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同じ日に生まれたある男女の話

Suchmosに対しての抑えきれない嫉妬心

最近の私は、一言で言うと、人生に迷っている。

社会人になってから今年で5年目。
そこそこ名の通った会社に入社し、地元・茨城から東京に出てきた。
がむしゃらに走ってきて、営業ウーマンとしての業務は一通りこなせるようになったし、
貯金も人並みにはある。
そして、会社も自宅(社宅だが)も、東京・港区・六本木。
いわゆる「港区女子」ってやつだ。大学時代の同級生からも、羨ましがられる。
うん。悪くない。
悪くないけれど。
一日中外回りでくたくたになり、夜、疲れ果てて缶ビールを煽りながら、ふと思う。
私、一体何がしたくて今の会社に入ったんだっけ?
私の好きなことってなんだったっけ?
私のやってることって、誰かの役に立ってるのかな?
時々自分がひどくちっぽけに感じられ、わからなくなるのだ。

そんな時にSuchmosの音楽に出会った。
何気なく聞いていたラジオから「MINT」が流れてきたのだ。
ギター、ベース、キーボード、ドラム。全ての音がしっかりと主張しているのに、
脳みその中で、一つに重なって幸せにとろけていくような感覚。
そして、そうした音たちに乗って流れてくる少し掠れたファルセット。

―錆びた弦で良い 破けたジーンズで良い 孤独な夜があっていい
 何も無くても笑えていればいい 何も無くても歩けさえすればいい(MINT)

非常にシンプルだが、その時の私の胸に、これ以上ないほど「すっ」と入ってきた。

こんな音楽を作った人たちは、一体何者なのだ。
メンバーに興味を持ち情報を漁っていると、
彼らが私とほぼ同年代であることにまず驚き、
そしてさらに衝撃的な情報に出くわした。

YONCE(ボーカル) 生年月日:1991年8月29日

なんてこった。私と全く同じではないか。
この素晴らしい偶然に、私はSuchmosの音楽を聞かずにはいられなくなった。

しかし、彼らの音楽を聴けば聴くほど、
そして彼らがインタビュー記事などで紡ぐ言葉を読めば読むほど、
彼らの音楽や人間性に惹かれる反面、
何かもやもやした気持ちが心の中で渦巻くようになった。

―cityなんかよりtownだろ 日に焼けた肌で歌うんだろう(Pacific)
―金は全能か?無職はゴミか? お前の基準に踊らされたくない(Alright)

自分たちが愛するものを、信じるものを、周りにどう思われようと堂々と声高に叫ぶ。
彼らの楽曲から、彼らの言葉の一つ一つから感じる。それが彼らの姿勢だ。
自分のスタイルを絶対に曲げない信念、
「腹の中ではいつも中指立て続けてるんです」と臆することなく言えてしまうある種の青臭さ、
一見クールでシティっぽいのに都会より地元茅ヶ崎を愛する姿勢・・・

一方の私はどうか。
ビル街の東京で、六本木の喧騒の中で、
「港区女子」というレッテルに押しつぶされそうになりながら、
「ダサい」と思われないように精一杯のおしゃれをして、
周りからの評価に一喜一憂して。
いつまで経っても慣れない都会で、ぷるぷる震えている。

そう、要は、彼らに嫉妬しているのだ。
特に、私と全く同じ日に生まれたYONCEに対して。
生まれてから、私と全く同じ時間の長さを歩んできているはずなのに、
私より一日たりとも長く生きていないのに、
彼らは自分の心から好きな「音楽」というものを仕事にしていて、
それでお金を稼いで、そして何より、それによってリスナーを幸せにしている。
周りに流されずに、ぶれない自分の軸というものをしっかり持っていて、
それに従って生きている。
ああ、なんてかっこいいんだろう。だけど、悔しい。

だから、私は、一日の始まりに彼らの音楽を聴く。
私の仕事は、彼らの音楽みたいに、
決して多くの人の感情に直接訴えかけられるようなものではないかもしれないけれど、
まだまだ胸を張って自分の人生に「マル」をあげることはできないかもしれないけれど、
それでも彼らに少しでも近づきたいから。

明日からも、Suchmosの音楽を聴けば、きっと私は言葉にしようのない焦りに襲われる。
そして、ああ頑張ろう、と思えるのだ。

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