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笑顔で「おかえり」が言えるように

伊東歌詞太郎に出会えて良かったと思った日。

言葉には本当に魂が宿っていると思う。
そう思うようになったのは、彼に出会ってからだと強く思う。

伊東歌詞太郎。
狐のお面がトレードマークのシンガーソングライター。
彼は何時だって音楽に対して誠実で、
何時だって全力で音楽にぶつかっていく。

いつかのライブで彼が言っていた
「僕は100か0かでしか生きられない。」という言葉を聞いたとき、
周りの人達は「彼らしいな」って思いながら笑った。

「勇猛果敢」「有言実行」
この言葉が彼を表すのに適していると思う。

2018年1月13日
この日は彼のシークレットライブの日。
シークレットと銘打ってるわりには、
ブログやホームページで告知してあって、
朝早くから整理券を求めるファンで、会場の上野恩賜公園は人が集まっていた。

けれどもそこにいるファンの人達の表情は、晴れてはいなかった。
その表情の奥底には誰しもが不安を抱えているのだと
理解するには時間はそうかからなかった。

15時開演。
初めに歌われたのは【北極星】
過去沢山のライブで、最初に歌われていた曲。
はたっぷさんのキーボードが奏でるイントロで
ついに始まるんだなと思った。
歌っている彼の姿を見ると、
手術を間近に控えているのが信じられないくらい、
いつも通りの歌声を聴かせてくれた。
ただ、いつも以上に言葉を噛み締めていたようにも見える。
この曲の歌詞は今の彼にとって眩しく見えたのではないかと思った。

次に歌われたのは【涙がこぼれる前に】
僕がこの曲を聞いたのはこの日が初めてで、気付いたら頬を涙が伝っていた。
本当に優しい歌だと思った。

2曲続けて歌ったあと、彼が語り始めた。
2017年は二天一流がリリースできたこと。
火鳥風月という素晴らしいツアーができたこと。
今日もこのステージを一緒に作り上げて、心を動かしたいということ。
本当に、いつもと変わらない彼がそこにいた。
この日の会場は声がよく響いた。
彼は地声で話し、「このキャパで後ろまで声が聞こえること覚えておきます!!」と笑顔で言った。

その時はこの言葉の意味を理解してなかった。

3曲目に彼が選曲したのは【さよならだけが人生だ】
曲中繰り返される「どうかお願いだ 見せてくれないか」を感情を剥き出しにして歌う姿はまるで、泣きじゃくる子どもの様だった。
歌っている姿をみて僕はあることに気付いてしまった。
「声が出ていないことに」
この時改めて喉に爆弾を抱えていることを再認識させられた。
声が出ない分、心で歌っていたのだ。
最後のフレーズの
「どんな君でもそばにいさせて」
を聞いたとき、側にいさせてほしいのは寧ろ僕の方だと切実に思った。
客席には、静寂と涙を啜る音だけが残っていた。

その静寂を破るかのように、声を震わせながら
「こんなにも汚れた街に生まれ落ちるのは
どれくらい前からすでに決まってたのかな」
と歌い出した。すぐに分かる、この曲は【雨ニモ負ケズ】だ。

さよならだけが人生だ同様、やはり高音が出ない。
声だって掠れている。
でも、この曲も彼は感情をむき出しにして歌う。
聴いている側が
「そんな歌い方をしないでくれ」
と思ってしまうくらい感情を込めて歌っていた。

【帰ろうよ、マイホームタウン~追想~】
彼はいつも言う。僕の帰る場所はステージだと。
おそらく彼が、なにもかも忘れて「ただいま」するのが出来るのは、
ライブのステージではないだろうか。
でもそのホームタウンに彼は、しばらく帰ってこられない。
この曲を歌いながら彼は、ステージの端から端まで移動しながら
観客席を見渡していた。
僕たちが彼の姿を焼き付けていたように、
彼もまたステージから見える様子を焼き付けていた。

♪ラララ~の所は間違いなく、会場が一体化していたと思う。
今まで過去ライブでも何回も一緒に歌ったが、この日が一番一体化していたと思う。
 

3曲感情を全面に押し出して歌った後、彼は新しく出来た「夢」について話し出した。
ただ、そこで見せた顔は、今まで見たことのない表情だった。
彼は続ける。
「僕はしばらく歌を歌えなくなります。
『くそ食らえ!!ふざけんじゃねぇ!』って思っています。
知ってると思うけど、俺歌うのが大好きなんだよ。
『なんで俺がっ!!』
って思っています。
今までの人生の中で無駄なことなんて1個もなかった。
まじで無駄なことはなかったんだよ。
いつだって歌うことは楽しかった。
でも、自由自在に歌えないことはこんなにもきついのかって初めて知ったよ。
それでも、心で歌えば良いんだって、そう思ってやってきた。
歌を歌って、目の前の人が笑ってくれるだけで十分幸せだった。
こんなにも自分の人生とか、感情、愛を込めることが出来るなんて思ってなかった。

こんなにも音楽に中身を詰めることが出来るんだって。
俺は自分の言葉に責任を持つし、
耳障りの良い言葉だけじゃなくて、
これからは本当の気持ちを伝えていこうと思う。
歌を歌うことは素晴らしいことだと分かった。
でも、俺は!!
この喉になってしまったことに!感謝はしない!!!
この悔しい気持ちは!!!やり場のない怒りは!!!
感謝することは出来ないっ!!

綺麗事だけじゃ生きていけないだろ?
…俺、人ってもっと優しいと思ってたよ。
でも世の中には、誰かを利用したり、傷つけたりして平気な人もいる。
でも俺は、そうなりたいとは思わないから、
この大切なステージを守るために、
自分を貫いて行こうと思う。

僕は負けたくない。

今よりももっと良い歌を歌えるようになった時、
新しく出来た夢が叶ったとき
初めてこの経験に感謝するんだと思う。

忘れんなよ。

だから比べてくれよ、今日のステージと!」

以前、友人に伊東歌詞太郎の魅力を質問されたことがある。
その時は、上手く説明することが出来なかったけれども
今なら説明できると思う。
彼のこういう姿勢や生き様が堪らなく好きなんだと思う。

会場は静まりかえっていたが、それを切り裂くように彼は間髪を入れずに続ける。
…マイクを通さずに。

「この声は後ろまで聞こえているんだよな!?
だったら!次の曲はマイクなしで歌うからぁ!!」
静けさが支配していた会場がざわつき始めた。
困惑気味な僕たちに追い打ちを掛けるかのように言葉を続ける。

「これアカペラっぽいだろ?」
とおなかの辺りでマイクを持ちながら笑う。
「でも実はこれ、音拾ってるからぁ!!
俺はそんなセコいことはしなーい!!
だから!!マイクここに置いておーく!」
そう言うと、ステージ後方にあったマイクスタンドにマイクを戻した。
『彼らしいな』
多分、あの空間にいた全員が同じ事を思ったのではないだろうか。

ステージの真ん中に戻った彼が歌い出した。
「大丈夫 大丈夫 おどけてみせる僕は
小さなサーカスの 名も無きピエロ」
そう、【ピエロ】だ。
約2ヶ月前、火鳥風月ツアー東京公演のアンコールで
僕たちに消えない記憶を刻みつけた曲。
僕も友人もこの曲は聴けなくなっていた。
この曲を聴いてしまうと、あの日の記憶が鮮明に戻ってきてしまうから。

イントロ部分を歌い終わると、彼はステージから飛び降りて、
観客席を歩きながら歌い始めた。

客席を歩き回りながら歌う彼は終始笑顔で、
席に座っている男性とハイタッチしたり、
さながら無邪気に走り回る子供のようだった。

曲中の”大丈夫、大丈夫”は
きっと、彼が彼自身に言い聞かせていたんだと思う。

ステージに戻った彼が次に歌った曲は
【僕だけのロックスター】
あぁ…終わってしまう。
時間が止まれば…と思った。
彼の等身大を表している曲。

”大切なものは いくつもありゃしない
よく見りゃ何にも 必要ないけど
僕には叶えたい 夢があるのさ”

その夢を叶える時、側にいたいと強く、そう思った。

曲が終わって、メンバー紹介をして
あぁ終わってしまうんだなって思った時、
「本当はもう1曲歌いたい気分!!」
「今日のライブを忘れるなよ!!」
と言って、【パラボラ~ガリレオの夢~】を歌い出した。

「悲しみの意味を知るたびに 希望の喜びがわかるから」
彼はどれくらいの悲しみを知ったのだろう。
彼は、希望の喜びが分かったのだろうか。
多分、それを僕たちが知るのは、彼がステージに戻ってくるときだと思う。

忘れるなよって言われたけれど、
忘れる方が無理だと思う。
こんなにも、素晴らしい景色が見られた日を忘れない。
そう、心に刻んだ。
 
 

僕は社会人になって、彼の曲達に何度も救われた。
本当に綺麗事だけじゃなかった。
嫌なことが重なって、
何度も逃げたくなった。
何度も辞めたくなった。
泣いた日だってある。
出勤するのが辛くて、泣きながら車を運転した日もある。
でも彼の曲を聴いてると、何故だろう。
「頑張ろう」
と思えてきた。
だから、ここまで頑張れたんだと思う。

ある日同僚に言われたことがある。
「なんでそんなに会いに行くのか」と

その答えは多分
「お礼が言いたいから」
何度も言いたい。だから僕は何度も足を運んだのだろう。
そして、これかも足を運ぶ。

でも彼はしばらく帰ってこない。
MC中に珍しく声を荒げて、自分の気持ちを吐き出した。
それは間違いなく、彼の魂の叫び。

彼も苦しんでいた。
彼はいつも笑っているから、
心のどこかで大丈夫だと思っていたんだと思う。
自分のアイデンティティが失われそうになって、
大丈夫な人などいない。
いや、いてたまるもんか。
そのときに思う。
あぁ彼も血の通った、同じ人間なんだと。

今でも目を閉じれば、あの日のことが鮮明に蘇ってくる。
大丈夫。
覚えてる。
彼の笑顔だって、歌声だって、ちょっと悪巧みした顔だって全て覚えてる。
忘れるなんて出来ない。

彼の夜明けを大切な仲間達と待ち続けたい。
そして新しい夢が叶うその瞬間に彼の側にいたい。

これが僕の夢だ。

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