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マイ・チャットモンチー

完結記念の“記念”として

完結の報せを受けた後、程なくして届いたトリビュートアルバム製作のアナウンス。現金なもので、完結を知った時の沈んだ気持ちは瞬時に浮上した。参加するアーティストは開示されていなかったのに、既に凄いアルバムになるという確信めいたものを感じたからだ。結果、どうにも感受性に偏りがある自分にとって、完結の“記念”とも言うべきこのトリビュート盤は効いた。とにかく効いた。頭か胸か、自分でも分からない場所に効いた。各アーティストが寄せているメッセージには、感謝の言葉が多く並んでいる。それに倣って、自分も感謝の意を伝えたくなった。そして、聴き終えた直後の感情を書き留めておきたくなった。全ての楽曲には、とてもじゃないけど触れられないので、厳選して書き残そうと思う。でなれば、おそろしい文量になってしまう。それでは、早速。
 

2018年3月27日、正確にはリリース日の前日にあたるこの日を、首を長くして待っていた。勤める会社が決算月で繁忙を極めているというのに、このアルバムを早く聴きたいという事しか頭にはなかった。正直、仕事は手に付かなかった。心ここに在らず、な1日だった。もちろん、いい歳した大人だから仕事は済ませた。駆け込んだタワーレコードでも、逸る気持ちなんて噯にも出さず、何食わぬ顔で会計を済ませた。帰宅してからも、すべき事を先に済ませた。コーヒーも淹れて、万全の状態を整えた。結局は、淹れた事すら忘れて、すっかり冷めてしまったけれど。

早々に、1曲目の『ハナノユメ』で、原曲とは全く毛色の異なるイントロにガツンとやられた。まさに自分がチャットモンチーを知るきっかけとなった1曲。当時の彼女たちにとって、挨拶代わりの一発だった歌。この曲を初っ端に持ってくるあたり、まるで「今からチャットモンチー史を振り返っていきますよ」と言われているような気がした。同時に、「終わりの始まりですよ」と言われている気もして、少し悲しくもなった。エレクトロ感の増した、ねごとが歌う『シャングリラ』も、当初はチャットモンチーの知名度をグッと押し上げた楽曲だったと記憶している。キャッチーなのに、聴けば聴くほど歌詞の深さに気が付く不思議な曲。女性ヴォーカルにもカラーがあるなぁ、と改めて思いながら辿り着く5曲目。Homecomingsが持っている哀愁漂う空気と『惚たる蛍』との相性が見事過ぎて、1曲目と同じく『chatmonchy has come』を初めて聴いた時の事を思い出した。良い意味で1番予想を裏切られたのは、『小さなキラキラ』を歌っている月の満ちかけ。カップリング曲をチョイスするセンスも素晴らしいし、その歌声の柔らかさに驚いた。シンプルな構成で、とても素敵な仕上がりになっている。結成から間もない内に知る事が出来たのは、得した気分になった。

収録曲と参加アーティストの一覧が発表となった際、びっくりする程ぴったりイメージが重なったのが、『湯気』を歌うHump Backと『染まるよ』を歌う、きのこ帝国。結論から言えば、とんでもなかった。完璧と言っても差し支えのないぐらいに。前者にあるのは、焦燥感のような疾走感のような、走り抜けていく感覚。なんて格好良いんだろう、と思った。格好良いにも関わらず、若干の甘ったるさを孕むVo.林の声に胸を灼かれた。後者も後者でまた凄い。ボキャブラリーの乏しい自分には、とても表現しきれない雰囲気。なんと言うか、絶妙に言葉足らずなのだ。それでいて情景描写は抜群。喫煙者にとっては、まさに染み入る言葉が並ぶ。そんな歌が、綺麗でノイジーなきのこ帝国の編曲によって、儚さが一層の加速を見せている。やっぱり、終盤の畳み掛ける感じは大好きだな、と思った次第。

このアルバムを聴いていて、思い出した事がある。1つだけ後悔している事があるのだ。それは、『耳鳴り』の初回限定盤を買えなかった事。瑣末な話に思われるかもしれないが、自分にとっては大きな後悔として残っている。何故か、当時の自分は躊躇してしまったのだ。まだ、高校3年生だった時分。確かに、お金も持っていなかった。受験生で、アルバイトをしているでもなかった。それでもあの時、迷わずにチャットモンチーの世界に飛び込んでおくべきだった。母親に無理を言ってお金を借りたって良かった。祖母にねだっても良かったかもしれない。無論、『生命力』以降のアルバムは全て初回限定盤を抑えてきた。大学生になり、社会人になり、大人になっていく過程で、色々と余裕が出てきたのも事実だけれど。そんな後悔も、思い出を濃くするエピソードの1つとして留めておけばいいのだろうか。すんなり飲み込めはしないけれど。

そんな後悔はさて置いて、気が付けばチャットモンチーと出会った頃から干支が一周し、高校生だったはずの自分は、間も無く30歳の大台に突入しようとしている。なのに、いつまで経ってもチャットモンチーを始めて聴いた時の衝撃が、生々しく思い出せるのだ。このトリビュートアルバムで、より鮮明になった感すらあるぐらいに。12年以上の歳月を経て、始まりと終わりを目の当たりにしようとしている。正直、まだ受け入れられてはいない。カバーされた16曲、思い返して聴き比べる原曲、合わせて眺める歌詞、目に留まる「作詞:高橋久美子」、今さらながら気付く深い表現の数々、膨大な数の感情が去来して、何が何だか分からなくなってしまった。とにかく、この何が何だか分からない事を残したくなってしまった。まとまりの無い文章になっている自覚はある。思い立った時に読み返して、顔から火を出してみるのもアリかな、と思っている。この文は、RPGをクリアする直前に残すセーブポイントのようなものだ。大好きなバンドが完結する“記念”の、個人的な記念のようなものだ。こうしておけば、いつでも「今この時」を思い出せる。

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