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打首獄門同好会 日本武道館

至高の「普通」を魅せた武道館ワンマン

変わった名前のバンドが変わった歌を13年半歌い続けた結果、それが「普通」として受け入れられている最高の瞬間を目の当たりにした。
3月11日に行われた、打首獄門同好会の武道館ワンマンである。

当日は「獄」グッズを身につけたファンで、会場周辺は溢れ返っていた。若者から妙齢の大人、さらにはお子様まで。本当に幅広い年齢層のファンが集まっているのが印象的であった。
しかし考えてみれば当然のことである。
愛だとか夢だとか希望だとか。そんな抽象的なことよりも、食事や睡眠のことを歌っている曲の方がよっぽど身近であり、誰にでも共感を得やすい。誰しもに関係する歌を、大澤会長が作り続けた結果の景色であった。

開場してからスクリーンには自主制作番組の映像が流され、それが終わるとメンバーとVJがステージに立った。
そして大澤会長のこんな言葉でライブは幕を開けた。

「人生でそう何度も言えることでは無いと思うので、敢えて言わせていただきます。武道館にお越しの皆様、我々が打首獄門同好会でございます!」

思えば武道館らしいMCをしたのは、これが最後だったような気がする。

秋田からのゲスト、なまはげの叩く和太鼓とともに1曲目の「DON-GARA」が始まり、血が一気に沸騰するような感覚になった。和太鼓の音を聞いて身体が疼かない日本人がいるだろうか。アリーナを見下ろせば同じように全員が拳を上げ、これから始まる祝祭に胸をときめかせていた。
「島国DNA」ではアリーナの観客の上をマグロが飛び交い、「きのこたけのこ戦争」ではきのこ軍とたけのこ軍に分かれてウォールオブデスを巻き起こし。
「日本の米は世界一」では人差し指を天に掲げて日本の米の良さを叫び、「カモン諭吉」ではお金が欲しいことを叫ぶとメンバーの肖像画が描かれたお札が上空からばら撒かれ。

どの曲も面白く、演奏も素晴らしいものであった。しかしどの曲も、そして音を鳴らすメンバーの姿も、極めて「普通」のものであった。

初の武道館となると、派手な演出と感動的なMCが付いてくることが多い。
しかし武道館らしいMCはライブの冒頭のみ。演出面では「TAVEMONO NO URAMI」で炎は出たものの、飛び交うマグロやウォールオブデスなどはライブハウスでいつも行われている日常の風景である。

ライブハウスでの当たり前の景色が、武道館でも行われている。そんな「普通」のライブであった。
彼らは武道館を特別な場所として捉えながらも、「いつもより大きな大きなライブハウス」として普段通りのパフォーマンスを行ったのである。

終盤に差し掛かる頃、彼らが結成して最初に作ったという「Breakfast」が演奏された。

『とにかくもぬけの殻のオマエに 朝からぶちこむエネルギーだ 時間なんてどうでもいいから ぶち込め腹に
朝だメシだエサだ残さず食え 全て食べたら行けやGO
これから一日世のクソ共と やり合うためのエネルギーだ 食えないなど言ってる場合か 詰め込め腹に
朝だ起きろ食べろとにかく食え 全て消えたら行けやGO』 (Breakfast)

現在では肉や魚、米や焼き鳥など様々な食べ物を、作曲のテーマとエネルギーに変えている。そして13年半前は朝食を仕事のエネルギーに変える歌を作っていた。
ずっと前から、というより最初からこんな曲を作っていたのである。

しかしブレずに同じことを長年続けた結果、彼らは武道館という大舞台に辿り着いた。
それも特別なMC、演出は特に無しで。何ならライブのタイトルも「打首獄門同好会 at 日本武道館」と、とてもシンプルに銘打って。

この日のライブは、至高の「普通」であった。

最近ではニュースなどにも取り上げられ、ロックファン以外にも認知されつつある。
その度に人々から「変わったバンドだね」と思われるに違いない。
それでも彼らは一般的なバンドが作るような歌詞とメロディでは無いような曲を演奏し続けるのだろう。
打首獄門同好会が最高の「普通」のバンドとして受け入れられるその日まで。

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