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白けた日々よ泡になれ

米津玄師の示す道

こちら東京は朝の8時半。
丸の内にある、御社の説明会に向かう中央線の電車内で私はぽちぽちスマホでこれを書いている。

そういえば起きてから、朝ごはんを食べる時間はなかったな。
いや、そもそも寮で一人暮らしをしているからまともな食材が部屋にないのだった。

仕方ない。
 

電車内は不機嫌な大人たちでぎっしり。
花粉がヤバい、なんて言われつつ窓の外には確かに春が来ていて、明るくなって、ぼんやり美しい。
のに、誰も外を見てはいない。

マスクをして眉をひそめて眠り、スマホを睨みつけ、都心に向けて運ばれている。
これを打っている私も周りから見たら大差ないのだろう。

リクルートスーツに身を固め、ポニーテール。
前髪を留めて、極め付けはベージュのトレンチコート。

仕方ない。
 

就職活動とは難しいもので、恰好は均質に、個性をなくして、消して。
そんなこんなで就活生という生き物に擬態できたと思ったら畳み掛けられる。

「あなたの夢は?」
「あなたが成し遂げたことは?」
「あなたはどんな人?」

他の人とは違うあなたを!と。
勘弁してほしい。私は「私」をどうしたら良いのだろうか。

そもそも自分語りが苦手だ。
こうやって「自分語りは苦手だ。」なんて言っていることがもうすでに恥ずかしい。

けれど“就活生”をやってしまっている以上そんなことは言っていられなくて。

それなのに、昨日も結局日付が変わって今日の3時になるまで粘った、エントリーシートは1文字も書けなかった。
自分の夢とかよくわからない。
とりあえず寝よう。

仕方ない。
 

何度「仕方ない」で済ませたのだろう。思考停止して、周りに倣い、ふらふら歩いている。
自分がわからない。
そんな日々に、耳元で問いかけられる。

「戸惑い憂い怒り狂い たどり着いた祈り
君の心死なずいるなら 応答せよ早急に」

祈り。

きっと私は今、戸惑っているのだ。
急激な環境の変化、突然突きつけられたわりに自分の将来とかまで考えなくちゃいけない現実。
そうやって何もかも中途半端に成長できないままで、私はもう少しで22歳になってしまう。

苦しい、誰かに正解を教えてほしい。
 

そんなぐちゃぐちゃな私に米津玄師の声はぐさりと刺さって、それでもってさらにぐちゃぐちゃに攪拌された。

そして追い討ちをかけるようにPaper Flowerだ。

「白けた日々よ泡になれ ハレルヤ」

Lemonが社会的にも大ヒットして、毎日何かしらの媒体であなたの名前を見かけるようになった。
さぞ輝かしい日々を過ごしていることでしょう。砂の惑星にはもういないのでしょう。私が応えても届かないんでしょう。

そんな私の見当はずれな嫉妬心のようなものをぶち壊すように、米津玄師は「白けた日々」と言い切った。

正直ハッとした。
私は、私は、私は?と自家中毒のように、私は勝手に煮詰まっていたんだろう。

ここまで打って顔を上げたら、線路沿いの名前も知らないお寺で、朝からどこかの誰かのためのお葬式準備が進んでいるのが見えた。

そうだ、このしょうもない私のぐちゃぐちゃもいずれはきっと泡になるのだ。
ハレルヤ。

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