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NICO Touches the Wallsと私と

HUMANIAからOYSTER-EP-まで追いかけ続けたその先へ

2017年12月6日。ミニアルバムとしてはインディーズ以来のリリースとなるOYSTER-EP-が世に放たれた。すでに様々なところで多くの人がその感想を述べている。新譜の感想を綴るのが苦手な自分は、これまでのことを主観ではあるが振り返ることにする。
 

私がNICO Touches the Wallsの存在を知ったのは2011年8月のこと。CSスカパーでたまたまやっていたMV集。その時に流れていたのは、順番は覚えていないが、手をたたけ、Diver、サドンデスゲーム、妄想隊員A、ホログラム、かけら-総べての想いたちへ-の6曲。8月17日のリリースを控え、新譜とともに過去作を振り返るものとしてだった。ぼんやりと名前は聞いたことがあったのだが、きちんと曲に触れたのは初めてだった。最初は何となく流し見ていて「よくありそうなJ-POPとJ-ROCKの境目を漂うバンドかな?つまんなさそうならチャンネル変えようかな?」そのように思っていた。しかし、結局MV集を最後まで見てしまっていた。それは、手をたたけのMVに惹かれたからである。あんなに底なしに明るい曲を聞いたことがなかった。まるで「自分達は今までに1度も何にも悩んだことがありません。ずっと陽の当たる道しか歩いてきませんでした。月の光を街灯にするほどの暗い道なんて知りません」とでも言っているかのような。そのため当時は、何の苦労もしていないトントン拍子に成功してきたバンドだという印象を持っていた。

数日後、CDショップに向かい手をたたけを購入。他の5曲も気になったこともあり、少しずつ調べるようになっていった。そこで、12月7日にアルバムを出すことと年が明けたらリリースツアーがあることが分かり、これはいっちょ覗いてみるか、とツアーに間に合わせるための曲集めが始まった。

HUMANIAのリリースを待つ間、新しいものから古いものへ順に遡る形で買ったりレンタルしたりしながら聞いていった。オーロラあたりの時期は第1印象と近い感じがあり、やはり暗いものを一切知らないバンドなのかと感じていた。しかし、PASSENGERやインディーズの頃のミニアルバムに行き当たると、それまでに抱いていた印象が覆された。「あのとてつもない明るさに辿り着くまでにこんなにも長く苦しみもがいていたのか」と驚きと衝撃がなかなか消えなかった。もしかしたらこのバンドはもっとたくさんの横顔があるのかもしれない。ますますおもしろくなってきた。もし途中で飽きればいつでもやめればいい。それが音楽の選び方の自由なところ。しばらく追いかけてみよう。そう決め、HUMANIAを手に取り、リリースツアーへと向かった。

DVDとして出されているのは追加公演の幕張であるが、私は本編の大阪と追加の大阪の両方に足を運んだ。そこで観たものは、音源やMVだけではわからない、むしろそこから盛大にはみ出し過ぎるほどの見せ方と遊び方だった。まだ追って半年しか経たないが確信に変わった。しばらくと言わず、ずっとついていこう。これだけのアレンジクローゼットを持っているのなら安心できる。『2011年はリリースイヤーだったので2012年はライブイヤーにします』光村がその年の予定方向を宣言し、期待が高まった。
 

2012年。夏の大三角形で再びオーロラの頃のようなキラキラした姿を示した後、ALGORHYTMIQUEツアーが始まった。初踏の土地を含みつつ、何のリリースも持たず、ただやりたいように展開するロングツアー。2010年に行われたミチナキミチツアーの2012年版ではないか?という自己考察をしながら参加。HUMANIAツアーよりずっとタイトで引き締まったライブだったように記憶している。途中鹿児島でのトラブルはあったが、何とか無事に終えたところに夢1号。光村が、自身の夢の中で見たMVのようなものを現実に持ってきて作った曲だ。リリース日とツアーのファイナルが自分にとって大切な日の前後とあって、NICOからのプレゼントだと捉え受け取ることにした。この年はNICOに関連する友人が増え、公式発信だけではわからない、リスナーだから・ファンだからこそ感じ取れる側面を知った1年であった。
 

2013年はMr.ECHOリリース、Shout to the Walls!リリースとそのツアー、ニワカ雨ニモ負ケズのリリースがあり、次なるアクションである、2014年2月のカベニミミに繋がるわけだが、その狭間の時期はこれまでを知らない新しいファンがぐっと増えたような感触があった。あくまでも普通にロックバンドとして見ていたいファンと、その頃じわじわとブームになりつつあったアイドルバンドと呼ばれるような振る舞い方を求める新規ファンとが衝突しているような場面を見かけることが多くなっていた。その火消しが済まないうちにカベニミミが始まってしまったものだから、あのオリジナル実験室1ヵ月籠城スタイルへの賛否両論が飛び交う状況が常に続く状態となっていた。ベストとローハイドのリリースをへても勢いは収まらず、落ち着いたのは結局Zeppツアーと天地ガエシの頃だった。その荒れに耐え切れずNICOから離れてしまった人が『TOKYO Dreamer買わないかも。8月19日の武道館は見たくないかも』とこぼしていたのはとても悲しかった覚えがある。私も確かにそんな状況を見続けていることが辛いなと思うことがあったが、遠巻きに静観するようにして、巻き込まれないように距離感を調節していたつもりだ。しかし、全員がそうできるわけもなく、そこで離れるかまだついていくかの選択を迫られた出来事ではあったと思う。
 

2015年はHowdy!!We are ACO Touches the Wallsをリリース、ACO Touches the Wallsとしての活動は、あくまでも別バンドだという位置づけであった。一旦活動休止をへて、後に2017年の1125/2017 ニコフェスト!で活動再開するのだが、どこまでも別グループだ別人だとするのがおもしろい。エレクトリックモードとアコースティックモードでは、ステージへと向かう心持ちが異なるのかもしれない。

まっすぐなうたをリリースし、それを抱えたツアー(ファンの間ではネギツアーと呼ばれていた)を敢行、秋には渦と渦に絡めたイベントがあった。この渦と渦のあたりでも再びカベニミミの頃のようなことが起きていた。しかし前回ほどは尾を引かず、そんなに疲弊することはなかった。今から思えばおそらく古村がケガをしたことにより「今はごちゃごちゃと割れている場合じゃない」と団結したからだろう。NICOではメンバーの不調の知らせが珍しい。だからこそ、不安が集まり何かしようという思いが働いたのだろう。最初で最後の3ピースバンドとして、昼は東京/夜は大阪と駆け抜けたこの年の1125だったが、そこで実際に下北沢組と梅田組に分かれて千羽鶴を送るという企画があった。公式Twitterにどちらも無事に受け取ったことを知らせるツイートを古村がしてくれた時は、いろんな感情が混ざり泣いた覚えがある。2015年は印象に残る1年だったように感じた。

出演予定だったCOUNTDOWN JAPAN15/16は自分達を慕ってくれる後輩BLUE ENCOUNTにピンチヒッターを頼み、西の渦と題した大阪城ホールは翌年の5月へ。そして迎えた2016年。大阪城ホールと対になるように組まれた東の渦武道館。そこで本来の4ピースバンドとしての復活を遂げた。その狼煙を見せつけるかのように、これまで以上に攻めたセットリストで安心させてくれた。私は東の渦には行けず、西の渦の方しか観ていないのだが、大阪城ホールに響くTHE BUNGYを聴いた時には思わず涙が溢れた。本来は飛んで踊って楽しむ曲だが、その日ばかりは泣かずにはいられなかった。1度触れれば強く耳に残り、この曲の生命線となっているあの印象的なフレーズ。そこは古村の担当だ。途中で坂倉のベースラインとの絡みもあるが、あのパートがなければ成り立たないのだ。1125の光村バージョンは新鮮で良かったが、やはり本来の人が戻ってきての完全復活なのである。元通りのTHE BUNGYを観たことにより、私の中で「これでもう古村は大丈夫だ」と胸を撫で下ろした。2つの渦の間にニワトリツアーと呼ばれた、勇気も愛もないなんてのリリースとそのツアー、ストラトのリリースがあったが、その時はまだ自分の中では完全な安心ではなかったため、西の渦を観られたことが私にとって本当に良かったことだと思う。

マシ・マシのリリースを控えた2016年の1125で告知解禁されたFighting NICOツアー。ALGORHYTMIQUEツアーと同様に何のリリースも背負わないツアー。第2のALGORHYTMIQUEか?と最初は捉えたのだが、印象としてはどうやら少し違ったようだ。2013年の1125が過去最大の攻めたセットリストだったのだが、それを東京だけに留めず全国展開したようなツアーだったのではと自分は解釈した。リリースを持たないツアーの方が自由なテーマでやれるし、自称アレンジ飽き性の4人としても性に合っているのではないかと思う。新譜のイメージに縛られないとなると、予想できない分、こちらとしても想像の幅が広がりより楽しいものである。日程中、個人的に思い入れの強い会場があり、その公演では私の1番好きな曲が聴けてしまった。そのため公演中ずっと涙が止まらず、終演後も人目そっちのけで沸き出した感情のままにその場に崩れた。その曲が聴けること、その会場で観られること、そのどちらも強く長く待ち望んでいた。1日で両方が実現した。その夜だけはその日参戦した誰よりも愛を叫んだ自信がある。自惚れだろうが、自意識過剰だろうが何でもいい。その思いは私だけのものだということは揺らがない。

全国の大学の学祭を巡った後、2009年から毎年恒例の11月25日のイイニコの日ライブがまたやってくる。ファンにとっては1年で1番のお祭り騒ぎの1日である。本気でNICOが好きで愛して止まない者達が、学校よりも仕事よりも家族や友人との予定よりも何よりも最優先に、NICOのためならばと早くから予定を空け、全国から駆けつけ一同に集う日だ。毎年熱量が凄まじ過ぎて、24日に前夜祭、26日に後夜祭を開催した方が良いのでは?それくらいはしても許されるのでは?と個人的には思っている。2014年から毎年開催している、対バン形式自主企画ライブのニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ フェストというものがあるのだが、2017年はやらないのか?と心配する声がちらほら聞かれていた。それがまさかの1125をフェスト形式で開催とは誰が予想できたのだろうか。おまけに会場が幕張メッセとあり、例年以上にお祭り色が濃くなることが期待された。

バンドとしての交友関係が普段あまり明かされていないうえ、1度フェストに呼んだバンドは出さないという条件がこっそりと存在するため、おおよそどのあたりとの繋がりや接点があるのか読めないところを、なんとかヒントはないかと予想合戦が始まっていた。そのすべてが当たったのかは知ることはできないが、選んだゲストに間違いはなかったんだという思いを、幕張メッセの空気を揺らすものすべてから汲み取ったような気がした。
 

そして12月6日。音源としてはマシ・マシ以来となるOYSTER-EP-のリリース。EPとは?という声があちらこちらで見られた。私はミニアルバムだという認識であるが、シングルを大きくしたものだという見解もあり、どちらなのかはわからない。だが、一応ミニアルバムだというつもりで冒頭の書き方をした。西の渦のDVDしか出ていなかったため、新曲を待っていたファンは多かったことだろう。何故牡蠣なのか?何故紫であんなジャケットなのか?とデザインやコンセプトを推測する者、EPサイズで出す意味を考察する者、曲のタイトルからどんな曲が来るのかと想像した者。Funny Side Up!はMVが公開されたため、曲の素性が明らかになったが、それ以外は謎に包まれた曲達。Fighting NICOツアーで披露されていた新曲の行方は?どの視点や切り口からであれ、それぞれが自分なりに受け入れる準備をして、手に取れるその日を迎えた。
 

もう1度書くが、私は新譜の感想を上手く述べるのが苦手である。ただ、そんな自分でも1つ明確に思えたことがある。2011年に手をたたけに触れてから2017年のOYSTERに触れるまで約6年。「今の4人が考えていることがよくわからないなぁ?もういっそのことNICOから離れてしまおうか?」何度もそう思うタイミングがあった。しかし、エレクトリックもアコースティックも、OYSTERに込められたすべてのミネラルを感じた時に、やっぱり見捨てずに諦めずに追いかけ続けて来て良かった、と心の底から思えた。それが答えの1つなのかもしれない。
 

2014年のオールカタカナ推しから始まり、2015年はネギを、2016年はニワトリを、そして2017年は牡蠣を、それぞれ中心モチーフにしてきたNICOだが、ここまで食べ物が続くと次は何だ?具材によっては鍋ができるぞ?というネタが飛び交う。音楽の少し外に、そういうおもしろがれるようなものを持ってくることも、私が好きなところのうちの1つである。
 

2011年に出会えた音。それが2018年を迎えた今まで繋がることになるとは、当時は予想だにしなかった。6年ほどになるが、1バンド当たり長くても2~3年ほどで飽きてしまうことが多かった私にとって、波はありつつもこんなにも長く好きでいられる気持ちが続くバンドはなかなかない。今から思えば、一生かけても出会い切れないほど多くのバンドの中からNICO Touches the Wallsを見つけられた2011年の自分に感謝したい気持ちでいっぱいである。
 

2018年1月25日。NICO Touches the Wallsの新たな予定が発表された。N X Aツアーである。全国ツアーとしては今までにやったことがないような試みをするという。NICOが今までにやったことがないこと?これまでもたくさんの新しい遊び方を提示してくれたのに、まだ何かあるというのか。
 
 
 

――熱狂には、さらなる熱狂を。僕らは大の負けず嫌いだから、みんながくれるものには必ずお釣りを付けて返してやろうと思っている。だから、これから先もその気持ちはどうか遠慮なく僕らに預けてほしい。その愛で僕らを焼き殺すつもりで来い。――
 
 
 

2017年Fighting NICOツアーでの言葉だ。そこまで言うのなら、次の“N X A”ツアーで、4人を包むその愛の力を持って焼き殺してみせよう。どんなお釣りで答えて返してくれるだろうか。大変楽しみである。

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