890 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

HYDE<黑ミサ TOKYO>に感じた、冬のあたたかさ

HYDE Christmas Concert 2017 -黑ミサ TOKYO-によせて

12月23日・24日という世間的にも賑わいを見せる2日間、幕張メッセではHYDEによる「黑ミサ」が行われた。黑ミサとは、HYDEがソロイベントとして富良野でひっそり行ってきた冬のコンサートのことだ。今回は初めて舞台を幕張に移し、ダブルカルテットを含む17名のオーケストラを引き連れ、ゲストギタリストにL’Arc-en-Cielのkenを招くという豪華ぶり。L’Arc-en-Ciel、ソロ、VAMPSの楽曲が特別なアレンジで演奏されるとの予告に、多くのファンがこの日を楽しみにしていた。

会場に入ると、ステージには蝋燭が立ち並び、薄暗い客席には聖歌が流れ、たちまちその静粛さに吸い込まれていく。普段とは違う着席型のライヴに、心は緊張と期待の狭間を行き来する。

そして、時は満ちた。オーケストラの入場に続いて、中央の椅子にHYDEがゆっくりと腰かけると、始まったのは「WHITE SONG」。イントロのストリングス音に雪がしんしんと降り積もる様子が思い浮かび、心はたちまち真っ白な雪景色に浄化されていく。この1曲目を皮切りに、一人部屋を作りたいとの思いで2002年に制作したソロアルバム「ROENTGEN」の楽曲が続いていく。アンネの日記を想った「SECRET LETTERS」では、HYDEの美しい高音が自由に空を渡り、喜望峰の伝説を元にした「THE CAPE OF STORMS」では、甘い罪の果てに永遠に海を彷徨う苦悩を、まるでその運命を背負ってきたかのように悲痛に歌い上げる。「SHALLOW SLEEP」でステージを包み込む光と穏やかなストリングスに感じたのは、夢を見ている時の幸福感と儚さ。生で聴くことは叶わないと思っていた大好きな曲たちが、オーケストラのアレンジで新しい息を吹き込まれ、今のHYDEの豊かな歌声で次々と披露される。それは、至福の時だった。サプライズのように用意されていたカバー曲も、素晴らしかった。特に、「ROENTGENの元になっているような曲」「10代の頃、何度聴いたか分からないくらい大好き」と語り、演奏されたデヴィッド・シルヴィアンの「Forbidden Colours」。シルヴィアンの独特の深い声をなぞるかのように歌われたこの曲では、HYDEの大切なルーツに触れたような気持ちになった。そしてその歌声に私の心も揺れ、HYDEの感性が自分の根に響くことを、改めて感じた。

少し緊張感を伴った前半が「VAMPIRE’S LOVE」で締めくくられると、先日突然に活動休止が発表されたVAMPSについて、「解散ではなく休止を選んだところに未来を感じてほしい」とコメント。「でも、もっと上手くいかないバンドがあって・・・」とHYDEが苦笑交じりに話すのは、大きな船に喩えられるL’Arc-en-Cielのことだ。ラルクの活動は「僕だけではどうしようもならない」と語りつつ、「でも今日は、ラルクの楽曲を少しでも楽しんでもらえたら」と話す姿からは、HYDEのラルクへの愛が感じられた。メンバー4人の歯車がなかなか揃わない実情がある一方で、その船が動くことを待ち望むファンが多くいることも、きっと彼は分かっているのだろう。そして、ゲストのkenが呼びこまれると、ステージの雰囲気が一気にほぐされる。ずっと一緒にバンドをやってきたからこその安心感、と呼べるかもしれない。前半に感じたHYDEの緊張が、溶けていった。

まずMC。冬や雪やクリスマスが大好きだと話すHYDEと、冬や雪に否定的でクリスマスの思い出もないkenのやりとりは、どこかチグハグで笑いが絶えない。でも、冬の魅力をキラキラと語るHYDEに感化され、kenも「サンタクロースがいるような世界になってほしい」と思うようになってきたというのだから、その二人の関係性はなんて微笑ましい。

後半は「Hurry Xmas」で幕開け。街のきらめき、大切な人を想いプレゼントを用意するワクワク感、共に過ごす甘くて特別な時間……HYDEが感じるクリスマスの魅力を詰め込んだこの曲は、生オーケストラのアレンジでさらに華やかに、贅沢になっていて、聴きながら自然と笑みがこぼれた。L’Arc-en-Cielの冬曲の定番「winter fall」は、しっとりと大人なアレンジで原曲とは違う新たな一面に驚き、hydeの歌声の良さ目がけてkenが作曲した「叙情詩」には、木々の隙間から差し込む強い光と、永遠に変わらぬ想いの存在を感じた。「a silent letter」では、冷たい冬の海と星が光る美しい夜空が見え、一人の人間の孤独を想い、そして「forbidden lover」には、バンドサウンドに留まらない壮大なL’Arc-en-Ciel曲の底力を見た。歴史に翻弄される愛の運命を絶唱するHYDEと、それに呼応し熱さを帯びていくkenのギター。2人の表現の熱が余すことなく音に注がれ、恐ろしく豊かな化学反応が目の前で起きていた。圧倒も圧倒、、その迫力に心が立ち尽くした。そして、全員ではラストの「星空」を迎えると、会場全体に星の光が。「クリスマスの夜だからこそ平和と永遠の笑顔を願いたい」との語りを映すかのように、HYDEの力強く伸びやかな声が会場全体を包み、その願いが広がっていくようだった。

kenとオーケストラがはけ、ピアノでバンマスの堀向氏と2人になったHYDE。「どうやってみんなを楽しませようかと思っていた」「みんなに楽しんでもらえて、やって良かった」と2日間を振り返る中、突然後ろを向いて沈黙してしまう。異変に気づく会場。「目から汗が…」と少し恥ずかしそうに涙をぬぐい、小さな声でボソッと「終わりと思うと、寂しくて、、」と純粋な心を語る姿は消えてしまいそうで、、だけどとても愛おしくて。周りから次々と飛ぶ声援に合わせて、いつの間にか私も、彼の名前を呼んでいた。子守唄のように穏やかなピアノを伴奏に、時に涙で声を濡らしながら歌われた「未来世界」。HYDEの心が、幸せに満ちていることを願った。

「冬はあたたかい」とHYDEは言う。外は寒いけれど、寒いからこそ暖をとろうとしたりするその気持ちが、あたたかいのだと。私がコンサートを通して感じたのは、まさにその「あたたかさ」だった。ROENTGEN曲に再び息が吹きこまれ、今また新たな質感で聴けたこと、歴史や平和へ想いを馳せながら、壮大で圧倒的なL’Arc-en-Ciel曲を堪能できたこと、「歌が楽しくなってきた」と語るHYDEの極上の歌の表現、MCや最後の涙から感じた優しく柔らかな人柄。まるでサンタクロースからのプレゼントのような、あたたかな幸せに満たされた特別な夜だった。クリスマスは終わってしまったけれど、私はもう少し、この余韻に浸っていたい。そしてこの心でまた、新しい季節を渡っていきたい。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい