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HYDE – 黑ミサ TOKYO – を観て想うこと。

ふたりのいない「forbidden lover」とL'Arc~en~Cielの未来

L’Arc~en~Ciel(=ラルク)は硬派なロックバンドだと言ったらどれくらいの人が頷いてくれるだろうか。解散報道や不仲説など外野の雑音の絶えないバンドだが、ひとたび音源を聴けばその真摯な姿勢と職人気質な仕事ぶりだけが伝わってくる。そして彼らはその素晴らしい音源をどう聴かせようか、というところまで意識が及んでいるため、ステージ演出・メディア戦略といったエンタメの部分までこだわり抜いてきた。これを硬派と呼ばずに何と呼ぼう。現在はシングルのリリースは年1枚あるかないか、オリジナルアルバムのリリースは5年もない状態だが、そんな状態にあって…いや、そんな状態だからこそ、解散に踏み切らずに律儀にアニバーサリーライブを開催する姿から、4人がどんなに「ラルク」を愛しているかが伺えるはずだ。

さて、この記事では表題の通りL’Arc~en~Cielのボーカルを務めるhyde(大文字HYDEはソロ名義。本文では小文字表記で統一する)のソロコンサートをレポートする。毎冬恒例のこのコンサート(黑ミサ)は、アコースティック編成で北海道・富良野で密やかに行われていたが、今年はhydeのソロ一作目「ROENTGEN」から15周年の節目ということで、12/23-24に幕張メッセでの2days開催および23日には全国映画館でのライブビューイングという大々的なイベントとなった。それでは何故こんなにも長々とラルクについて前置きしたかと言えば、今回はゲストとしてL’Arc~en~Cielのギタリスト・kenを招くというのだ。飄々とした佇まいに口を開けばシモネタのオンパレードの彼だが、彼の流麗なメロディとギターフレーズはhydeの存在と並び立つL’Arc~en~Cielの心臓。様々な理由で動けないラルクに代わってふたりが並んで大規模イベントを行う…彼らふたりの真心と気概、何より特別な夜になる予感を感じずにはいられなかった。

そうして迎えたライブ当日、クリスマス・イヴ。本公演には簡単なドレスコードが設けられていることもあり、お客もそれぞれなりのお洒落に身を包んでいる。せっかくのハレの日に行われるコンサートをより楽しめるように、という粋な呼びかけだ。そんな普段のライブ前とは異なる高揚と一体感を味わいながら会場へ向かうと、まず目に飛び込んでくるのは真紅に染められた広大な客席の床。お洒落は足元からと言うが、ステージ演出も床からはじめるのがhyde流か…!などと呆気にとられつつステージに目を遣ると蝋燭型の照明に、縦長のスクリーンが吊るされたセット。ラルクのそれに比べればいささか地味だが、オーケストラの面々と、何よりお客の衣装が映える厳かで良いセットだ。

定刻を少し過ぎたころ、hydeがオーケストラを引き連れて登場。椅子に腰掛けてソロ一作目「ROENTGEN」の収録曲を歌い上げる。この「ROENTGEN」は元々オーケストラアレンジを施した、贅の限りをつくしたような1枚。これを生で聴ける日が来るとは…当時よりもねっとりと脂の乗ったhydeのボーカルも圧巻の一言。特にリズムもメロもトロトロに溶かした「SHALLOW SLEEP」の仕上がりは前半のハイライト。チケット代12,000円もやむなしである。

カヴァー曲なども織り交ぜつつコンサートは進み、話題はVAMPS活動休止への想いから、L’Arc~en~Cielの話へ。「まったくうまくいかないヤツがいまして…」と冗談めかしつつも少し震えた声で話し始め、「ひとり連れてきました」との紹介でkenがステージへ。ラルクのムードメーカーでもある彼が照れながらも軽妙なトークをhydeと交えると、会場の空気がフッと緩む。それまで厳かに感じられた蝋燭の光も穏やかで温かいものに見えたからkenという人は不思議だ。

「ラルクを少し、楽しんでいってください」との言葉で幕を開けたラルクパート、なんと9曲も披露されたのだから驚いた。しかもこのセットリストがとても良く出来ており、「Hurry Xmas」「winter fall」といった冬の定番曲を軸に「a silent letter」といった普段なかなか披露されないディープな曲まで盛り込んだ、オツなお品書き。9曲中7曲がゲストのkenによる作曲だが、その美麗なメロディはこの日の編成によく映える。特に「叙情詩」「雪の足跡」といった曲たちは原曲に沿ったアレンジながらも、オリジナルより曲の芳醇な香りが引き立つ名演だった。

ただ一曲、(もちろん素晴らしい演奏だったのだけれども)もの悲しさに襲われたのが「forbidden lover」だ。まるで古い大作映画を見ているかのような感覚に陥るこの神々しく壮大なバラード、オリジナルでは軍靴が鳴るようなドラムと、歌詞にある『渦巻いた悪い夢』のようにグルグルと這うベースといったリズム隊の主張が強いアレンジだった。この日もイントロのドラムは、僕がこの曲を初めて聴いた子供の頃から大好きなあのパターンで鳴らされたのだが……いや、だからこそ皮肉にも、鳴りの違いが明白に分かってしまう。これがL’Arc~en~Cielの演奏ではないこと、それが叶わない現実が突き付けられてしまう。更に皮肉なことに、このもの悲しい感情すらこの曲の情景を掻き立てる格好の調味料になってしまうのだから、全くやりきれない。感情を整理できないままに迫力を増し続けるhydeのボーカルに打ちのめされる、悲しくも圧巻の7分間だった。

しかしながらどの曲でも、hydeもkenもとても気持ち良さそうな表情で歌い、弾いていた。バンドの今後については様々な報道や憶測が飛び交うが…ふたりのこの表情に、ソロコンサートの約半分をkenの曲で占めたhydeのセットリストに、そして「forbidden lover」の後に挟まれたMC中にkenが”ポロリ”したこのリップサービスに、L’Arc~en~Cielの未来を感じて復活の日を心待ちにしたいと思う。(この”ポロリ”は12/23のみ。kenには大変申し訳ないが、照れ隠しのジョークは割愛する。)

「この人(hyde)は目の中にプリズムが入っているから、自分が見えない景色を曲の中に見出してくれる。だからこの人にはポンポン曲を持っていけるんですよ。」

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