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2017年3月23日

小幡 千里 (19歳)

本当の自分を求めて

雨のパレード 『Change your pops』を聴いて

雨のパレードは、1stアルバム『New generation』から、音楽シーンの変革を狙い続けてきた。今作は、その流れを受け継ぎ、「ポップスの概念を変える」というテーマで、2ndアルバム『Change your pops』を発売した。このアルバムでは、「本当の自分」にも焦点をあてているという見方もできる。

《くだらない付き合いが/自然と増えていって/苛立ちは埃の様に音もなく/僕の身体の中を漂う》(“Count me out”)
《時間に追われる毎日に/約束ばかりが増えていく/身体はここにあるのに/僕はここにいない》(“free”)
《本音をごまかす様になってきた/ダサくて汚い大人みたいだ》(“Count me out”)
《口から出した言葉は/なんだか他人の声みたいに耳に絡んだ》(“Change your mind”)

 嘘、愛想笑い。私たちは、そういう「建前」の部分を持たなければ、生活できなくなってしまった。表面に見える表情や言葉から、その人の本音を探そうとするのに、誰もがうんざりしている。やりたくないことをしたり、言いたくないこと言ったりするたび、私たちの心は薄っぺらくなっていくような気がする。世間に擦れて、自己嫌悪になることも少なくない。そんな日常の綻びを、彼らは見逃さなかった。

《心の声に/素直になれる日は/いつか君に来るの?》(“Change your mind”)
《明日になればまたなにも変わらずに/分からないふりをして/笑ってるんでしょ?》(“Change your mind”)
《正しい選択を/してきてこれたかな/僕の心は/微かに揺れた》(“1969”)

 必ず来る「一日」の繰り返しを、綻びの積み重ねを、彼らは問うていく。問いかけの中には自問自答も、他者に向けたものもある。問いかけによってむき出しにされていく、本当の自分の姿。裸の状態で、私たちの心には何が残るのか。自分の決断を、惑わせるような問いの多さと鋭さに、心はざわめく。

《大人の言うことは/気にしなくていいぜ》(“Take my hand”)
《言いたいことも言えないこんなところ飛び出して/僕らはただひたすらに街を走り抜けていく》(“Count me out”)
《どこに居たっていい/なにをしたっていい》(“free”)
《僕が選ぶStory》(“free”)

 自分の本当にやりたいことに気付くと、社会という大きな壁が立ちはだかる。人の目や評価、常識などに縛られていると感じる場面は少なくない。その枠の中で、私たちは、「本当の自分」を隠しながら、はみ出さないように慎重に生きる。人の言うことに一喜一憂し、顔色をうかがうように、気付けば主導権を他人に明け渡すようになってしまった。この歌詞は、主導権は自分にあるということを思い出させてくれる。つまり、それは自由を意味する。私たちは行きたい場所に行ける、したいことができる、言いたいことを言える。自由とは、幸せを自分が選べることなのかもしれない。

《いつまでもずっとそこに居たっていいぜ/別に誰もお前を気にかけてないし/そうやってそれなりに生きていけばいいよ》(“Hey Boy,”)
《そのまましたいようにすればいいさ/いつまでたっても助けはこないぜ/全てのことは自分次第らしいや》(“Hey Boy,”)

一方で、自分で考えることをやめたり、自分の無力さに拗ね、殻に閉じこもったりしたときは、その甘えを見抜いて、突き放す。言い訳はいくらでもできるが、自分から何か行動を起こさないと、何もかもがそのままなのだ。変化を怖がってはいけない。変化があるから、きっと理想に少しずつ近づくのだ。彼らは、現実に逃げずに向き合うように、言い含める。

《それならいまからでも遅くないからさ》(“Change your mind”)
《いまだって遅くはないでしょ?》(“Take my hand”)

後悔や絶望、過去の嫌な体験は尽きず、頭の中に残り続ける。今の自分と、過去の自分を切り離して考えられなくなるときがある。もういい、とすべてを投げ捨てたりしたくなることもある。でも、直前で踏みとどまって、今この瞬間からまた始めることだってできる。やり直すのは、今が一番早いのだ。またやり直すことができるという事実が、自分を助けてくれる。

《変わることはなさそうな/いまを眺めていた/日々にサヨナラ/僕は抗う》(“1969”)
《ほらクールなふりして中指立てるのさ》(“Count me out”)
《ほら面と向かってさ、なにか言ってみろよ》(“Count me out”)

 社会や、自分の甘さ、過去を乗り越えて、自分をさらけ出せる様になった時、仲間も増えるが、敵も増える。自分のことを悪く言う人間の話は聞く必要がない。反発、反抗をし続けろ。理想を求めるのは正しい。心の中で無視を決めて、見下せ。最高にクールで、強気な自分の守り方を、彼らは教えてくれる。

《ほらここまで自分を信じてきたんだろ?》(“Count me out”)
《難しい事だって/やり遂げるまでは/出来ないと思ってる/いつだってそういうもんでしょ?》(“Take my hand”)

 理想とする状況を求める自分が正しいのかどうか、不安になるときもある。そんなとき、彼らは今までの過程を見て、励まし、応援し続けてくれる。このような、本当の自分がやりたいことを優しさで支える問いかけも存在する。これは、本当の自分を見つけるときの問いかけとは、明らかに種類が異なるものだ。まだ頑張れる、という自分の姿に気付いたとき、それはかつて自分が望んだ本当の自分なのだろう。

英単語の「Change」は他動詞の「変える」と自動詞の「変わる」、両方の意味を持つ。雨のパレードが「変える」のは、ポップスの概念や音楽シーンだけではない。リスナーの中では何が「変わる」のだろう。『Change your pops』には、革命前夜のようなエネルギーと興奮が詰めこまれている。

《I’ll tachange your mind》(“Change your mind”)
《何か変わる/そんな気がしてる》(“stage”)

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