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ロックとポップのアンサンブル

UNISON SQUARE GARDEN至上最も冒険しているアルバム『MODE MOOD MODE』

ずるい。UNISON SQUARE GARDENの7枚目のアルバム『MODE MOOD MODE』に収録されている12曲を全て聞き終えた私が、思わず口にした言葉である。ずるいという言葉は本来、悪い意味で使用されるのが一般的だ。でもこの“ずるい”は、決して悪口ではない。少し捻くれている彼らの素敵な仕業に対して、天邪鬼である私なりの仕返しだ。

前作の『Dr.Izzy』が、「ユニゾンは最高なロックバンドだ」と証明してくれた傑作だった。だから当分はお預けだな、と思っていた矢先に2018年の元旦に公式Twitterで情報が解禁された。それだけではなかった。なんと発売まで曲名も曲順も全て謎に包み、CDを購入した物好きだけが知ることが出来るという前代未聞の贈り物まで用意してきたのだ。なのに、その時は、試験後のご褒美ができてラッキーぐらいの気持ちでいた。まさか想像を超えるくらい殴りこんでくるとは思いもしなかったから。それぐらい今作の『MODE MOOD MODE』が、今までのユニゾン至上最高にアグレッシヴで、計算し尽くされたポップが散りばめられたアルバムだと思う。傑作を更に傑作で更新するのは簡単ではない。そんな難しいことを、涼しい顔でこなしてしまうのが彼ららしくて好きになった所の1つである。
 

今回のなにがそんなに最高なのかというと、『Own Civilization (nano-mile met)』で、1曲目にもかかわらず我々を『MODE MOOD MODE』の世界に突如迷わせる所をまず挙げたい。あれだけリリース前に、ポップだと待ち構えていたのに、ゴリゴリのロックサウンドが現れて、驚く人はいないと勝手に思っている。なんなら、これまでの正統派ユニゾンとは異なるサウンドで戸惑ったのが正直な感想である。それでも、曲を咀嚼するほど、脳内にさりげなく溶け込ませてしまうのがすごいところだ。ラストサビ終わりの<ここらでぐらつかせてやろう 有体たる流れを変えてやろう ほら僕と君とで遊んでやろう> そして2曲目の『Dizzy Trickster』のサビ前の<歪な解釈でいいじゃないか 責任も問いはしないぜ>が、今のユニゾンのスタンスを彼らなりに表しており、アルバムの序盤からかっこいいと改めて実感させてくる。
2曲目と打って変わって、『オーケストラを観にいこう』は、最初の2曲とは全く対である曲なのに、ユニゾンにしては珍しいラブソングかと思わせるような爽やかで壮大なポップサウンドだ。ボーカル・斎藤宏介の透明感溢れる声と、ユニゾンの曲との相性は未知であったオーケストラメロディが意外にも合っていて、個人的に新しい発見になった。
しかし、ここからがジェットコースターかと勘違いするほど『MODE MOOD MODE』に振り回されるアトラクションのはじまりである。そして、『MODE MOOD MODE』の序章に過ぎない。
まず4曲目の『fake town baby』で急上昇し、5曲目の『静謐甘美秋暮抒情』ではモードでエモーショナルな曲でセンチメンタルに浸らせたかと思いきや、『Silent Libre Mirage』が水しぶきを浴びさせるかのように落としてくる。もうこの時点で私は、情報が一気に突入してきたおかげで、耳と脳内が非常に混乱していた。カオスとはこのことである。想像以上にユニゾンのロックの振り幅が広すぎて、まだアルバムの半分しか聴いていないことに驚きを隠せなかった。
でも、ユニゾンがこれだけで済ますわけがない。7曲目からの『MIDNIGHT JUNGLE』、『フィクションフリーククライシス』、『Invisible Sensation』の流れが個人的に最高すぎてたまらない。ヘンテコな曲なのに、不思議と一瞬で吸い込んでハマらせてしまう。前の2曲は4月から始まるツアーで披露してくれるのが楽しみであるし、ライブで化ける曲だと想定している。そんな一発でノックアウト曲が2連続飛んできたことを忘れさせてくれるのが9曲目の『Invisible Sensation』だ。シングル曲でもアルバムの立ち位置で、印象がこんなにも変わる曲とは思わなかったのはこの曲が初めてで、より一層好きになった。ユニゾンというロックバンドはやはり敵わないな、とつくづく思う。
10曲目の『夢が覚めたら(at that river)』の、<さよなら街灯り、ずっと愛してたよ>が、最後は<さよなら街灯り、ずっと愛してるよ>になるのも、11曲目の『10% roll, 10% romance』の<有史以来 僕だけかも ねえ>が、<有史以来 僕だけで十分だからさ>と、小さな変化を歌詞カードで見つけるのもお宝探しみたいでワクワクした。
これまで、『Own Civilization (nano-mile met)』からはじまり、散々引っかけ回されてきた私はもうお腹いっぱいだった。それでも今までの悪戯を全部許してしまうくらいの名曲に全て持って行かれた。最後の12曲目である、『君の瞳に恋してない』だ。
私が曲を好きになるパターンは、2つある。1つは、聴けば聴くほど好きになる、いわゆるスルメ曲に当てはまるパターン。もう1つは、イントロを聴いた瞬間に心が持っていかれるパターン。『君の瞳に恋してない』は後方の、その曲に一目惚れしてしまうパターンである。曲名にしかり、歌詞も所々少し捻くれているけれど、トロンボーンにピアノにと、ごちゃ混ぜの多幸感で溢れる曲だ。個人的に、シュガソン以来のとんでもない名曲が出来てしまったのではないかとある意味で怖くなったほどである。

そんな『君の瞳に恋してない』、なかなかのツンデレ曲であると思う。例えば、サビ前では<そろそろ止めたらいいのに>と突き放すくせに、サビのはじめが、<せめて君ぐらいの声はちゃんと聞こえるように>ってなんだかんだ優しいのだ。
ずるい。そんなこと言われたら、君の瞳に恋してないと言われているのに好きになってしまうではないか。いや、とっくに好きだし夢中でいるけれども。今回の最後にこんな最上級のポップを用意されたら、ポップが好きな人も、そうではなくてロックが好きな人も、もっとくれ!と欲張りになるのも無理もない。この『MODE MOOD MODE』の12曲目のために作られた曲と言っても過言ではないだろうか。
そして、最後の<僕の手握っていいから>で我々が欲張りであることを許してくれているし、彼らに「振り回されるのも悪くないでしょ?」と言われているかのようだ。このアルバムの中で1番ロックとポップが違和感なく共存している。だから1番心を奪われたのかもしれない。
こんなことができるユニゾンは、唯一無二で正真正銘のロックバンドだ。間違いない。
加えて、振り回されるのも悪くない。寧ろもっとやってくれ。でもあのユニゾンだ。こちらから願わなくても、これからも常識にとらわれずに彼らが好きなように音楽をしていくのに違いないだろうし、わからずやには見えない魔法をかけ続けるのであろう。私はもうその魔法にかかっているのは確実だ。これからはしっかり手を握るつもりだし、自由にバンドを信じる。保証はないのにどうしてそこまで自信があるのか。だって、全てはユニゾンのせいなのだから。そんな彼らを見て聴いて楽しむだけで、生きてみようと心から思えるのだから。

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