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誰かを愛する孤独な大人たちへ

人生に寄り添うモノブライト「Bright Ground Music」

こんな時代に、一つのCDを擦り切れるほど何度も繰り返し聞いている。
行きたくない会社に向かう途中、車のオーディオから流れる曲を、口ずさんで少し泣いた。

『愛してるよ 愛されてるよ君は 愛し、会わなくてもいい 点と点を』/愛飢えを

モノブライトの「Bright Ground Music」は言わば、「愛」や「孤独」に関する連作短編集の様なものだ。
誰にも言えない秘密。君に隠している嘘。勘違いですれ違っていく心。
全部が愛しているからこそ生まれるもの。
孤独な大人たちが、「誰か」や「何か」を愛しているからこそ、一人で悩んで、もがいて、不器用に生きている物語がこのアルバムの中にはある。
聴く人それぞれの心の中で、フィクションがノンフィクションになっていく。
曲の主人公がすぐそこで生きているように、その主人公がまるで自分であるかのように、一曲一曲が日常の中に溶け込んでいく。
本当に素晴らしいアルバムだと思う。
こんな薄っぺらい言葉では伝えられることじゃないけれど。

大人になると、否応なしに「孤独」を感じさせられる時間がある。
それは一人でいるという簡単に説明できる世界ではない。
そんな世界から少しでも離れるために、人は人を愛するのかななんて、くさいことを思ったりするのだが。
人間というのは、幸せになるためにそういう「愛」とか「孤独」について死ぬまで問い続ける様な気がする。
正解かどうかも分からない答えをだして、また問いて、また答えをだして。
本当は、何も悩まずに幸せでいられるならそうしたいものだけど、その繰り返しが人生の醍醐味だと思い込むことで、何とかやり過ごしているのかもしれない。

モノブライトの「Bright Ground Music」は、そういう人間が問いに対して答えをだす姿が描かれた作品だと思う。

「愛」をテーマにして書いた曲だとライブでも公言していた曲、「愛飢えを」。
これは、はっぴいえんどの「愛餓を」のオマージュなのだろうなあと考えながらも、メッセージをぼやかしにぼやかして芸術的な美しい音楽にするということが桃野さんのスタイルなのだと私は勝手に解釈していた訳だが、この「愛飢えを」はこれまでのスタイルと違って、冒頭の「愛してるよ…」の歌詞があまりにも直接的に洗脳のように泣かせてくるのでこれは困ったなあと思った。

『何が大事で本当か 自分の心に聞いてみる 個々に幸せが一つ 終わりも一つ』/愛飢えを

私は年末に恋人と別れた。
嫌いになったわけじゃなかった。原因は仕事が忙しく、心に余裕が無くなったことだった。
心に余裕が無いと、好きな人やものさえ、好きになれないことがある。相手の嫌な部分ばかりが見えてくる。大好きな音楽さえ聴きたくなくなる。優しさを優しさだと思えなくなる。本当はこのままで十分幸せなはずなのに。
理屈では説明できないことが、世の中にはたくさん溢れている。
「愛」というのもまた一つ、実体のない根拠のないものだ。
愛があったとしても、それは一緒にいるということとはイコールではないけれど、
限りある人生の中で、どれだけ他人に愛を伝えられるだろう。
伝えられずに、表現できずに、そっと胸の中にしまってある愛、その点と点をつなぎ合わせようという願いの込められた曲だ。
私は愛する人に愛を伝えたいと思う、限られた人生の中でできる限り。

『人は毎日毎日忙しい だからあなたに会えない 明日のために働く いつかあなたに会えるよう
外の雪がこんこんと 僕の心のドアノックした 今はまだ見えない鍵が 開いたような気がして』/冬、今日、タワー

今年に入ってから、私の住む街でも雪が降る日が何日かあった。
雪のせいで渋滞している車の中で『冬、今日、タワー』を聴いて、会えないあの人を想った。家族とか好きな人とか友達とか。
この街にタワーは無いけれど、あまりにも自分の気持ちと曲がリンクしすぎていて、ああ、これはダメだなあなんて思ってまた泣いてしまう。
仕事が忙しくて恋人と別れてしまったこと。
思いやりが持てず、好きな人を傷つけてしまうこと。
好きな音楽さえ聴きたくなくなるような日々。
いつも私の人生の中にモノブライトはきっかけを与えてくれたけど、こんなにも一人の人間の人生に寄り添う音楽はもう二度と無いのかもしれない。
その時私は、今年会社を辞めてこの街を出ていこうと決めた。
誰かを愛する人生にするために。それは、孤独であるが故に。

『希望握りしめいくのさ 僕は1人でもいくのさ 多分気分多分気分で 人はゼロになる』/ショートホープ

年末に彼らの活動休止ライブを大阪で見た。
彼らのライブはこんな時も笑いに溢れていて、実に人間らしかった。
桃野さんはいつも、らしくない曲(泣かせるような曲)をやる時は茶化して恥ずかしそうにする。らしくないというのは語弊で、本当は桃野さんらしいんだけど、桃野さんはそれを隠してしまう人だから、人間らしいなあと思ってまた好きになる。
そんな桃野さんを見て、微笑している出口さんと松下さんを見て、また好きになる。
だから、モノブライトのライブは泣けない。泣きたい気持ちはどこかに行ってしまって、ただただ笑って楽しくて最高だ。

モノブライトも一つ、問いに対して答えをだしたのだろうか。
そして、明日もまた答えを探す。

このアルバムがこれからもたくさんの人の心に届きますように。
誰かを愛する孤独な大人たちの人生に寄り添いますように。

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