに着手したミイラズのそれは一般的にEDMと呼ばれる音楽とは別物だった。そして、それまでミイラズとあまり変わってなかった(と今は思う)。リフはシンセサイザーで鳴らされ、ビートを保ちながら、サビ前にビルドアップを挟んだだけの今まで通りの曲。だけど、アークティック・モンキーズのパクリという先入観でまともに聴いてこなかった僕には、その新しい音楽がかっこよく聴こえました。

”マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。“の歪みまくったベースとサイレンみたいなシンセサイザーが超ダークな音で鳴ってるリフ。初めて聴く。16ビートで繰り返される、重いのか軽いのかよく分からないリフにくだけた日本語が定員オーバーってくらい乗せられていて、面白い。ちょっと笑える。歌い出しは〈マジかーそう来たか、やっぱそうきますよね はいはいですよねそうですよね〉だし、サビなんか〈やんなっちゃうやんなっちゃうやんなっちゃう♥〉だし。妙にアッパーで、狂騒的で、あれ、ちょっとエモい?なんて。〈殺し合いなんてしたくはない だけどむかつく奴マジ殺したいの〉でなんとなく、ハッとする。ミイラズの良さに少し気がつく。

と、音楽性の違いに戸惑ったファンが離れていくのとは遡行して音源を漁って、僕はまんまとミイラズのファンになりました。音楽性の違いに戸惑ったファンがいるかは知らないけど。

この音楽性の変化はミイラズらしさのいくつか、反復するサビのフレーズやリフ回し、16ビートの歌モノといった側面と相性が良いのだろう。また、EDMのテンポ感(というか最近の洋楽の流行?BPM120前後)とシンセサイザーの導入も大きい。その決して速くないテンポ感とシンセサイザーのきらびやかな音色によってミイラズの、人間も人生も自分もみんなクソ、みたいな斜に構えた厭世観、だけどそんな世の中で生活は続いて、君のことは好きだし、みたいな捻くれた諦観も新しい表現を手に入れている。

例えば、2015年にユーザーが自由に値段を決めることができる投げ銭方式で発表された『しるぶぷれっ!!!』より”葬式をしよう”では、BPMをさらに100前後までおとして、その過剰にキラキラキラキラするシンセサイザーの音と高層ビルから人が飛び降りてグチャグチャに潰れたみたいなスネアのベチャついた音に、〈さぁ葬式をしよう〉と繰り返す歌う畠山承平の声が中毒的で、変に心地のいい違和感が頭から離れなかった。抑圧された平熱の、ないふりをしている感傷というか。


さぁ葬式をしよう
このゴミ捨て場のような星の上で
葬式をしよう
葬式をしよう
葬式をしよう
醜く

ただ、その変化はやはりかつてのミイラズの簡単なコードで粗削りながら不条理や愛を、言葉を選ばずに言葉数を多めに歌ってきたロックバンドとしてのイメージとは相容れない。その芯のような部分が決して変わっていなくとも。ミイラズの敗因、畠山承平がEDMについて「結果は惨敗(ブログより)」と語ることになった一因はそこにあると思う。

EDMに着手する1年前にリリースされたフルアルバム『OPPORTUNITY』は全曲シングル並みのクオリティでアレンジやミックスも凝ってあり、バラエティにも富んで邦楽に大きく寄せた作風だった。しかし、売り上げには全く結びつかなかったらしい(僕はこのアルバム大好きですけど)。

その理由も、EDMが報われなかったのと同じだろう。凝りすぎて、そのパンキッシュなイメージにそぐわなかったのだ。完成度の高いミックスと綺麗なアレンジがなされ、複雑でより邦楽らしい構成をした曲が多く、それでいてコンパクトな出来栄えだった『OPPORTUNITY』で、畠山承平の書く歌詞はメジャーという制約はあるのだろうけど、やはり奔放でブレてなくて、浮いてた。そこに違和感があった。

ミイラズは矛盾している。その飽くなき音楽的探究心と、畠山承平の超ワンマンバンドであるがゆえの絶対に変わることのない部分。初期ミイラズが売れたのは、畠山承平の書くへそ曲がりだけど実は誰よりも真っ直ぐな歌詞によるところも大きいだろう。そしてそれが合っていたのはやはり、粗いバンドサウンドだった。あるいは、それは押し付けられたイメージでしかないのかもしれないけれど。

どちらにせよ、上手くなったら、変わったら、何かが損なわれてしまうのだ。
 

そして今年、ミイラズは止まることなく、ギターロックを再び鳴らした。そんなのは誰が決めたと言わんばかりのスピードで作品を発表して、試行錯誤を続けている。似たような曲はあるし似たようなことを言っているけれど、畠山承平はミイラズの音楽を進化させることを諦めてはいないらしい。

『ヤグルマギク』はリフのアルバムだと思う。ストロークスばりのギターの掛け合いは『言いたいことはなくなった』でもやっていたけれど、それをド頭のリフでやっているのはあまりなかった気がする。ドラムパターンにもEDMに取り組んでいた頃の雰囲気がある。そして、独立後の音源はミックスが隙間を埋めながら音の分離がはっきりしていて、ただのリフに収まらない生々しさがある。剥き出しの、今にも破裂しそうな感じ。 “self-Confidence”のリフなんか、何か禍々しいものを吐き出してるみたいだ。

新しいと思った。粗くもない、綺麗でもない、生々しさという選択。劣情?

シンセサイザーの導入が全くなかったことになっている、なんてこともない。8月にリリースされた『バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby』より”月の死体”のセルフリミックス“月の死体(Mad Funk Remix)”では、ハモンドオルガンの和音をベースリフが上り下りして、ディレイがかったドラムが淡々とバスを刻みながら、原曲と同じキャチーでハイトーンなメロディが歌われる。冷んやりとした触感。生モノの感覚。これも今までなかったと思う。そして言葉にも馴染んでいる。こういった鍵盤主体の曲作りは、EDMを経たからこそ日の目を見ていると考えるべきだろう。

今のミイラズの振り幅はすごい。EDM期に発表された『そして、愛してる E.P.』ではトロピカルハウスを取り入れて、またトラップなどよく耳にするチチチと刻まれるハイハットも流用。それは“月の死体(Mad Funk Remix)”でも、その前週にリリースされた”Moon Song Baby (City Funk Remix)”でも使われて、トラップやらを通過したポップミュージック、というより日本的な歌モノとしてという今までにない(他の誰もやっていない?)面白い鳴り方をしている。というか、すごく良いです。

新鮮。今年のミイラズのファンだった僕は毎月毎月が楽しかった。聴き込むまもないほどに、すごい速さで新譜は聴けるしそのどれもが一定のクオリティを保ち、何かしら個人的なお気に入りも見つかる。

さっき書いたミイラズの損なわれてしまったもの、それは確かに損なわれている。だけど、そんなのってただの初期衝動でしかない気もしてくる。成功への渇望、必死、言いたいこと。

畠山承平も分かっているのだろう。(現時点での)最新作『RED JACKET』より”RED”では〈赤い涙流して、こんなんじゃなかったなんて言うなよ〉と歌っている。”DAWN”では、こう歌ってる。


どうせ終わりなんてないから
ただ進み続けるだけ
止まんな

ミイラズは成功を確かなものにする一歩手前で、足を踏み外した。そのままメジャーから転がり落ちて、事務所からも飛び出して、地べたに落っこちた。

たとえそこがまともに立つことすらままならない沼地で、足場なんかなくて、グチャグチャで、いつ足が取られて抜けなくなるか分からなくて、そのまま沈み込んでしまうかもしれないのに、そんな地べたを、ミイラズは自分の足で立って歩き続けることを選んだ。なんなら、走ることにした。

何回転んでも、何回でも立ち上がって欲しい。泥だらけになっても進め。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい