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あれはまさに前衛的な懐古だった

cinema staffは今が1番カッコいいバンドだ

その日、18:50に起きた。もう開演には間に合わない。ワンワン泣いて、叫んで、それでももう間に合わない。なんで寝ちゃったんだろう!

 そんな夢を見た。慌てて飛び起きるとまだ昼間で、開演に十分間に合う時間だった。体調の関係で行こうか悩んでいたけれど、うつる病気じゃないので、「ええい、多少無理してでも行ってしまえ!」と家を出た。

六本木の駅から歩き、目に飛び込んだのは「EX THEATER ROPPONGI」と「cinema staff 前衛懐古主義part2 東京編」という眩しい文字。初めて行ったので、あんなに立派な会場だとは知らず驚いた。中も面白い構造で、ステージとアリーナはB3F、スタンド(着座)がB2FとB1F。

本編の始まりは《白い砂漠のマーチ》、わたしたちは砂漠から歩き出した。

今回こういったライブをやってくれることはファンにとってはもちろんうれしいことだけど、演奏している4人にとってもうれしいことだったということがわかる発言があった。

飯田(vo、gt)「良い曲があるのに、それが過去の曲になってしまうのがもったいないと思っていて。当時はライブをしても人が集まらなかったりもしたので、やっと日の目を浴びたなと」

だいたいのニュアンスであるが、こういうようなことを言っていた。自分たちの曲を、わたしたち以上に大切に思っているのはメンバーで、本人たちにとってもたのしいライブだったんじゃないかと思う。想像以上にこの企画に込められた思いが強いことを知って胸が熱くなった。

わたしにとってもいろいろなことを懐古する時間になった。一時期よく聴いた《skeleton》を久しぶりに聴いたら、その時期のことを思い出したように、あの曲を聴いたあのライブハウスだとか、これを聴いたときにあんな気持ちだったなぁとか。懐かしい気持ちと、今のシネマで聴けるうれしさもあって。なんでかというと、いつか聴いたときとは印象が違うから。もう祈るような《skeleton》ではなくて、「僕たちはうまくやれる」というフレーズにはわたし、わたしたちも含まれているような気がした。あの曲を聴いて「わたしもうまくやれる」だなんて思ったのは初めてだったのだ。時間をかけてシネマが変わってきたことを肌で感じてちょっと震えた。同じ曲、同じ演者でも、気持ちや音が変わると聴こえ方が違う。バンドは生き物だということを目の当たりにした。

照明もすごく良かった。《warszawa》《実験室》《WARP》《海について》の照明が特に印象的で、曲との相乗効果で美しい空間に仕上がっていた。

砂漠から歩き始めた旅も終盤、MCではこんな話があった。

飯田(vo、gt)「友達が「今日で会えるのが最後かもしれない」っていう気持ちでライブをしてるって言っているのを聞いて、やっと気が付いたんです。そうではないなって。もう一度会うためにライブをしてるんです。モチベーション、というかどういう心持ちでやっていこうかなって思ってたんですけど、去年やっと見つけた」

野音のときにも「返したい」という話をしてくれていて、あのときもすごく心に響いた。それが今は飯田の中で「こうしてやっていく」という確信に変わっていることを感じたのだ。「たどたどしくてごめんなさいね」と言いながら、きちんとことばを選んで伝えてくれる姿を見て自然に泣きそうになってた。人の熱い思いに触れたときってのは、無意識に涙が出るものなのだ。

こらえた先に待っていたのが《into the green》。歌いだした瞬間にたまらなくなって、ボロボロ泣いた。なんの涙かはわからないけど、「シネマスタッフをすきでよかった」と思いながら、肩を震わせて泣いた。わたしはこの曲にひどく思い入れがあって、「あのときのintoが」って話をよくする。この日のintoも、「あのときのinto」になるんだろう。

わたしは、この日聴いた曲が何年も前の曲だなんて思えなかった。懐古だなんて生易しいものじゃない、前衛的な懐古だった。スポットライトが当たっていたのは曲じゃない、演奏している今のシネマスタッフだったわけだ。

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