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かかってこいよ NakamuraEmi

NIPPONNO ONNAWO UTAU

小さな身体に小さな顔、大きな目をくしゃくしゃにして小動物のように笑う可愛らしさ。
薄いブルーのサマーニットで、首元にはストール。ベージュのチノパンという出で立ちなのに、女性らしさが滲み出て止まらない。
それがNakamuraEmiだ。

「2017年の夏フェス、今日ここで締めくくりなんです!」

「INAKA FES」と名前がつくほどの田舎の、
本当になんてことない小さなフェス。地元の私ですらあまり行く機会のない地域に、あのNakamuraEmiが来る!

その驚きの事実に秒速でチケットを取った私は、その日が来るのを子どものように楽しみにした。
 

NakamuraEmiを知るきっかけが何だったか
思い出そうとしても思い出せない。
気づいたら名前を目にしていて、何の気なしにiPodにアルバムを入れていたらしい。
 
 

10代の頃から歌手になりたくて幾度となく親とぶつかり、資格は取る、という条件つきで保育士と幼稚園教諭の免許だけを取り、意気揚々と上京した私。

しかしよくある「夢追いフリーター」となり、御多分に洩れず6年間あーだこーだと音楽活動をやってるんだかやってないんだか的な生活に飲まれ、その日を生きていくことに精一杯。

音楽のオーディションなのに、「フォトジェニック賞」なるものをもらったその日に
「なんか、もう終わりかも」と、逃げるように地元に戻り、結婚。
普通の主婦としての通勤中にたまたま流れたNakamuraEmiの曲。
 
 

それはとてつもない衝撃だった。
 

正直、一回も聴いたこと無いわけではなかった。
確か「YAMABIKO」のYouTubeは見たことがあったし、テレビでそれを歌う彼女の映像も目にしていたと思う。
ただ、その時には刺さらなかった。
 

でも今は刺さっている。なんなら刺さった挙句に全力で顔面をぶん殴られ、脳天に何かをドカーンと落とされた衝撃。
 

え、ちょっとこれは誰?
……なかむらえみ????

いや、ほら!この曲だけかもしれないし!いいのは!!と、慌てた私はiPodを次の曲にまわす。
 

すうっ と息を吸って、一音発した彼女の歌声に、結局私は前が見えなくなるほど号泣していた。
 
 

あんなに好きだった音楽がいつからか苦痛になってしまった事。
努力のしようはあったのに、その時気づかなかった情けなさ。
自分で決めて帰って来たのに、まだ引きずる東京への未練。
先の目標がなくなってどう生きていけばいいのか分からない不安。
20代後半、既婚、というよく分からないプレッシャー。
 

私はそんなことに毎日毎日飲み込まれていた。

もちろん、そうなることを予想して東京から引き上げて来たはずで、全て自分で決め納得していたはずなのに。
彼女の曲は、それら全てをお見通しだった。
 
 

(夢と現実を迷う よく聞くこの状況は思ったより辛いものだ)
 
 

そう歌ってくれた彼女のステージは、力強く、とても優しかった。
 

聴いている時はあまり気がつかないが、彼女の歌はハイトーンが続く。
hip-hopの影響で言葉数も多く、ジェットコースターのように上がったり下がったりするメロディーも、おかまいなしに歌いあげてしまう。

ステージの端から端まで余すことなく歩きまわり、歌詞の内容に沿った身振り手振りでオーディエンスを魅了していく。何より印象的だったのは、彼女はライブの最中、何度もこちら側一人一人としっかり目を合わせていた事だ。

ステージをぽかんと見つめる小さなお客様にだって、NakamuraEmiは態度を変えない。
 

「初めましてNakamuraEmiです」
「あなたに届くように歌っています」
私にはそんな意思表示に見えた。
 
 

生きていれば誰にでも起こりうる、悔しさや悲しさ、情けなさをまるごと受け入れ、
日常に埋もれて見逃してしまうくらいありきたりな事柄にも、そっと寄り添ってくれる彼女の曲に、女性だけでなく男性も、そしてぽかんと見ていた子どもたちだって、感じるものはたくさんあっただろう。
 

そんなNakamuraEmiが今日
「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5」
をリリースした。
 

(携帯がない
そんな時代 知ってる最後の世代かもしれない

なんか忘れてる気がした 大切なこと)
 
 

相変わらずふらふらと生きているだけの私を、彼女の歌は今日も愛を持ってぶん殴ってくれるのだろう。
 

かかってこいよ、NakamuraEmi
私も私の人生を自分で選びとってやる。

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