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私と夜の本気ダンス

大阪・なんばHatchの夜

私事であるが2016年の秋、突然鬱病になった。
原因は仕事のストレス。毎日朝から晩まで自分にひっきりなしに押し寄せてくる無理難題に心と身体が壊れてしまったのだ。涙が止まらなくて、四六時中「消えてしまいたい」と考えていた。
何もしたくないし、できない。
当然会社にも行けず、あんなに大好きだった音楽さえも全く聴かなくなってしまった。

そんな時、私を支えてくれたのは“夜の本気ダンス”だった。
彼らのことはずっと前から知っていた。何なら気になってライブを見に行ったことがあるバンドだった。

身体も脳みそも動かない私は今日も布団に寝転がりぼんやりと携帯をいじる。
そしてたまたま目に留まった夜の本気ダンスに関する記事を読み、ドラムスの鈴鹿秋斗がバンドがメジャーデビューをしているにも関わらず未だに会社員をしているということを知り衝撃を受ける。
夜ダンのドラマーとしてバンドのエンジンを担っている鈴鹿。そんな彼のあだ名、それは“MCモンスター”。その名の通り、彼はバンドのムードメーカーでありライブではとにかくよくしゃべる。
「メジャーデビューまでしているのに仕事を続けているなんて・・・。しかもあの元気なMC。この人はどんなにタフな人なのだろう。」
仕事が出来なくてくすぶっている私からしたら、充実した、いやむしろ充実しすぎな毎日を送る鈴鹿秋斗の姿は本当にキラキラ輝いて見えた。
 

そんな中、私は2017年1月に大阪・なんばHatchにて行われた彼らのワンマンツアー「Too Shy A Key TOUR 2017」に参加することになる。病気になる前にチケットを取ってしまっていたこともあり、重い体を引きずりながら会場へと向かった私。夜の本気ダンスといえば「踊れる準備はできてますか?」のフレーズでおなじみだが、当然踊れる準備ができていない私は後方で大人見をするつもりであった。しかし、いざ始まってしまえば彼らの掻き鳴らすキレのある心地よい音楽とその鮮やかな世界観に引き込まれていた。
米田貴紀の艶のある歌声とパフォーマンス、当時夜ダンに加入したてで本格的なツアー参加はそれが初めてであった西田一紀のギター、マイケルの轟かす攻撃的なベース、そして鈴鹿秋斗の力強いドラム。
彼らのルーツであるUKロックなどの洋楽や90年代後半から00年代前半の邦ロックの要素、それに彼ら独自の要素を掛け合わせた唯一無二のビートに会場は完全にダンスホールと化し、後方まで熱気が充満していた。気が付けば完全に汗まみれになっていた私。
彼らの音楽、さらには人間性に触れて完全に心を鷲掴みにされてしまった。

音楽から遠ざかっていた私はまたウォークマンを取り出す。
やっぱり音楽が好きなんだと感じた。

その日をきっかけに、私は彼らが出演する近郊でのライブは極力参加するようになった。
彼らのライブに参加しているその瞬間は「頭が真っ白になり嫌なことも何もかも忘れられる」そんな気がした。そしてスッキリして「明日からも頑張ろう」という気持ちになれた。
人間、楽しみを見つければやはり強い。
鬱になって以来「働く」という当たり前のことができない自分をひたすら責め続ける毎日だったが、彼らと出会ったことでささいな生きがいを見つけ前を向けるようになった気がする。
それ以降、家族、主治医、会社の協力のもと治療や復職に向けた訓練に専念し、時々ライブに参加という生活を続けた。そして時間がかかったものの何とか復職にこぎつける。現在も治療を続けているが、ほぼ普通の生活を送れるようになった。休職中は人生の岐路を迎え自分のことを見つめ直したし、たくさんの人の優しさを知った気がする。
 

そして月日は流れ、私は2018年2月16日に大阪で行われた彼らのワンマンツアー「Kotteri! intelli! One Man Show!」に参加した。
夜の本気ダンスが昨年10月にリリースしたアルバム『INTELLIGENCE』を引っ提げて全国9ヶ所を回ったこのツアー。
偶然なことに会場は昨年私が彼らに心奪われた場所と同じ会場、大阪・なんばHatch。その偶然に月日の経つことの早さを感じ、なんだか感慨深いものがあった。あの頃は新メンバーとして紹介されていた西田一紀もいまではすっかりバンドに欠かせないギタリストとなっている。
幸いなことにその日は今ツアーのファイナル。メンバーが作り出す一音一音をしっかりかみしめながら見た。

この一年弱での彼らの躍進と進化は凄まじかった。アルバム『INTELLIGENCE』と今回のツアーはまさにそれの象徴であったと思う。
米田の歌声はより感情表現が豊かになった。切ないところはより切なく、伸びやかな所はより伸びやかに。西田のギターは時には繊細に、時には大胆に楽曲の雰囲気を盛り上げる。マイケルのベースはメロディーとしての役割とリズムとしての役割を使い分け、存在感がさらに増した。鈴鹿のドラムは今までは四つ打ち中心だった中、音の数が増えてよりパーカッシブになり曲の幅がぐっと広がった。
従来は“夜の本気ダンス=BPMが速い踊れる四つ打ちロック”というイメージだったが、今回のアルバムとツアーを通して「(引き出しは)それだけじゃないんだぞ!」という底力を見せつけられた気がする。
夜の本気ダンスはこの1年弱でより深みが増し“大人なロック”を掻き鳴らすバンドになっていた。

セットリストはアルバムの楽曲を中心に構成されていたが、『WHERE?』や『By My Side』などのキラーチューンは勿論、いくつかの楽曲をノンストップで演奏し続けるHONKI DANCE TIMEパート、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバーである『N.G.S』、更にはメロウな『Dance in the rain』など、ワンマンだからこそ見れる夜ダンの様々な面が濃縮されたお腹一杯の内容であった。

そしてその日の演奏で一番グッと来たのがアンコールで演奏された『Fun Fun Fun』という曲。サビの「駆け出す僕らを止めないで(中略)旅立つ僕らを止めないで」というフレーズは、新たな目標に果敢に挑み続け、成果を残し進化し続ける彼らにぴったりのフレーズではないだろうか。
また最後の最後に4人そろってステージ中央で万歳をする光景も美しかった。鈴鹿の挨拶「夜の本気ダンスは今年10周年を迎えます!これからも夜の本気ダンスを宜しくお願いします!」というストレートだけど、メンバーや家族、スタッフ、そしてお客さんへの愛と感謝が込められた熱い熱い言葉。さすがバンドが結成された2008年から唯一残り続けているオリジナルメンバー、言葉の重みが違う。
そんな鈴鹿秋斗は一年前と違い今はもう会社員をやめた。“仕事をしながら夢を叶える”という偉業を成し遂げたのだ。
その日の鈴鹿秋斗もやっぱりキラキラ輝いて見えた。
 

夜の本気ダンスは一年弱を経てとてつもない進化をしたが私はどうだろうか??
鬱病という人生の岐路を迎えて少しは成長できただろうか??
彼らはきっとこれからも進化し続ける。私はそんな彼らにこれからもついていきたいし、私自身も彼らに負けないぐらい進化していきたいと強く思う。少なくとも、今私がこうやって普通の生活を送れるようになったのは彼らとの出会いがあったからだと思っている。勝手ながらこの場でお礼が言いたい。
最高に楽しくて、最高に素敵な時間をありがとう。
これからも私はあなた達の音楽で踊り続けたい。

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