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嵐の中を歩いてきた唄

BUMP OF CHICKENとわたし

わたしがBUMP OF CHICKENと出会ったのは中学一年生の秋だった。

今思えばわたしは当時、相当大きなストレスを抱えていた。

その頃、母と離れて暮らしていた。もともと兄に嫌われていたわたしは、兄のイラついた様子に怯え、ひたすら息をつめていた。父はいつも悲しそうな顔をしていた。

今となれば、兄も父も精神的にギリギリだったのだとわかる。だけどそのときのわたしは、自分だけが我慢して、圧迫されているような気持ちだった。

誰を信じればいいのか。
誰に甘えればいいのか。
ひとりぼっちだった。
シャワーを浴びているあいだだけ、声を出して泣いた。
 
 

“会いに来たよ 会いに来たよ
君に会いに来たんだよ”
 
 

給食の時間に流れてきた声は、とても優しい響きをもって、わたしに真っ直ぐに届いた。

どこかで聞いたことがあったけど、わからない。どうしても気になる。隣にいた友達に「バンプオブチキンの曲」ということを教えてもらい、なんとかチキンね、と覚えて、数日後レンタルCD屋さんでなんとかチキンを探した。とりあえず一番厚いアルバムを借りてみた。

それがorbital periodだった。

運のいいことに、給食の時間で聴いた曲はそこに収録されていた。「涙のふるさと」という曲だった。
 

“君の心の内側から 外側の世界まで
僕を知って欲しくて 来たんだよ”
 

君が誰にも見せられなかった涙を、僕は知っているよ、と言われた気がした。その声は、ボロボロのわたしに、ほんとうに、あまりにも優しかった。
 

それからわたしは、メンバーの名前を知り、シングルやアルバムを追いかけ、ラジオを聴き、ライブに参加した。悲しいときも嬉しいときも苦しいときも、どんなときもBUMPの音楽はわたしの側にいて、わたしと共に歩いてくれた。
 

大学生になって家を出た。兄との溝は一向に埋まらない。実家は居心地が悪かった。

「お兄ちゃんに挨拶しなさい」「兄弟は仲良くしないと」「お前が悪い」

大学三年生の夏。
慣れ親しんだ実家のリビングなのに、そこは小さな無人島だった。嵐がきて、恐怖と寂しさと悲しみでぐちゃぐちゃだ。いろんな方向から雨が打ち付けて、突風が吹いて、濁流に飲まれそうなとき。
 
 

“迷子のままでも大丈夫
僕らはどこへでもいけると思う”
 
 

あの声が、テレビから流れてきた。CMに起用された「記念撮影」だった。
これまで毎日のように聴いてきた声だったのに、八年前のあの給食の時間のようにもう一度、わたしを見つけ出してくれたような気がした。
 
 

藤原基央はしばしば、僕らの楽曲は主役じゃなくていい、あなたの人生のすみっこのほうに置いといて、なんて言うけれど。

BUMP OF CHICKENの唄は、嵐の中で迷子になるわたしを見つけ出した。

人生のすみっこでうずくまるわたしを、そうして何度も抱きしめてくれるのだった。

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