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2017年3月24日

Snufkin (19歳)
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音楽の場面

イギリスで戦う19歳への音楽

音楽には場面がある。
朝に気分を盛り上げたいときにピッタリな曲もあれば夜に1人で安らぎたいときに最適な曲もある。
週末の夜のパーティー会場で映える曲もあれば悲しさに浸りたい時に優しく自分を包んでくれるような曲もある。

僕は現在19歳の大学生だ。ただ1つ付け加えるとしたら僕は高校を卒業してからイギリスの大学に入学したということだ。
そして昨年の9月に渡英して約6ヶ月が経ち、上手くいくこともあれば、なかなか思うようにいかず自分自身にうんざりするような時もある。
では、日本から遥か彼方の異国イギリスで何とかもがきながら前進しつつもどこか拭いきれない不安を抱えている19歳の若者への音楽とは何だろうか。

僕は洋楽が好きだ。The Libertines, The Beatles, The Coralの様なシンプルなUKロックからTravis, Coldplay, Ed Sheeranといったいわゆる美メロ系の音楽、アイリッシュフォークも大好きだ。もちろんアメリカにもお気に入りのミュージシャンは数多くいるがやはり個人的な音楽の趣向はイギリスの音楽に傾いているのは一目瞭然、
そして何を隠そう僕が今現在イギリスにいるのはその影響も大きいのだ。
そしてそれらの音楽を作り出すイギリスの雰囲気に包まれながら過ごす日々は正に僕が思い描いていたものだった。
イギリスのパブで自作曲やOasisの曲を披露し、それを聴いて騒ぐイギリスの酔っ払い達、テストのために図書館に籠る日々、週末にパーティーや小旅行。全てが僕が求めていたもの、そしてそれらを実現させ今尚進み続ける今の自分は日本に居たころに目指していたものであったはずだった。
しかし、僕はどこかもやもやとした、イギリスの陰鬱な曇り空のような気持ちを晴らせずにいた。迷いやもどかしさに引っ掛かりどこか吹っ切れることの出来ない、それでも過ぎていく1日を何とか良いものにしようと戦う日々。〝若者は迷い悩むもの″などと言う大人がいるがそれも単なる安っぽい気休めに聞こえるような気がしていた。

そんな日々の中でも僕は毎日の日課のように音楽を聴く。寮から大学へのバスの中、宿題をこなしながら、やる気の出ない休日に自らの惰性を嘆きながら、聴いた。たとえ3分であろうと暇さえあれば音楽を聴いた。バスを待つ退屈な3分間、そんな誰もが経験する日常に起こりうる何てことない場面にも必ず音楽がある。冷たい風に吹かれながら過ごす3分間ほど惨めな時間はそうそう無いが、そこに音楽さえあれば自分、そして素晴らしい音楽の世界に入り浸れる至高の3分間になるのだ。これこそまさに音楽の場面の一例だと思う。そしてそれはイギリスの陰鬱な曇り空のような気持ちをほんの一瞬だけ吹き飛ばしてくれる瞬間だ。

つい最近、ひょんなことからどこか少し気持ちが晴れるような、そんな出来事があった。別に何てことのないことかもしれないがそれは確実に僕にいい影響をもたらしてくれた。その日の大学からの帰り道、僕のスマホから流れていたのは皮肉にもTravisのWhy Does It Always Rain On Me?だった。もやもやした日々にも何度となく聞いてはそのどこか自虐的で諦めの混じったいかにも「英国的」な歌詞にうんざりしつつも共感しながら耳を傾けていたが、この日はどこか違って聞こえた。まるで過去の自分を客観的に見てるような、それでいて何となく背中を押されるような、歌詞を引用させていただくならまさに”The strangest feeling”といった気分だった。

さて、日本から遥か彼方の異国イギリスで何とかもがきながら前進しつつもどこか拭いきれない不安を抱えている19歳の若者への音楽とは何だろうか。
僕は未だにそれがどんな曲なのか、どんなジャンルなのか、もっと正直に言えばそんなものがあるのかどうかさえよくわからない。
ただ1つ僕が見つけたものがあるとするなら、それは「音楽の場面というのは定まっていつつも何処か曖昧で変わることのあるもの」ということである。
音楽には場面がある、僕が心のどこかで信じているある種の音楽哲学だ。だがその場面とは不変のものではないのだ。
それはまるで同じ曲でも昨日と今日では自らに与える印象、感情が異なるように、その音楽の場面とは気分や状況によっていくらでも、そしてあっさりと変わってしまうのだ。だからこそ音楽は常に僕に刺激と興奮を絶え間なく与えてくれ、どんなときも僕を決して退屈させないのであろう。だからこそ偉大な曲、そして音楽というもの自体がこれまでも、そしておそらくこれからも僕らを魅了し続けるのだろう。

僕の気持ちが晴れるのを待っていたかのようにイギリスにも青空が増え、春がやって来た。
ひょっとして僕の心のもやもやはこのイギリスの長くて陰鬱な冬のせいもあるんじゃないかと思うほどである。
「日本から遥か彼方の異国イギリスで何とかもがきながら前進しつつもどこか拭いきれない不安を抱えている19歳の若者への音楽」それは僕が何気なく今聞いているこの曲なのかもしれないし、そうではないかもしれない。そんなことどう頑張っても断言することは出来ない。
音楽の場面なんて僕の心、そしてもしかしたら貴方の心のようにあっさりと変わる事があるものなのだから。
そんなことを思い、文章に起こし、そしてもちろん僕は今日も今僕が思う「場面」に合う音楽のむさぼり聴くのだ。

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