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すべてを乗り越えたその先に

真空ホロウと私と

私が真空ホロウの存在を知ったのは2014年2月、ちょうど虹がリリースされるところくらいだったかと思う。その頃、別のバンドで知り合った友人が「今ハマっているバンドで、私が思うネクストブレイクだと思うバンドがいる。予想は外れるかもしれないけど、良かったら聞いてみて」と教えてくれたのがきっかけだった。

その友人が虹のリリース時に配信されていたツイキャスのリンクを教えてくれたので覗いてみた。名古屋でのレギュラーラジオ番組内からだった。配信を見た第1印象は「何だろう?自分達の素性を掴ませてくれなさそうなこの3人は?」だった。同時に茨城県出身だと知り、北関東に偏見があるつもりではなかったのだが、「ミュージシャンじゃなかったら怖くて近寄れなさそうな人達だな」とも感じた。

その後、きちんと曲を聞いてみたいと思い、出ているMVを順に追っていった。そのどれもが当時の自分にとっては衝撃的でカッコイイ曲ばかりだった。MVがない他の曲を聞きたい!とすぐにCDショップへ向かった。だが、私の住む地域では取り扱いがなく、そこから何軒も探しに回ることが続いた。
 

曲集めが捗らない中、関西公演を見つけた。しかもそこで会場限定シングルであるthe◎を発売するというではないか。ちょうど「近くの地域でライブないかなぁ?」と思っていたところだったため、すぐにそのチケットを取り、わくわくしながら当日を待った。当該ライブはワンマンライブではなく、そのライブハウスが企画するイベントライブではあったのだが、短い尺で観ただけでもワンマンライブを観ているかのような内容で「これがワンマンになるとなれば、どんなもっとすごいライブになるのだろう?」とさらに高揚感が増した。
 

不定期で開催されている真空パックという自主企画ライブがあるのだが、そのVol8が私にとって初のワンマンサイズで観られる公演だった。ロックバンドのライブは通常2時間程度行われるものだが、2時間以上観ていたかのような感覚だった。終演後に時計を見た時、「これで本当に2時間なのか?時計の針が嘘の時刻を示しているのではないか?」と錯覚したことを覚えている。この頃やっと一部の曲を除くすべての曲が自分の手元に揃い、ライブ以外でも好きな時に聴けるようになったタイミングだった。
 

2015年4月、バンドとしては初のフルアルバムがリリースされた。これまでのアルバムがミニアルバムばかりだったため、待ち望んだフルアルバムであった。メジャーデビュー以降女子高校生のジャケットが続いていたため、3人の姿がジャケットだったことに驚き、思わずCDを落としそうになったことは自分だけの話である。

リリースツアーが進んでいく中、夏の自主企画ライブを中止する知らせが。不穏な空気が漂った先に2015年7月1日のあの発表が来た。知って1年くらいの自分でさえ脱退の2文字が涙で滲んで見えたのだから、古くからのファンが受けた衝撃はかなりのものであっただろうと推測される。当該体制ラストツアーとなったリリースツアーだが、ツアー終了後はソロプロジェクトになるということはあまり考え過ぎないようにしていた。自分にとってはその方がいくらかは楽に受け止められると思ったからだ。
 

弾き語りであったり、サポートメンバーを入れてのバンドライブであったり、様々な試みを行いながら、Torch.とTorch.2のリリースライブ、夏の2つの真空パックへと繋がっていった。自主企画ライブを続けながら、フロアの反応を見ながら、未発表の新曲を毎回数曲持ってくる。音楽に関するすべての責任とその7文字の名前を背負い続ける決意と覚悟がその肩にある。2015年のROCK IN JAPAN FESTIVALでのインタビューで『責任が分散しなくなった分、音楽に集中できる環境になった』と、村田と大貫の脱退発表直後のブログで『未来に向かって、動き出してはいるのだけれど、どうなっていくかなんて、誰も、わからないですし。怖い。泣きそう。吐きそう。眠れない。笑。でも、その分だけ、ワクワクもしている。だから、大丈夫なのです。誰がなんと言おうと』とそれぞれ言っていた。だが、表に立つ時はずっと笑顔を絶やさなかったその奥で、どこにも誰にも見せられない苦しみの中を泳いでいたのではないかと私は思う。
 

ポジティブな力とネガティブな力の間でせめぎ合っているのではないか。その不安の途中、初のホール公演を2016年12月に開催すると知った。やっとライブハウスではない会場でその音に触れられるんだ。もらった告知フライヤーをぐしゃぐしゃにしながら噛みしめていた。初めて観た2014年。いつかライブハウスではないところで観てみたい。その時から思っていた。それが実現するのだ。始動10周年ということもあり、節目は見届けておきたい思いが強く、(個人的には)強行スケジュールで足を運んだ。前半はこれまでの真空ホロウを、後半はこれからの真空ホロウを。10年間の歩みを1つの写真アルバムにまとめたようなライブだった。まだ私が知らなかった頃の曲もあったが、1つ1つ振り返るように観ていた。このライブの時点ではまだしばらく1人の状態が続くのだろうなとは感じつつも、どこか明るく希望に満ちた2017年が迎えられそうだなと安心できた節があった。
 

3月に高原が加入し2人体制となったわけだが、周囲では「やっと側で一緒に鳴らしてくれる仲間が見つかったんだね」とほっとした様子を見せる人が多く、大きな決断をしてくれた高原に感謝を述べる声が見受けられた。5月にアルバムを出し、やっとバンド形態でツアーに向かえるようになったことは、この2年が報われた証なのではないかと思う。『必ずまたバンドで地方に戻ってきます』その言葉を信じて待っていて良かった。もう1人じゃないんだ。他に正式メンバーがいるんだ。その事実が確かな現実で嘘じゃない。曇っていた何かが少し晴れたような気がした。

2015年のリリースツアーと2017年のリリースツアーと両方に足を運び感じたのは、2015年の続きが2017年だったのだなと安心したこと。『何人編成でも良いからいろんなことを試してみたい』といつか言っていたが、秋にはMIZUKIも加入し3ピースバンドに戻ったことで、やはり3人体制が1番やりやすい形なのではないかと感じた。トライアングルである状態が最もバランスが整っているように見える。
 

村田と大貫が在籍していた頃の松本は真顔が多くあまり笑わない印象で、あまり表に感情を出さない人なのだろうか?と思っていた。しかし、一旦1人になり、高原を迎え、MIZUKIを迎え、幾多の困難を乗り越えた後の彼は、それまでよりもずっとにこやかに笑うようになっていた。エムカードのインタビューの中で『変わってるよねってよく言われるけれど、そうじゃなくて僕も普通の人なんですよ』というようなことを話していたが、よく知らない人からすれば、よくわからない人、という印象が先行しがちなのかもしれないと思う。
 
 
 

――真空ホロウを好きな人が好きだ。真空ホロウを好きな人でいっぱいにしたい。信じてくれている人のために、もっともっと真空ホロウでいっぱいにしたい。いろんな人の音楽の一部を真空ホロウでいっぱいにしたい。いろんな人の生活の一部を真空ホロウでいっぱいにしたい。チョコレートのようには甘くないのは分かっているけれど、まっすぐ素直に、真空ホロウが、みんなに届きますように。――
 
 
 

2018年の決意を示した言葉である。本当はいつまでもどこかに少年のような心を残していて、誰よりも純粋に音楽の力を信じて歩き続けている人なのだろうと思う。だからこそこの言葉が出たのだと捉えている。
 

もし自分がもっと早い時期に真空ホロウに出会っていて、村田と大貫がいた頃のライブをたくさん観ていたなら。高原とMIZUKIが紡ぎ出す音を受け入れるのに、かなりの時間を要したのかもしれない。しかし、村田と大貫が脱退してからのライブの方が観た回数が多い自分にとっては、どんな体制になってでも松本自らが灯台となり歩みを止めないでいてくれることが頼りであり、数々の賛否両論をかき分けてでもついてゆける道標となっているのである。山本ワタルから大貫朋也へ、村田智史から高原未奈へ、そして大貫朋也からMIZUKIへ。隣と背中を支えるボトムスがどんなに変わっても、真空ホロウという看板の歴史のすべてを唯一知る松本明人というボーカリストがそこに居続けてくれるなら、もうぐらつかない大丈夫だと信じていられる。
 

2017年のその日で始動11周年を迎えたが、11年で5種類もの体制で活動してきたバンドは、私が知る限りでは他にいないのではないかと思う。どんなに編成が変わろうとも、メンバーが変わることに前向きなイメージを与えてくれるのはこのバンドだけだ。側で同じ方を向いていられる人が誰もいなくなった時、離れていく人が多かった。しかし私はどこかで再びバンドに戻る可能性を信じていた。何年かかってでもいつか必ずまた、3ピースではないバンドになっているかもしれないけれど、弾き語りではなく観られる日が訪れると、手を離さずにいて良かった。リズム隊が女性になったことで、変わってしまったと思ってしまうことはあるだろう。しかし、変わったことも変わらないことも全部抱えて、過去も現在も飲み込んで、未来を見据えて歩き出した真空ホロウに期待を持ちたい。
 

日常と非日常の狭間にある扉を開き、今日も私はその小さな物語に触れに行く。暗いことのポジティブさ、明るいことのネガティブさ。一見すると間違えて言っているように見えるが、一般的に言われる印象の反対のイメージの良さ悪さを、そっとカンペを出すように柔らかく優しくそれとなく示して教えてくれる。
 
 
 

”真空ホロウへようこそ”
 
 
 

その言葉が始まりの合図だ。

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