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Plastic Treeが描く“ドアの向こう側”へ

Plastic Tree『doorAdore』に寄せて

前作『剥製』より2年2ヶ月ぶりとなる、Plastic Tree通算14枚目のオリジナルアルバム『doorAdore』。ドアアドア、“扉”と“崇拝”を掛け合わせた造語だ。昨年メジャーデビュー20周年を迎えた彼らが鳴らし続けてきた音楽に対する敬慕と、とてもポジティブな意味での“Plastic Tree最終章”へ向けた第1歩となる今作。
彼らにとっての新たな扉は、開かれたばかりだ。

扉を開けて私たちが最初に出会うのは、砂丘で撮影されたというMVも話題を呼んだ「遠国」。触れたら壊れてしまいそうなVo.有村竜太朗氏の儚げな歌声がぽとり ぽとりと落ちてきて、冒頭から何ともメランコリックな幕開けである。
続く「恋は灰色」はそのタイトルから歌謡曲のような懐かしさを感じるサウンドかと思いきや、疾走感溢れるロックナンバーだったのだから驚きだ。

フランス語で“実存主義”を意味する「エクジスタンシアリスム」は、その歌詞にも注目してほしい。

《斜に構えて何諭す? 理論武装誤魔化せてる?
そのフォトグラフ嫌い それオリジナルじゃない》
《フィードバックで埋もれてる コミュ症な歌とか好き
そこディレイとかかけて あとリバーブも足して》
――Plastic Tree「エクジスタンシアリスム」より

最初は“写真も歌も好き放題加工できるようになった現代に疑問を呈する曲”という印象だった。しかし、単にそれについて歌った曲ではない。
上記の歌詞に続くのは以下の言葉だ。

《ねぇ 透きとおって好きすぎて 見えなくなるから》
《もう 原形も幻影も どうでも良いや》
――Plastic Tree「エクジスタンシアリスム」より

物事の本質を捉えようとした時に、結局それが分からなくなってしまう。 そこで葛藤する自分と、それでも「好き」という感情抱いてしまう自分。その二面性を描いた非常にユニークな楽曲だと、私は感じた。

昨年リリースされたシングルにはなかった、イントロに雨音を入れるというアレンジが施された「雨中遊泳」は雨の季節の出会いと別れを歌った切ない楽曲。ただ悲しいだけではなく、聴き終わる頃には雨が上がったように晴れやかな気持ちになる、プラ流雨ソングの決定版だ。
続く「サイレントノイズ」は2016年にリリースされたシングル曲で、ゲーム「Collar×Malice」の主題歌にも起用されるなどプラの楽曲の多様性を示す重要な1曲となっている。

良い意味で予想を裏切られた「サーチ アンド デストロイ」は、一言一言、物語を紡ぐかのように語りかけるボーカルが印象的だ。
哀愁漂うメロディに胸を締め付けられるような歌詞が乗る「残映」から一転、可愛らしい「いろつき」はその曲調と歌詞のギャップもさながら、今までのプラになかった実験的な楽曲になっている。聴く者全てをあっ、と思わせるような細部まで凝った何ともニクい演出をお聴き逃しなく。

続いて昨年リリースされたシングル曲「念力」は今まで以上にギラギラしたアレンジが施され、何とも楽しい仕上がりになっている。
Gt.ナカヤマアキラ氏の“アキラ節”が炸裂しまくっている「scenario」は、ライブ映え間違いなしのナンバー。これを聴いてアガらない人はいないと断言しよう。
その次に「ノクターン」のようなプラらしい“聴かせ曲”を持ってくるところに、「さすがPlastic Tree」と言いたくなってしまう。
そんなバラエティに富んだ楽曲たちを締めくくるのは、2016年にリリースされた『サイレントノイズ』のカップリング曲である「静かの海」。近年ライブでもよく披露されファンの間ではすっかりおなじみの曲だが、このアルバムのためにあったのではないかと思わされるほど、ラストを飾るにふさわしい楽曲だ。

全編を通して「別れ」の曲が多い印象だが、「別れ」を様々な角度から切り取って全く違うアプローチができるバンドは少ないのではないだろうか。20年以上このシーンで活動しているバンドが、今もなお攻めの姿勢で変化を続けているという事実にただただ驚くばかりだ。
次はどんな景色を見せてくれるのだろうか?
私は楽しみで仕方ない。

『doorAdore』の“扉”はPlastic Treeの新たな可能性を意味していることはもちろん、この作品を通して初めて彼らの音楽に触れる人々にとって、プラとの出会いの“扉”になることだろう。今までのプラと、これからのプラが詰まったまさに集大成のような今作。出会いと別れが交差するこの季節に、これを読んでいる貴方がPlastic Treeと出会えますように。

ぜひ1度、扉を開いてみてほしい。

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