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いつも聞いていたあのメロディーが

Eins:Vier『Searching Red Light』

Eins:Vier──あなたはこのバンドをご存じだろうか?
Eins:Vier。読み方はアインスフィア。
メジャーデビュー当時のメンバーはHirofumi(Vo.)、Yoshitsugu(G.)、Luna(B.)、Atsuhito(Dr.)の4人。ちなみに現在Yoshitsuguは中村佳嗣名義で清春などのライブサポートも務めている。
1990年結成、’95年メジャーデビュー。その後’99年に解散し、2011年に再結成。(ちなみにAtsuhitoは音楽を離れてしまったこともあってか再結成には参加していない)
その後’13年のライブをもってしばらく沈黙していたこのバンドが、昨年再び動き出した。それも“2018年、セルフカバーベスト盤リリース”そして“全国ツアー開催”というビッグニュース付きで。
音源は’99年のベスト盤『UNTITLED』以来およそ20年ぶりのリリースになる。その頃に生まれた子はもうすぐ成人になると思うとめまいがしそうだ。

’12年に赤坂BLITZ(現マイナビBLITZ赤坂)で行われたライブのあと、私はSNSで知り合ったEins:Vier(以下アインス)仲間さんとこんな話をした。
「今だったらアインスの音楽がもっと世の中に受け入れられるんじゃないか」
そう思っていた私には願ってもないニュースだった。
セルフカバーベスト盤というのも、’96年にリリースしたミニアルバム『SONG REMAINS THE SAME』や、他にもシングルのカップリング曲のうち何曲かはインディーズ時代の曲を再録していた(当時はセルフカバーやリテイクという言葉はまだ一般的ではなかったように思う)、そんな風に自分たちの楽曲を大切にするアインスらしいなと思った。

アインスはいわゆるヴィジュアル系と呼ばれるバンドだが、ライブでのHirofumiの言葉を借りるなら「ミディアムテンポのヴィジュアル系」だ。
彼らの音楽性はU.K.ロックがルーツで、インディーズ時代やメジャーデビュー直後はどこかほの暗く鬱蒼とした曲が多かった。
U.K.ロックをルーツとするバンドで、サウンド面にもその匂いが顕著なバンドは、ヴィジュアル系の枠を飛び越え邦ロックの枠で見ても数少ないと思う。
その点が今の時代にアインスの音楽が受け入れられるんじゃないかと思った理由だ。

それがだんだん明るくポップな曲が多くなっていき、次第にカラッとした曲調のロックになっていった。
今思えばシングル『…love me』がリリースされたあたりから私はその変化にだんだんとついていけなくなった。周りのアインス仲間さんたちから「新しい曲も好き」という言葉を聞くたびに孤独を感じていた。なんとか一生懸命彼らの新しい曲も好きになろうとしていた。

アルバム『timeless words』に収録されている『Come more slowly』に大好きな歌詞の一節がある。

───さぁ ゆっくり近づいておいで みんな一人じゃない 信じて
───さぁ ゆっくり 何も飾らずに そのままの自分でいいから
(Eins:Vier『Come more slowly』より)

私は人づきあいが苦手だ。学生時代は勉強もせずただひたすら何時間もアインスのCDを聞いていた。
そんな私をこの曲は、とくにこの歌詞は肯定してくれた。あのときはまったく気づかなかったけど、これも今思えば私は無自覚に自分を肯定してくれる音楽を求めていたのかもしれない。
いや、あのときだけじゃない。今もだ。

年が明けてから、セルフカバーベスト盤のタイトル『Searching Red Light』と収録曲が発表された。
先に書いた『Come more slowly』や『after』など他にも入って欲しかった大好きな曲はいっぱいあったが、それを言い出したらキリがない。
アインスの曲は名曲揃いなのだから。

そしてついに3月14日に『Searching Red Light』がリリースされた。
1曲目の『Dear Song』の出だしの音から「おおっ!?そうきたか!」と驚いたほどイントロのギターもギターソロも音色を変えている。
これについてYoshitsuguはとあるインタビューで「昔のソロは聴けたものではないですからね(苦笑)」と話しているのを読んで、「いやいや、そのソロも好きだったんですよ」と思いもしたが。
(出典:BARKS『【インタビュー】Yoshitsugu[Eins:Vier]、「楽しめてる。形に出来たことで決着がついた」』)

『Dear Song』 にこのような歌詞がある。

───いつも聞こえてたなつかしの歌が 二人の心から離れてゆき
───過ぎ去った日々は取り戻せず 僕は流れゆく時を感じる
───うた声は変わり 流行歌をくちずさむ僕
───忘れられなかった あのメロディーに想いをはせながら・・・
(Eins:Vier『Dear Song』より)

久々に聞いて改めてこの歌詞が胸に染みた。
’95年リリースのこのメジャーデビュー曲も、リリースから20年以上の月日が経ったという意味で懐かしの歌になってしまったけれどこのセルフカバーで今の歌になっている。
『Dear Song』は私にとってアインスと出会った今でも大切な歌だ。

『In your dream』は〈どうせ引き裂かれるのなら 夢の間に…僕はあなたと死にたい〉と歌う切ない曲だ。
だが、2012年2月26日の赤坂BLITZのライブでHirofumiはこの曲を〈僕はあなたと生きたい〉と歌詞を変えて歌っていたことを思い出した。
〈本当はこのまま…このまま〉のあとには生きたいと続くんじゃないかと今は思う。
ライブも夢のように儚い時間だけどメンバーが音楽を続けてくれたからこそ夢の続きが今ここにある。

怪しい雰囲気が魅力の『Notice』では、この曲の持つ怪しくも怖い雰囲気を残しておいてくれて嬉しくなった。
〈立ち塞がる問題に 君は今も逃げているのかい?〉
この歌詞はいつ聞いてもまるで自分に言われているようで胸に刺さる。

『花の声』では、ここで歌われる〈目の前の小さな花〉とはファンのことなのかもしれないと思った。
リリース当時は気づかなかったことにこのセルフカバーでは気づかされる。
『Both We and Audience』や前述の『Come more slowly』などアインスの曲にはファンとの関係性を歌ったものも多い。

『Nursery tale』はそのタイトル通りおとぎ話のような曲だ。ただしここで歌われるのは残酷なおとぎ話だが。サビは散りゆく命と化した小人への讃美歌のようにも聞こえる。

1曲ずつ感想を書いていては長くなりすぎてしまうため何曲かに限定させてもらったが、やはり良い曲はいつ聞いても良い。
アインスの名曲たちがこのセルフカバーでよみがえった。
いや、よみがえったという言葉が適切かはわからない。
新たな命を吹き込まれたといったほうが適切だろうか。
そうして新たな命を吹き込まれたアインスの曲をぜひ聞いてみて欲しい。
そして気に入ったら原曲のほうも聞いてみて欲しいし、この『Searching Red Light』には収録されなかった曲たちも聞いて欲しい。どれも名曲揃いだから。
この機会に多くの人がアインスの音楽に触れてくれることを願う。
ちなみに通常盤と、ライブ会場及び通販限定で販売される豪華盤では収録曲が1曲違っており、通常盤に収録されている『I feel that she will come』のかわりに豪華盤では『In a void space』が収録されている。
こちらも名曲なのでぜひ聞いてもらいたい。

この文章を書くことで自分でも長年気がつかなかったことに気づくことができた。昔は苦手だった曲もすんなりと聞けるようになった。胸のつかえが取れた気分だ。
Eins:Vierのメンバーの皆さん、『Searching Red Light』を出してくださってありがとうございます。

現在アインスは5月12日のTSUTAYA O-WESTまで続くツアーの真っ最中だ。
そのツアーを彼らは「最終章」と位置づけた。
しかし彼らが音楽を続ける限り再びその道が交わることを願ってやまない。
そしてツアーのどこかで『Come more slowly』演ってください。お願いします。

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