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あの街レコード

あの街への帰り道 - indigo la End

こんな寒い夜の日に、懐かしいあのCDを聴いていると、すぐに高校時代にタイムスリップしてしまう。
今やすっかり聴かなくなってしまったアーティストだけど高校1年生から2年生にかけての1年間、たしかにこの音楽の中には私がいた。

そしてやっぱりこんな寒い夜の日は、彼のことを思い出す。高校生だったころの彼と、私のことを。

私の地元と、高校がある町、それ以南はまるで足を踏み入れたこともなかった。高2で彼と付き合うようになってから私が故郷を出て行くそのときまで、私は、地元でもなく学校に最寄りでもない、あるひとつの駅に得も言われない愛着をかんじていた。

それが彼の住む町の駅。

学校も違う、ましてや住む町も違う私たちは、放課後よく彼の住む町の駅で待ち合わせをした。そのときのそわそわした気持ちとか、電車がもっと速く進んでほしいような、でもこのまま永遠に着かないでほしいような気持ちを経験した。その景色の中にはいつも、今ではもう懐かしい音楽たちが流れた。特にindigo la Endの「あの街レコード」というCDをよく聴いていた。今思い返すとそのまんまのタイトルで少し可笑しい。
所詮は住宅街の最寄駅で、降り立った先には遊ぶところなんてまるでなかった。
けれどいつも特別だった。寒い夜の日、踏切の見える公園で、遮断機が下りる度にどちらから電車が来るかなんかを飽きずに話していたし、そこから見上げる星空はいつも鮮明で、広くて、息が詰まるほど輝いているように見えた。

門限があった訳ではないけれど8時を過ぎる頃には帰らなければ、という倫理観が高校生の私たちにももうすでにあった。けれどどうしても帰りたくなくて帰りの電車を何本も見送った、子供っぽいわがままなところも、たしかにあった。そんな大人と子供のちょうど狭間だった。
寂しい思いで彼に見送られて乗り込む4両編成の電車はとても暖かくて、さっきまでの時間を反芻するみたいに目を瞑って「あの街レコード」を聴いていた。あの30分間がとても愛しい。

そんな風にして何度も通ったあの駅は今はどうしているだろう。

駅の近くの公園ではなく、彼の家に通うようになっても。電車ではなく、車で駅まで来るようになっても。あの駅はずっと愛しかった。次に訪れるのはもしかしたら彼のご両親にご挨拶に行くときかも知れない、なんて微かに感じながら、今日ふと、あの駅のことを思い出していた。
 

“私の大事な宝箱
不意に開けたくなりました
大したものは入ってない
けどいつも気にするのさ
ああ あれもこれも忘れてしまうのさ
ずっと大好きだった あの街への帰り道も
忘れてしまうのさ”

あの街の帰り道 – indigo la End 「あの街レコード」より

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