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まっすぐな放物線。

KEYTALK<Rainbow>から放たれた12のストーリー

まっすぐな放物線だ。表現的に逆の言葉を組み合わせてしまったが、私がKEYTALKのアルバム<Rainbow>を何度も聴いて思った感想はこれだった。

前作<PARADISE>は全17曲、武道館公演というバンドとして大きな節目を越えた後、メンバー全員作詞作曲が出来るという大きな強みなど、様々な要素がたっぷりと詰め込まれていて、KEYTALKの引き出しの多さを存分に見せつけられた作品だった。

あれから約1年。今回届けられた<Rainbow>は、虹と意味するそのタイトルのように、さぞやPARADISE以上に色とりどりの曲を詰め込まれているのだろうと予想していた。

結果、そんな予想はKEYTALKに軽々と覆されてしまった。勿論最高に良い意味で。

全12曲、全てが本当に“まっすぐ”だった。
1曲1曲がそれぞれシンプルな物語としてまっすぐ心に響いてきた。
 

激しいギターイントロから始まり、不安定ながらももがくように描いた未来を求める“ワルシャワの夜に”の世界でKEYTALKから繰り出された先制パンチに一気に心を鷲掴まれる。
ここから畳みかけるように激しい曲がくるのかと構えていたら、2曲目で彼らがこのアルバムのリード曲と位置付けた“暁のザナドゥ”に面食らってしまった。
止められない刹那を憂いながらも儚い一夜を悦ぶ、曲の中の物語を妖しく艶やかに奏で歌うKEYTALK。
今回のアルバムは、今までの作品の中でも突出して曲の中にある世界や物語がKEYTALKの音、そして歌声を通して伝わってくるのを1番強く体感した。
特に首藤義勝の作る曲には、それが顕著に表れていたように思える。
彼の歌声は年を重ねる度に、色気、というより艶が増している。それと同時に元々彼の持つ柔らかく優しい歌声と組み合わさって、歌詞の中の世界を存分に楽しむことが出来た。
“暁のザナドゥ”は正にそれが1番伝わってくる曲だった。

そこから“ロトカ・ヴォルテラ”、“セツナユメミシ”と、シングルで発表されている2曲が更にKEYTALKが生み出す多彩な世界観の広さを見せつける。
次の“nayuta”は作詞に首藤、作曲は小野武正というイレギュラーな組み合わせの曲だ。しかし違和感はあまり感じず、寧ろ少し摩訶不思議な世界の理をKEYTALKの王道のメロディーで見事に表現したと言ってもおかしくない1曲になっている。
 

そして首藤作曲の“雨宿り”から寺中友将作曲の“黄昏シンフォニー”と続く流れは、このアルバムの感想として1番残しておきたい。
先程、特に首藤義勝の作る曲はKEYTALKが作る物語が伝わると書いた。
私は彼の書く歌詞にはどこか【非日常】の世界を感じる。
そして対照的に寺中の書く歌詞には【日常】の世界を感じることが多い。
ボーカリストとして圧倒的な力強さとバランスの良さを持ち合わせている寺中の歌声に最近、顕著に感じるのは温かさだ。体温のような、触れるとじんわりと増していく温かさを感じる。そんな歌声が彼の作る曲にも溢れているように思う。
首藤の書く“雨宿り”は柔らかくも切ない恋の終わりの物語。続く寺中の書く“黄昏シンフォニー”は大切な人との未来を想う物語だ。違うメンバーの書くこの2つの物語が、ともすれば同じ1つの物語の世界にあるかもしれないと思ってしまったり、【非日常】と【日常】の世界どちらにも感じることが出来た。
 

そんな穏やかな優しさを1曲で一旦リセットさせてしまうのも、またKEYTALKらしいなと思わずにはいられないのは八木優樹作曲の“テキーラキラー”だ。
KEYTALKの元来持つお祭り要素を今回1番感じられるこの曲は、問答無用でライブを想像させてくれた。続けての“ミッドナイトハイウェイ”では、寺中の作る骨太で疾走感のある曲と歌詞から浮かぶ風景がシンクロしていく。

アルバムのクライマックスも見えてきたタイミングで鳴らされる“Rainbow road”と“旅立ちのメロディ”はタイプの違う曲ながらも、ここではない新たな場所へと向かう主人公を導くような物語が見えた気がした。

そしてラストを飾るのは“FLOWER”だ。

― You are my flower. ―

ツインボーカルで何度も繰り返されるそのフレーズに、エンドロールのような新たなイントロダクションのような気持ちを抱えながら<Rainbow>という作品は終わりを告げる。
 

今回、どうしてこんなにも曲の中にある物語を強く感じるのか。
おそらくの話だが、1曲1曲がどれも純粋にシンプルにまっすぐだからではないだろうか。
シンプルだからこそ、どの曲も本当に歌詞が心に届き、今のKEYTALKが鳴らした音から生まれた物語・世界観が、まっすぐに伝わるのではないかと思う。
 
 

KEYTALKからまっすぐに放たれた12の物語は、まもなくライブなどで更に新たな色を増しながら再び私達の元に届けられる。
4月からはライブハウスを皮切りに、各地でのフェスなどを挟みながら、9月にバンドとしても最大のキャパシティとなる幕張メッセでのワンマンライブも控えている。
KEYTALKはライブをとても大切にしているバンドだ。
大きい会場での魅せ方、小さな会場での熱量、どちらに対しても全力でロックバンド・KEYTALKとしての姿を見せてくれると期待している。
 

今、KEYTALKに食わず嫌いをしている人がいるのならば、まずは今回の<Rainbow>を聴いて欲しい。1曲でも貴方に届く物語があるのならば、必ずその先のストーリーを、KEYTALKはまっすぐに貴方へと贈ってくれるだろう。
 

虹のように鮮やかな色をつけた、いくつものまっすぐな放物線が一人でも多くの人の心に届きますように。

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