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死にたい少女とモーターサイクル

BUMP OF CHICKENは、それでも。

親が嫌い。死にたい。

何とも親不孝な言葉だと思う。
でも当時の私は、本気でそう思っていたし何度か行動に移そうとしていた。

「わざわざ終わらせなくていい どうせ自動で最期は来るでしょう」

BUMP OF CHICKEN、モーターサイクル
この曲はずっと私の支えになっている。

平日、父は遅くに帰ってくる。その代わり、母が早く帰ってくる。
休日、接客業の母はいつも家を空けている。その代わり、アル中の父が家に居る。
父はいつも私を怒鳴っていた。
「おいブス、酒!!」
私はその叫び声に怯えて暮らしていた。

普段は良いお父さんなのに、酒が入ると豹変する。
私の名前はブスになって、ブスと呼ばれている時の私は、はいしか言えないロボットになっていた。

全裸で抱きつかれた。包丁を向けられた。蹴られた。殴られた。見た目を散々悪く言われた。
そして決まって最後にこう言われた。
「誰のおかげで学校行ったり飯食ったりできてると思ってるんだ!!」

死にたかった。自分は生きているだけで悪なんだと思った。そして、生きたくても生きられない人が沢山居るのに、死にたいと思っている自分が、カネを払ってくれている親を嫌っている自分が、嫌で嫌で仕方なかった。
 

そんな時に出会ったのが、BUMP OF CHICKENのモーターサイクルという曲だった。
公式チャンネルが上げていた、YouTubeの低音質版で、初めてそれを聴いた時、それまでに感じたことの無かった感覚を覚えた。

心臓をギュッと握りつぶされたような、頭をガーンと殴られたような、気道をぐっと絞められたような、経験した事のない痛みだった。

淡々とした、冷酷な歌詞。
とんとんと軽快に韻を踏むリズム、淡々と何処かの誰かの日常を語っていく展開。そんな中に、時々爆弾のように優しさがコロンと落ちている。

「生まれたらどうか生き抜いて」

「死んだ魚の目のずっと奥の 心に拍手を贈るよ」

ずっと、自分は悪だと思っていた。
褒められることなんて何も無くて、自分の存在自体が悪で、死んでもいい存在で、でも死にたいと思うことは悪いことで……。
ずっとそんな風に思っていた。

それでもBUMP OF CHICKENは、どうか生き抜いてと言ってくれた。拍手を贈ってくれた。

恐怖心からハイ、ハイと何でも言いなりになっている私じゃなくて、醜くて酷い考えを持った私でも、認めてもらえたような気がした。

「あぁ君には言ってない そう無視してくれていい 相槌さえ望まない そもそも大した事言ってない」

こうやってつっけんどんに言ってくれるところが、また良かったのかもしれない。
無駄に重い負担にならずに、すっと聴けてしまう。
そのくせ最後に、

「手貸したら握るかい どっちでもいいけどさ」

なんて、ちゃんと優しさを差し出してくれる。
 

曲が終わって、暫くの放心状態のあと、本屋へ走った。田舎の小さな本屋。品揃えは正直言って良くない。シングルはおろか、アルバムすらほぼ揃っていない。そんな中で、さっき聴いた曲のタイトルを必死に探した。は行の棚の、BUMP OF CHICKEN。シングルは1枚も無かった。アルバム1枚1枚、全て収録曲を調べたけれど、モーターサイクルの文字は無かった。
諦めて帰ろうとした時、さっきとは別のコーナーに貼り出された「BUMP OF CHICKEN初のベスト・アルバム」の文字が目に飛び込んできた。

藍色に小さな金色の文字で、モーターサイクルと書かれた分厚いそれを見つけてからはよく覚えていない。
気づいたら、BUMP OF CHICKENⅡ[2005-2010]と書かれたCDをプレイヤーに入れていた。

ボロボロと涙をこぼした後の頭では、全てを理解することは出来なかった。
それでもBUMP OF CHICKENは優しくて、どの曲も私を否定することは無かった。
 
 

こうしてBUMP OF CHICKENが貸してくれた手を握って、手探りの状態で進んで、私は18歳になった。
父はまだアル中で、あの頃よりはマシになったものの、まだ私はデブ、ブスと呼ばれている。

あれから、私は死にたいんじゃなくて、現状から抜け出したいんだ。と気づくことができた。
そうやって気づいてからも、BUMP OF CHICKENに沢山考えさせられたし、その中で色んなことを教えられた。
自分が動かないと何も変わらないこと、現状を壊すのはとても勇気がいること、衝突も少なからずあること。

私は春から家を出て、新しい土地で大学生活を始める。
家を出ることは、根本的な解決にはなっていないのかもしれない。本当にこの選択が正しいのかは分からない。それでも、自分の選んだこの道で、幸せになろうと思う。
 

この文章を書いている途中、当時を思い出してなのか、また涙がこぼれてきてしまった。
今でも洋服や化粧品を買う時に、容姿をけなされた事を思い出すし、誰かが近くで手を上げるだけで身構えてしまう。ベランダに干される父の下着を見るとそれだけで吐き気がする。
たぶん、私が感じた恐怖とか、辛い思いとか、そういうのは、一生深い傷として私の中に残り続けると思う。
それらの傷を思い出す度に、心の中で呟く言葉がある。

「あぁ外野は放っとけ そもそも大した事言ってない」

折角BUMP OF CHICKENが手を貸してくれたんだから、私はこの先、幸せに生き抜いていこうと思う。

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