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彼奴らへの復讐

マイヘアから差し出された包丁を突き刺して

2017年の夏。私は人生で初めての挫折を味わった。

就活。

私は大学3年の夏から、地方公務員を目指し公務員試験の勉強をしていた。
暇さえあれば勉強、勉強、勉強。
いつ、どこで何をしていても手元に参考書がないと安心できないような状況で、今思い返すと、正常な精神状態ではなかったなぁと思う。勉強している、という状況に自分を置くことで、なんとか平静を保っていた。

6月にある地方上級の公務員試験。私は、この自治体にすべてを懸けていた。
周りの人からは、落ちた時どうするかちゃんと考えておきなさいよーと言われていたけど、当時の私は、自分にはここしかない、という思いだけで突っ走っていて「もしも」をまったく考えていなかった。いや、考えないようにしていたんだと思う。

だって、自分くらいは自分のことを信じてあげないと可哀想じゃん、と思ったり。
信じて頑張ってれば、絶対にうまくいく!神様は見ていてくれてるはず!!

とか。
思っていたんだけど。
 
 
 

結果は不合格。
 
 
 

頭が真っ白になった。

なんていうか、渡ってた橋が急に途切れてどこに行けばいいか分かんなくなったような。
これまでの努力はどうなるの?てか、これからどうすればいいの?
ここだけって言う気持ちで情熱を注いで、説明会にも何度も何度も足を運んだ。こんなに必死な人は他にいないだろうって思えるくらい。

でも、結局公務員試験は実力勝負。筆記、論文、面接の点数がすべて。
落ちる可能性なんてめちゃくちゃあったのに、その事実に気づかないふりをして、ただただがむしゃらになってた自分。甘かった。

勉強中、私はいつも、いわゆる応援ソングたるものを聴きまくっていた。
 

「君なら絶対大丈夫」 「きっとうまくいくよ」 「止まない雨はない」
 

でも、急にそんな綺麗な歌詞が、なんか全部馬鹿らしく聴こえてきて。
何を根拠にそんなことが言えるんだろうなんて、今まで自分を支えてくれた言葉たちを責め立てて突き放した。悪いのはただ単に実力の及ばなかった自分なのに。

それ以来、私はそういった音楽を一切聴けなくなった。

でも、落ちたからといってそのままでいるわけにはいかない。どこかに就職しなければならない。私はそれからなんとか立ち直り、再び就活を再開した。
いわゆる準公務員と言われるような団体の募集を片っ端から受けまくった。
でも、やはり当初志望していたところへの未練や整理できていない気持ち、「とりあえずどこかに就職しなければ」という思いが面接官に見透かされるのか、どこも最終面接で不合格となった。

9月、10月、11月。

依然として内定は一つも出ない。
周りの友人はとっくに内定をもらい、自由を手にしていた。

他にももっと辛い思いをしている人はいるはず。
でも、なんで私だけ?と悲観的になる日が続いた。

友人と顔を合わせるのも辛くなった。
「まだ決まらないの?」「さすがにやばいでしょ」 
そんな風に見下して、嘲笑う声が聞こえてくる気がして。
とうとうふさぎ込むようになった。ずっとこのままなのかもなぁ、まぁ、それでも仕方ないかぁ、なんて、ついに諦めの思いが湧き始めたその時。
 

My Hair is Badの”復讐”という曲に出会った。
 

恋愛をテーマにした曲だが、なんだかその時の自分の心境にぴったりとはまった。
でも、エントリーシートはラブレター、面接はお見合いと似たようなものだし、就活って恋愛みたいなものじゃないかなとも思う。
とにかく、今まで聴いてきたどんな応援ソングよりも背中を押された。押されたというより、強く拳で叩かれた感じ。いや、そんなものじゃなくて、もしかしたら「刺してやれ!」と包丁を差し出されたような心地だったかもしれない。

不思議なんだけど、なんだか俄然やる気が出てきたのだ。全然こっからじゃんって。
そうだ、今まで自分をさんざん落としてきた奴ら全員見返してやろう、惜しいことしたなって思わせてやろう、って。

この復讐が、私の原動力となった。

<こっから復讐してなんぼ> <きっと必ず後悔させてやる> <何回だってもう一回>
試験会場へ向かう途中、そして面接の直前も、Vo.の椎木から力強く放たれる言葉を、何度も何度も頭の中で反芻した。

そして、なんとか年の暮れの12月に初めての内定が出た。

第一志望だったところと比べると給与は低いし、決して華のある仕事とは言えないかもしれない。でも、私自身納得しているし、なんというか、一番しっくりきていると思う。
何よりも、周りの人たちよりもめちゃくちゃ時間がかかった分、すごく縁みたいなものを感じるし、とにかく精一杯頑張ってみようと思っている。
でも、今まで私を落としてきた奴ら、そして、恋い焦がれて全力を注いだ第一志望の彼奴らにも、私みたいな奴がいたってことを少しでも覚えていてほしいと思う。

<仏になって許してやる だから顔も体も名前も全部 ずっと覚えてて忘れないでいろ>
本当に歌詞の通りだ。

就活や受験で苦しんだ人、もしくは現在その状況にある人で、私と同じような思いをしている人は少なくないと思う。綺麗な応援ソングに耳を塞ぎたくなる時もあると思う。

そんな時、この”復讐”を聴いてみてほしいと思う。
そして、どれだけ失敗してくじけそうになっても、諦めずに起き上がってほしいと思う。
何回でも挑戦していれば、きっといつか、相手の心を深く突き刺すような思いが溢れ出すと思うから。

マイヘアから差し出される包丁を、強く、強く握りしめて。
 

<何十回!何百回!何回だってもう一回! 何千回!何万回!何回だってもう一回だろ!>
 

刺してやれ!

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