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石段を叩いて進む

完全体のlynch.が再び走り出した

2018年3月11日、幕張メッセで行われたライブ『13th ANNIVERSARY -XIII GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]』。このライブでlynch.に明徳(B.)が戻ってきた。
明徳の復帰には賛否両論あるのかもしれないが、私は「おかえり」という気持ちだ。無論彼のしたことを100%許すわけではないが、5人でやれるならやったほうが良いという考えだからだ。
2016年11月に明徳が大麻取締法で逮捕、翌12月に起訴され脱退してからおよそ1年3ヶ月。その前に昨年末のカウントダウンライブのアンコールで明徳が登場し4曲を演奏しているが、正式にlynch.のベーシストとしてステージに立つのは実に久しぶりのことである。

明徳の脱退を受けしばらく活動を自粛していたlynch.が再び動き出したのは2017年になってからのことだった。
まず2月10日に新しいアーティスト写真が公開された。そこには4人になったlynch.が写っていたが、中でも(帽子をかぶってはいたが)坊主にした玲央(G.)に強い衝撃を受けた。
それと同時に4月18日に『THE JUDGEMENT DAY』と銘打たれた復活ライブが新木場STUDIO COASTで開催されることが発表された。

新木場STUDIO COASTを前に葉月(Vo.)はあるインタビューでこう話していた。
「5人のlynch.にあったものをなんとか4人で守っていく」
「変わるかもしれないけど変えたくない」
(出典:『音楽と人』2017年5月号)
それらの言葉は息が苦しくなるほど胸に響いた。

迎えた新木場STUDIO COASTのライブでは、4人のサポートベーシストが代わる代わるステージに登場するという、離れ技のような手法が取られた。
これはファンの悲しみを最小限に抑え、最大限に楽しんでもらおうという彼らなりの配慮だった。ある意味苦肉の策だったと言えるかもしれない。
この手法はその後のツアー『THE SINNER STRIKES BACK』のファイナルとなった日比谷野外大音楽堂でも取られ、そのライブの模様は昨年11月8日にリリースされた『BLØOD THIRSTY CREATURE』のブルーレイやDVDに収録されているので見て欲しい。

この頃からlynch.はライブやリリース物の告知をこれまで以上に熱心に行うようになっていった。
以前からメンバーが率先してライブ告知を行うバンドではあったが、リリース物に関してはハッキリと「買ってください」と押すバンドというイメージがなかったので、少しばかり違和感を覚えた。

10月から12月にかけて行われたツアー『THE BLØODTHIRSTY CREATURES』で、これまでサポートを務めた4人のベーシストたちがひとり、またひとりとサポートを終了したと聞いて、「終了」という言葉にまた違和感を覚えた。
「終了」という言葉を使えば次はないからだ。

それらは12月20日に葉月がカウントダウンライブの宣伝ツイートの文末に「最後にはきっと泣けます」とあったことから、もしかして、という予感に変わった。
それはカウントダウンライブのサポートベーシストが名古屋に拠点を置く彼らの大先輩、名古屋出身のバンドが活躍する礎を築いた黒夢の人時だったことからもだ。

そして大みそかにZepp Nagoyaで行われたカウントダウンライブ。
アンコールにて明徳が登場し、深々と頭を下げ、なかなか顔を上げない彼に人時がベースを手渡す。
のちにあるインタビューで知ったことだが、明徳にベースを手渡す役は人時自らが名乗り出たという。
(出典:『lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]特集|結成13周年ライブに向けて 明徳(B)復帰を前にしたバンドの意気込み – 音楽ナタリー 特集・インタビュー』)
私はその様子を葉月のInstagramで見たが、そのシーンもさることながら、葉月が「lynch.です!よろしくお願いします!」と言って始まった『ADORE』のイントロに心を揺さぶられた。
たった数秒のシーンだが、迫力あるlynch.の音に改めて魅了された。
(この様子は今も葉月のInstagramで見ることができる)

これもあとから知ったことだが、実は明徳をlynch.に戻すために4人は水面下で1年がかりで動いていたのだ。

あるインタビューで玲央はこう話している。
「『サポートメンバーを加えて音源も出して、ライブ活動もして、ちゃんと実績を作りながら会社側に判断してもらおうじゃないか』という結論に至ったんです」
(出典:『lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]特集|結成13周年ライブに向けて 明徳(B)復帰を前にしたバンドの意気込み – 音楽ナタリー 特集・インタビュー』)
これを読んで納得した。なぜこれまで以上にライブに来てください、リリース物を買ってくださいと押していたのか。
実績を作り上げなければ要望は通らない。
まるで会社のようだが、実にlynch.らしい発想だなと思った。

アルバム『AVANTGARDE』に収録されている『EVIDENCE』に、このような歌詞がある。

───喰らいつけ この時に 誰ひとり離すな
(lynch.『EVIDENCE』より)

彼らは諦めなかった。バンドを続けることも、明徳をバンドに戻し5人で活動することも。
言葉どおり誰ひとり離さなかった。
長らく正式なベーシストが決まらなかったこのバンドは、明徳が加入してからのlynch.を「完全体になった」と話していた。
だからこそ4人体制で復活した当時、葉月はオフィシャルサイトで「今のlynch.は完全ではありません」とコメントしていた。
復活自体は嬉しかったものの、その言葉は私の胸に突き刺さった。
一緒にやりたいメンバーとバンドが続けられる。こんな幸福なことはそうそうない。

再び完全体となったlynch.は早くも臨戦態勢に入っている。
まずは4月25日に『SINNERS-EP』と『BLØOD THIRSTY CREATURE』を明徳のベースでリテイクしリミックスした『SINNERS -no one can fake my bløod-』がリリースされ、7月にはニューアルバムの発売が決まっており、また4月から5月にかけてはFC限定も含むツアーや、さらに6月24日には『LUNATIC FEST. 2018』への出演が決まっている。

近年のlynch.の作品にはBLOOD=血がテーマとして共通しているように思う。
たとえば『AVANTGARDE』のジャケットデザインはまるで血しぶきのようだし、『BLØOD THIRSTY CREATURE』は「血に飢えた怪物」だ。
そこに今回『SINNERS -no one can fake my bløod-』が製作されたことで、明徳不在時に製作された音源にも彼の血が通うことになった。
それは『AVANTGARDE』から、いや、結成時から脈々と受け継がれるバンドの血だ。
その血には解散したり音楽を離れていった仲間のものも含まれている、そんな気がする。
『SINNERS-EP』から本格的にエンジニアとして参加しているЯyo Trackmakerこと元ギルガメッシュのЯyoがその代表と言えるだろう。
彼とlynch.がタッグを組むようになってからサウンド面で抜群の相性を見せるようになった。
いまやlynch.のサウンドに欠かせない人物のひとりと言っても過言ではないだろう。

もしlynch.が2016年に東名阪で開催された無料ツアー、その後出演した『VISUAL JAPAN SUMMIT 2016』の勢いのまま進んでいたら今頃どうなっていたのかなという思いがないわけではない。
だが、たらればを言ってもしょうがない。
lynch.はこれまでも慎重に歩んできたバンドだ。
「石橋を叩いて渡る」という言葉があるが、lynch.の場合は13階段にちなんだ作品やライブタイトルが多いことから「石段を叩いて進む」といったところか。
たとえこの先茨の道が待ち受けていたとしても、lynch.なら乗り越えていってくれると信じている。

完全体のlynch.が、再び走り出した。

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