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2017年4月11日

waka (29歳)
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「いのちの車窓から」見えた世界

星野源という表現者

文章を書きたい。
たまに無性にそんな時期が訪れる。
じゃあ書けばいい、書けばいいのだけど、何を書けばいいのかが分からない。
書きたいという衝動があるだけで、肝心の中身、伝えたいこと、
そもそも誰に伝えたいのかという段になると、そこで止まってしまう。

理由は分かっている。
誰かに伝えたいことなんてないのだ。
表現欲、なんて言葉にすると大層なものになってしまうけれど、
上手くいかない現実、ひいては漠然とした不安からの逃走、
誰かに認められたい欲望、自分の中で昇華できない感情がそういう思いにさせるのだ。
 
 

星野源の「いのちの車窓から」を読んだ。
表現をするということは、こういうことなのだ、
率直にそう思った。
難しい言葉も捻られた比喩もない。
好きなものや人、身の回りで起きた日常のエピソードが淡々と、
けれども丁寧に綴られていく。

深夜の蕎麦屋でのエピソード。
普段演歌がかかる店内では、ジャズ調のアメリカンポップス。
白髪のおじさんが意図的にセレクトした一曲だろう。
そんな瞬間を
『日本とアメリカが、個人の趣味で交わった、最高にエキゾチックで気持ちのいい瞬間』
と切り取り、
『いつだって、世界を彩るのは、個人の趣味と、好きという気持ち』
と締めくくる。
情景の中に、何を想い、そこから何を大事にしているのか、
自分を出さすとも彼が伝わってくる。
それこそが表現というものなのだ。
 

文章だけでなく、音楽だってそうだ。
「YELLOW DANCER」以降の彼の音楽はそれまでのものと大きく変わった。
ライブのスタイルも変わった。
内省的な歌詞を中心としたアレンジ、
マイク片手に歌うことなんて想像できなかった。
もちろん、以前の音楽やスタイルも素晴らしい。
名曲もたくさんある。
部屋の中でひとり、何度も耳を傾けた。
ただ、いつもどこかに寂しさを感じ、
その全てを受け止めきることが出来なかったのも事実だ。

「YELLOW DANCER」以降は違う。
曲のアレンジが変わっただけではない、
弾語り調の曲がなくなったわけでもない。
かといって、歌詞が底抜けに明るくなったわけでもない。
ただ一点、明らかに以前よりも彼が見えてくるのだ。
好きや楽しいというポジティブな感情、
そこから彼が何を愛し大事にしてきたのか、
身構えることなくすっと入り込んでくる。
 

自分はこういう境遇なんだ、自分を分かってほしい、
自分中心の世界のままではきっと辿りつけない境地。
他者や情景という外の世界があり、
そこに合わせ鏡のように映し出される自分。
逆説的ではあるが、そこから生み出された表現こそが感情を昇華し、
誰かとつながることができるのであろう。
 

文章を書いてみた。
あなたに伝えてみたい。
彼の魅力、作品を。

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