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アイドルソングと元アイドルオタクの私

嵐の「A・RA・SHI」を聞いてから

アイドルソングは薄っぺらい。私はアイドルだけを好きだった頃からずっとそう思っていた。小学2年生の頃に嵐が人気になり、小学3年生になった頃にはグループは10周年を迎え爆発的な人気を誇るアイドルグループに成長していた。私は姉の影響で小学2年生の頃から嵐を応援していた。しかし私は当時は彼らの外見にばかり目を向けていたし、まだ幼かったので大して歌詞の意味も考えていなかった。ただ、何を伝えたいか分からないな、と思ったことは今でも鮮明に覚えている。小学校を卒業する前にアニメと他のアーティストにどっぷりとハマってしまい、アイドルソングは薄っぺらいという先入観はさらに私の中で色濃くなっていった。祖母に頼んで入会してもらっていた嵐のファンクラブも自然に辞めていたし、いつしかCDを買うこともなくなっていった。

しかしそんな私の考え方にある日変化が起きる。立て続けに悲しいことつらいことがあって、それを発散出来なくなったのだ。今までこんなことは無かったのに。そもそも、今まではどう発散していただろう。私はハッとした。思い立って、ウォークマンに手を伸ばした。アーティスト一覧から嵐を探す。嵐よりも上に何人かのアーティストが名を連ねているウォークマンを操作しながら、時の流れに呑まれているような錯覚に陥る。少しだけ震える手で彼らのデビュー曲を再生した。
《今日もテレビで言っちゃってる 悲惨な時代だって言っちゃってる》。そう拙いラップで歌うのは、1999年の櫻井翔だ。今でこそこなれた風であるけれど、やはり当時の17歳という年齢が感ぜられる、少し舌足らずな歌い方をしていた。ああ、これがCDだ。強くそう感じて、ふと泣きそうになる。何度聞いても、「A・RA・SHI」は全てのことが馬鹿馬鹿しくなるぐらいポジティブだ。
《Everyday!Everybody! まだまだ世界は終わらない》
今まで軽く聞き流していたこのフレーズが妙に引っかかった。何故「世界は終わらない」と歌うのか、少し考えてすぐ閃いた。彼らがデビューした1999年は、ノストラダムスの大予言で「世界が滅亡する」とされた年だ。ノストラダムスの大予言を真に受けた若者が自殺を図ったという話を少しだけ聞いたことがある。彼らのデビュー会見は9月で、CDデビューは11月だ。どちらにせよノストラダムスの大予言である7月よりも後で、世界は滅亡しなかったねと世間は安心していた頃だろう。むしろ張り詰めていたものが緩まって、だらしなくなっていたかもしれない。嵐は、そんな日本中の、特に同じ世代の人々に、もう一度進もう、と呼びかけたのではないだろうか。もっとも、彼らがそのメッセージを理解していたのかは知る由もないが。
私はノストラダムスの大予言よりも後に生まれている。けれど、もし1999年に今の私がいたならば、きっと間違いなくノストラダムスの大予言を真に受けてヤケになっているだろう。或いは、「どうせ終わるからいいや」と、大した人生設計もせずに生きているかもしれない。しかし1999年7月は平然と来て、地球が滅びることはなく、1999年8月が来て、呆然とし、9月が来て、嵐のデビューを知り、そして10月にMステで初披露された「A・RA・SHI」を聞き感銘を受けるだろう。そう確信した。なぜなら、2017年を生きていた私ですら感銘を受けていたからだ。悲しい気持ちは薄れていた。

アイドルとは、偶像である。
彼らが実際にテレビに出ている通りの性格をしているとは限らないし、どういう気持ちで歌って踊っているのかは、ファンには分からない。そしてアイドルの楽曲には、強いメッセージ性が無くとも誰も違和感を持たないことだってある。むしろそれがアイドルソングの普通になっているような気さえする。
けれど、私は思う。嵐の歌には、不特定多数を勇気づける歌詞が多く存在している。他のアイドルソングだって、きっとそうだろう。
《今がすべてじゃないから/あんまりムキになんなよ/ウソもつくし インチキしても/誰かを助けてる たまに》
《ひとりよがりでも ゆずれないのなら Yeah/正しく生きてることでしょう》(ナイスな心意気)
《振り向くな 後ろには明日はないから/前を向け》
《未来なんてさ すぐに変わる/変えてみせる》
《今 蒔けば種 花咲かす/やった後言うならまだ分かるんだ/そう そりゃ時間なんてのはかかる/春には大きな花を咲かす》(サクラ咲ケ)
《いつも同じメンバーで 語り合ったこの場所に今/(バイバイ)この景色心に焼き付けて 明日へ踏み出そう!》
《世間は甘くない なめてたら すぐにボロが出る/当たり前が出来てない 簡単でも わかったふりはもうやめよう》
《あの日君と見た夢を 失くさないで 諦めないで/(オーライ!)初めからやり直せばいいさ 何度倒れても!》
《窓を開ければ 明日の空も晴れるはず/きっとそれが糧になる 今日も楽しみ もれなく/いつも焦ってた あの日の僕に会えれば/想い 伝え 叫ぶさ “夢はでっかく こう描く”》(きっと大丈夫)

ネガティブシンキンガーな私からすると、「本当かなあ」と思うような歌詞も多くある。けれど、何曲も聞いているうちに本当にそうかもしれない、と思えてしまう。これがアイドルソングの最大の特徴で、魅力ではないだろうか。
「アイドルなんて」と思っている人にも、是非騙されたと思って一度聞いてみてほしい。今はそう強く思う。

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