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彼らの20年と私の20年、のうちの3年

-私とGRAPEVINE-

2017年12月1日に東京国際フォーラムで行われたGRAPEVINEのライブに参加した私。
彼らの20年、私の20年、のうちの3年。このバンドに対する思いを書き留めておこうと思う。

きっかけは2014年にTRICERATOPSが行った自主企画イベントDINOSAUR ROCK’N ROLL 6の1日目の対バン相手がGRAPEVINEだったこと。
トライセラと同期バンド、ということは知っていて、まずこの時期にリリースされていた15周年記念ベストアルバムを予習として聴いて行ったライブ。
私の(狭い範囲ではあるが)頭の中の辞書にはない独自の世界観に圧倒されて終始ぽかんだったのをよく覚えている。
まだそんなに曲名と曲が一致していない時。ライブ後に持ってきていたウォークマンで再生してあ、これ演奏したな、好きだなと思った曲がDarlin’ from hellでそればかりしばらく聴いていた。
それから少しずつアルバムを聴き始める。一番最初に手に取ったのはジャケットの雰囲気で選んだ「真昼のストレンジランド」と「Lifetime」。
「真昼のストレンジランド」は今となっては好きなアルバムであることに間違いはないが、最初通して聴いたときはよく分からない、が率直な感想だった。

しかし少しずついろんなアルバムを聴き進めていくと好きな曲も増え、今では好きな曲と聞かれれば選ぶのに困るぐらいにのめり込むようになる。
とにかく触れたことのない世界に触れることが楽しくてしょうがなかった。

そして2015年1月、アルバム「Burning tree」発売。
これでもかというぐらいよく聴いた。
ぽかんだった独自の世界観が今ではすごく心地よい。心地よい、は少し違うかもしれない。すっと自分の中に入ってくるという方が正しいかもしれない。
曲の美しさが分かるようになった。特にこのアルバムに関しては物語性が強くて聴き終わったときに人の一生を見ているような気がして。
自分が今まで聴いてきた音楽にはなかったものがこのバンドにはあったんだろうな、と。それが最初は理解ができなくて。でも新鮮で。聴けば聴くほどに好きになるのが手に取るように分かった。

そこからはもう早い早い。
Burning treeを聴きながら駆け抜けた1年。
ライブも行けるものにはとにかく行った。

そして今に至るわけで。

何が私をこうさせたのだろうか。
もう少し前の私だったら聴いていないかもしれない。
何なのだろう。

冒頭付近にも書いたが、自分の頭の辞書になかった音楽がここにあった。
このバンドの音楽を聴いて思うことに正解がない。
いや、他のミュージシャンの曲を聴いて思うことにも正解はないよ、と言われればそうではあるけど、
このバンドの曲、音楽って単純な分かりやすさや明確な正解やメッセージ性とかそういうものじゃなくて、
どう受け取ってもいいし、何なら分かりづらいし複雑である。
それがいいんだと思う。
新譜が出る度に、今までのアルバムを聴き返す度に、ライブに行って生で曲を聴くたびに、感情が揺さぶられる。
抉られたり掬われたり、いろんな方向に揺さぶられるのでやっぱりそこに正解はない。
そしてその揺さぶられるのは曲の美しさだったり、曲が放つ凶暴なまでの色気だったりで。
感情が揺さぶられる要因と曲・音に整合性があるというか。
だから説得力がある。
歌詞で見てとれるメッセージ性だけで曲が進まない。
ちゃんとこの言葉にあった音、この音にあった言葉でしっかり作られている。
だからこのバンドの凄いところってきちんとバランスが取れてるところ。
どこかだけが突出していない。田中和将が書く歌詞、亀井亨が作る曲(全員曲を書くが多くを手がけているので)、
最近ではレコーディングでの舵を取ることも多い西川弘剛の采配。このバランスでGRAPEVINEの曲ができているように思う。
こういう風にしてできた曲と自分の感情が合致することが多かったから結果好きになったんだろうなと。

デビュー20周年の年にリリースされたオリジナルアルバム「ROADSIDE PROPHET」。
この年にベストアルバムやトリビュートアルバムじゃなく、オリジナルアルバムを出す。
彼らにとってはこの年も通過点にしか過ぎないのだろうなと思う。
この節目の年に出たアルバムがまた良い。
路傍の預言者、という意味のタイトル。初めて一周通して聴いた感想がいろんな立場にいる人たちの声を掬い上げているように思う。その最たるものがChainだなと。
先行で解禁、配信されてからずっと聴いていたこの曲。
解禁前に各種公式SNSで公開された田中の手書きの歌詞を読んでその時の自分の心境とリンクする部分があり、実際曲を聴くとサウンドも優しくていろんなものがこぼれそうになったのを今でも思い出す。
日常でいろんなことがあって、そんなとき夜道で聴いたこの曲の優しさにそっと支えられたこともあった。

いてもたってもいられず、今回のアルバムツアーは東奔西走した。
各地変わるセットリスト、ツアーが進む度に進化するサウンド、ROADSIDE PROPHETの世界観を展開しつつ、口では周年感はないと言いつつも選曲から垣間見える20周年の思い。
どの景色も鮮烈で美しかった。
ツアーファイナル、東京国際フォーラムでのChainが今まで以上に沁みて涙が流れた。
そして多少の変動はあったようだが、ほぼ変わることのなかった本編ラスト3曲。
BLUE BACK、その未来、Arma。
この3曲の流れが彼らの20年を物語っているのではないかと思わずにはいられなかった。
病気の為脱退したベーシスト、西原誠の在籍時最後の作曲したシングル曲BLUE BACK、
「始まりさ その未来も過去もそのままそう 見ろ」
という曲最後の歌詞と骨太なサウンドで締め括られるその未来、
「物語は終わりじゃないさ 全てを抱えて行く 愛(かな)しみがまだわからないとは言わせない とそう思うのさ」
と歌われるArma。
20年もあればいろんなことがある。
人一人成人する年月。
そんな中、いろいろありながらもこのバンドは進んできたのだなと曲を聴きながら思うと胸に迫るものがあった。
20年のうちのほんの3年しか触れてはいないし、今の編成になってからのGRAPEVINEしか知らない。
それでもそう感じるぐらいには自分の中で大切な位置付けになるバンドになっていた。

先程も触れたArmaの中に「物語は終わりじゃないさ」という歌詞がある。
この20年という長い間、その物語を終わらせることだってできたはずだが、続けることを選んでくれた。
ただ、続けるために続けるのではなく、シンプルに音楽をつくる、音楽と真摯に向き合ってきたが故の20年だったのではないかと私は思う。
本人たちは割と飄々とやってきたと言っているが、その陰では努力している部分だってあるはずだ。それを見せずに常に良いもの、自分たちが良いと思えるものをコンスタントに作り続けてくれたことに感謝しかない。
そのおかげで私は出逢えたのだから。

「20年間ありがとう この先の20年もよろしく」

ライブの最後にこう言った田中の言葉をそのまま彼らに返したい。
この先も彼らと歩みたい、改めて今そう思う。

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