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Base Ball Bearは深く青く

2018.1.21 Tour「光源」@福岡DRUM LOGOS

2017年6月より8ヶ月続いた7thアルバム「光源」のツアー。ファイナルとなった福岡公演は、その後に東京での追加公演があるという事実をよそに、長い旅の大団円に相応しい充実した内容だった。

焦らすように長めにイントロを回して始まった1曲目は「SHINE」。アルバム屈指の攻撃的なサウンドに乗せ、過去と現在で繰り返す夢見がちな恋模様の終焉へと怨念を飛ばす。実にベボベらしい幕開けで、会場も徐々に熱を帯びる。

そして続くのは2009年リリースの「Stairway Generation」。当時の小出祐介の葛藤が刻まれたシリアスで鋭いナンバー。<孤独という名の風邪 19で終わりじゃないのかい?>というフレーズにその痛みが生々しく残っている。

このツアーの軸となったアルバム『光源』は、バンドの永遠の主題である<青春>に新たなアングル/解釈から迫る“2周目”の世界を描いた作品であると銘打たれていた。その世界観を広げるような形で組まれたであろう今回のセットリストは、過去の楽曲にも新たな角度から光を当て、物語を編み直していることはこの冒頭2曲で明白だった。期待が高まるオープニングである。

追加公演はあるもののファイナルに相応しいライブを約束するMCを経て、『光源』から「Low way」。3曲目にしてテンポをぐっと落とし、じっくりと聴かせる空間に誘っていく。こちらの気分をじわじわとノせるリズム隊のグルーヴがひたすら心地よい。リードギター湯浅将平の脱退により、サウンド面での根本的なリフォームを果たした今のベボベらしい魅せ方だろう。

続く「(LIKE A)TRANSFER GIRL」は跳ねるリズムと降り注ぐ切ないメロディが心を高揚させる。同僚と過ごした一夜を学生時代の戯れに重ね歌う大人びた楽曲だ。畳み掛ける終盤の歌唱もライブだとよりくっきりと輪郭を持った気持ちとして届く。

そして間髪入れずに鳴る凛々しいベースのフレーズ。「抱きしめたい」だ。思春期の危ういシチュエーションを甘く響かせた2007年リリースの人気曲も、この曲順によって少年少女の光景を謳いながらもまるで「(LIKE A) TRANSFER GIRL」の時間軸に流れる感情のように聴こえてくる。歳を重ねても変わらないベボベの精神を過去から現在へと繋げる演劇的かつ映像的な構成に唸るほかなかった。映画や漫画への造詣が深い小出祐介ならではの粋な演出だろう。
そして、この「抱きしめたい」がまるで別曲のように聴こえた要因がもう1つ。サポートギタリスト弓木英梨乃の豪快なプレイだ。ほんわかした雰囲気からは想像もつかない、ギター妖怪とも呼ぶべき情感たっぷりのアグレッシブな演奏はどの楽曲にも新たな景色を加えていた。

また、「恋する感覚」では弓木とベース関根史織とのデュエットも。音源では声優・花澤香菜をフィーチャーしていたこの曲はライブでは未披露だったが、シンガーとしての素質も持つ弓木英梨乃のキュートな歌声で、このツアーでめでたく解禁となった。小出が職業作家力を存分に発揮したハイクオリティのガールズポップが、会場をみるみるうちに癒していく。

この日の最初のピークとなったのは「ドラマチック」だ。サビの弾き語りから入る久々のアレンジ。一瞬にして夏の情景を目前に立ち上げていく。「ドラマチックってこういう時に歌うんですね」と小出がこの後のMCでも感慨深けに語っていた通り、ツアーのクライマックスという状況もまたこの曲をより鮮やかでリアリティがあるものにしていた。

ベボベとしては未踏のトライアルが詰まった『光源』の矜持に引っ張られるように、次のセクションでは新たな試みが満載だった。まずは小出1人による弾き語り。ぴんと張り詰めた空気を含みながら、じっくりと歌いあげる「WHITE ROOM」、原曲よりも更に胸に迫る切なさを込めフォーキーに仕立てた「Transfer Girl」。どちらもアコギ1本から放たれるからこその切実さが込められていた。

続く「寛解」では小出がハンドマイクでの歌唱。その新鮮な立ち姿はこの体制になったからこそ目撃できたショットだろう。また、音源で印象的だったエレピは浮遊するようなギターに置き換えられ、原曲とは一味違うトリップ感のあるサイケなバージョンになっていた。音源とライブでその場に応じた的確なアレンジを追究する、その姿勢が強く反映されていた。

終盤に差し掛かったMCで小出が語ったのは、2018年でバンドが17歳になったということ、そしてバンドとは一生青春であるということ。変化を止めず、新しくあり続けることそれ自体を指すかのような”一生青春”とは今のベボベの強い意志が宿る言葉だ。そんな宣言の後に鳴らされるのは「すべては君のせいで」。幾度となくボーイミーツガールを歌ってきたベボベが、2周目の作品の開幕に選んだアルバムのリード曲。キラキラしながらもどこか物憂げな旋律を持つ楽曲だが、8ヶ月間ライブで育て上げられ、誰もが飛び跳ね盛り上がる新たな代表曲として君臨していた。ドラムス堀之内大介の熱血的な煽りから雪崩れ込むように、続けざまに「逆バタフライ・エフェクト」。新体制の新曲として、前回のツアーから披露されていたダンサンブルな1曲。ベースリフを前面に押し出した当時のベボベとしては斬新だった楽曲も、2つのツアーを経てすっかりアンセムとして定着していた。

そのまま、キラーチューン「LOVE MATHEMATICS」で盤石の熱狂を巻き起こす。その熱を更に受け止め、デビュー年の必殺ナンバー「CRAZY FOR YOUの季節」が投下される。テンポを大幅に速め、突き刺すようなギターフレーズが再び会場を沸点に持っていく。ギター湯浅将平の脱退は間違いなく大きな別れだった。あの熱量いっぱいのプレイこそがこれらの激しい楽曲の核であったことは確かだ。しかし、この体制ならではの表現を突き詰めた『光源』、そしてそれを過去作と共に花咲かせたツアーにおいて、目に見える形で新しいBase Ball Bearを見せつけてくれたのがこの8ヶ月だ。”生きる”を意味する英単語と同義の”ライブ”という現場で、誇りを捨てず生まれ変わったベボベの生きた演奏が紛れもなくそこにある、そんな2曲だった。

本編ラストは、『光源』でも最後を飾っていた「Darling」。過ぎ去りし時間や忘れがたき記憶に思いを馳せながら、今を生きる意味に繋げていく。そんな決意を歌うこの曲は、かつての楽曲たちを2周目の世界を形成するピースとして鳴らしたこのツアーのエンドロールとしてあまりに相応しい。この日演奏された楽曲のみならず、ベボベの歌ってきたあらゆる詞世界、また自分自身の思い出のシーンまでもがぐるぐると駆け巡っていく儚くも愛しい時間だった。昔あった日々に戻れはしないけれども、確かにここで続いている今のベボベ、今の自分への思いが溢れて止まらなかった。

しばし放心しながら感銘を受けている内に始まったアンコール。1曲目は弓木を除く3人での「PERFECT BLUE」。この曲もまた、一人の少女との別れを軸に心を新たな季節に進める切なさと晴れやかさの入り乱れた楽曲だ。原曲は分厚いギターが印象的だが、この体制ではよりさっぱりとしたアレンジに。イメージを変換しつつも楽曲の持つパワーは変えずにくまなく工夫を凝らしてある。5月からは、メンバー3人のみで回るツアーが既に決定している。どのような風に過去の作品がリプレイされていくのか。楽曲の持つリスタート感も含め、ベボベの今後を楽しみにさせる見事な選曲だった。

2曲目は弓木も加えての「十字架You and I」。2010年の楽曲で、当時のベボベとして歌唱・演奏ともにファンクを大々的にフィーチャーした異色な楽曲だったが、ここ数年のベボベのモードにはぴったりと合う。じわじわとカオスなサウンドに変貌していく怒涛の展開で、持ちうる全てのエネルギーを出し切るようにしてアンコールは締めくくられた。

しかしこれでは終わらなかった。鳴り止まぬ拍手につられ、このツアー初のダブルアンコールが行われたのだ。本編のMCで触れていた今年がバンド17周年ということにちなみ、「17才」。オープンで陽性なエネルギーが、即席で安易な共感とは違う、長く受け継がれてきたタフな共有力を持ってフロアに満面の笑みを広げながら伝わっていく。その洗練され、磨かれた演奏は誰も文句のつけようのない、完璧な幕切れだった。

瑞々しい青春を刻んだ過去の作品たちが決して懐古的なものにならず、今もなお強靭な楽曲として存在し認知され続けていること。それはこのツアーの持つテーマもさることながら、ベボベがいつまでも青々と輝き続けている証拠だろう。それはかつての剥き出しの青さとはまた違う。出会いや別れ、人生の苦みもバンドごと経験しより深い風合いを持った青さだ。バンドが迎えた17才。青春の葛藤と同じように3人はこれからも音楽に対して飽くなき挑戦を続けていくことだろう。ここからBase Ball Bearが迎えていく成熟をいつまでも楽しみにし続けたいと思える夜だった。

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