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イメージはラジオの電波に乗って

NICO Touches the Wallsが証明したもの

遠くからTAXIが静かに、地を這い滑るように近づいてくる音がしたような気がした。
 

—NICO Touches the Walls
この10年間、彼らの曲と共に私の姿はあった。この壁に写る自分の影を見つめながら、何度「まだくたばれない」と思っただろうか。

出会いは些細なことである。10年前、私はラジオの前に噛り付いていた。関西の音楽ファンなら一度は経験があるだろう。FM802(以下802)との密な日々が。私も漏れなくそうだった。そして2007年12月。802の邦楽ヘビーローテションだったimage trainingと出会った。メロディラインをなぞるベースの音に耳が奪われる。洋楽か?と思いきや、艶のある歌声が聞こえ始めた。日本人だ。枯葉に自分を例え、風に舞いながら、都会の巨大な建物を越えていくイメージをする。しかし、風の行く先が分からないと不安を吐露する歌詞に、多感な時期だった私はのめり込んだ。

アーティスト名はNICO Touches the Walls(以下NICO)すぐに検索した。ヒョロッとして頼りなさそうな青年4人の写真が出てきた。「ふ〜ん」携帯を閉じる。この日から、10年。

NICOは音楽のジャンルも、ライブのスタイルも、お約束無しの自由なバンドへと変わっていった。ブリティッシュロックが好きなのだろうと思っていた第一印象とは全く違って見える時さえあった。オルタナティブ、と言ってしまえばそれだけなのだけれど、そんな格好の良い言葉ではしっくりこない。音楽が好きすぎるゆえ、なんでも”やりたがり”なのだろう。でもその中にブレずにあるギターロックバンドとしての芯。そして光村龍哉(Vo&Gt)をフロントマンとして信じ、叱咤激励してきた古村大介(Gt)坂倉心悟(B)対馬祥太郎(Dr)こそがNICO Touches the Wallsなのだ。

2017年12月。802主催の年末音楽フェス RADIO CRAZYのステージにNICOは2年連続で立った。私とNICOを引き合わせた802が、彼らを見守り続けていることが嬉しかった。

RADIO CRAZYは、関西屈指のラジオ局である802が主催するフェス。訪れる人の殆どは、何気ない日常の中で802を聞いているリスナーである。

5年ぶりの出演となった2016年のセットリストは、爽やかさと哀愁を纏ったストラトから始まり、定番曲であるTHE BUNGYや手をたたけを挟んで、そっと背中を押すように「君次第」と歌うマシ・マシで終わる穏やかで暖かい内容だった。音を鳴らし届けられる事の喜びに溢れ、それを噛み締めるように笑みをこぼす4人の姿がそこにはあった。この一面を「柔」だとすれば、今年のステージは紛れもなく「剛」だった。

リハーサルから変調子の曲(ストロベリーガール)を披露し、本番1曲目には光村龍哉(Vo)の「かかってこいよ」と言わんばかりの目つきとパフォーマンスで最新曲のmujinaを。続けて、独特のイントロと裏拍が特徴のTHE BUNGY。少しずつNICOを知らない観客にも伝染していき、気づけば地面から離れる両足。絡まり合うサウンドは大きな渦となり、熱を生み、私達を飲み込んだ。そして一瞬の静寂が訪れ、それはやってきた。

遠くからTAXIが静かに、でも確かに、滑るように近づいてくる音がしたような気がした。イントロで効果音の様な音を鳴らす古村。まるで地を這っているTAXIだ。なんて事だろう。「image trainingだ」その瞬間、私は隣にいた友人らと抱き合ったのだった。

メジャーデビュー10周年だから、初期の曲を入れて来たのだろうか。それとも「10年前にヘビーローテションにして貰ったので」と言う気持ちなのだろうか。天邪鬼な彼らは決してどちらとも言わないだろう。その代わりにこう言ってみせた。

「今年は音楽で色んな遊びをやった」
「今日は僕たちにとっても忘年会のつもり」

先述の通り、NICOはなんでもやりたがる。そして、出来てしまう。音楽で色んな遊びをする、その延長にあるのは進化なのだ。今の彼らは決して保守的になどならない。

それなのに敢えてimage trainingを選んでくれたのだ。

観客の中にはきっとヘビーローテションだった曲だと気づいた人もいたはずだ。だとすれば、メジャーデビューから10年が経ち、自信とエネルギーに溢れたバンドの姿をしっかりと見せつけることができただろう。何故この曲を披露したかなど、言葉にするだけナンセンスだった。

あの頃と変わらぬ、青い青い葛藤。イメージ通りに行かなかった日々を何度乗り越えて来たんだろうと想いを馳せる。その中にそっと寄り添ったサポートメンバーの浅野尚志(Key)が別の色を僅かに添えた事で、ほんの少し曲は大人びたように思えた。その変化は、時の流れを感じさせ、その曲を知る者をセンチメンタルにするには充分だった。

802DJ大抜卓人氏でさえ、(image trainingの披露は)特別だった、と自身のツイッターに記していた。何か熱いものがこみ上げた様子だった。ヘビーローテションだった当時、彼も何度も曲紹介をしていた。そして私はリクエストをするリスナーだった。だから、同じ気持ちです、と嬉しくなった。年末、合計3つの大型フェスに参加したNICO。image trainingを披露したのはこの日だけだった。802とNICO、そしてリスナーとの間に固い絆があるという紛れも無い証となった。なんと幸せな事だろうか。

11年目に入り、NICO Touches the Wallsはイメージの向こう側へと確実に進んでいる。こんなにもこれからが楽しみなバンドは他にいない。私の胸は今、彼らへの期待で大きく大きく膨らんでいる。

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飛びたい方に何度も僕は走り出す
さよならもう 振り返らぬ街
ふくらむ胸で浮かんでしまえば
必ずその時に輝くような

(image training / NICO Touches the Walls)
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