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生きる人に寄り添う歌

ASIAN KUNG-FU GENERATION「生者のマーチ」

ASIAN KUNG-FU GENERATIONが2枚目のベストアルバムを出した。
「BEST HIT AKG2」
2012年から2018年までの、彼らの足跡である。

個人的に、このアルバムに新たに収録された「生者のマーチ」という曲がとてもよかったと思っている。なんとなくではあるが、2012年からの彼らの楽曲の奥底に流れる通奏低音のようなものが、この一曲に表現されているように感じた。

***

タイトルには「生者」とあるが、歌詞を見てみると、

”モノクロの葬列を見送った町外れの丘からは
鈍色に立ち昇る悲しみが見えたんだ”

とあるように、「死」も一つのテーマとして見え隠れしているようだ。
ここでは「生」を見つめ直すものとしての「死」であり、対比的な描写がなされていると言えるだろう。

”こと切れるまで”

”朽ち果てるまで”

という歌詞からも、「死」という視点から、生を見つめている様子がうかがえる。
愛する男性をたった今向こう側へ見送ったと思われる女性の様子が生々しく映し出されているMVからも、それは理解できるだろう。

「死」という視点から「生」を見つめ直すと言ったが、それは決して容易な作業ではない。例えばMVの女性で考えてみると、彼女は愛する男性の死を目の当たりにすることで、死の地点のことを考えざるを得なくなったのではないだろうか。それはきっと、猛烈な悲しみであっただろうし、強烈な喪失感であっただろうし、痛烈な苦しみであっただろう。

アジカンは、それでも「生きる」ということを歌っているのだと思う。

このことが歌われるだけで、救われる人がどれだけいることか、想像に難くない。同時に、アジカン自身がこの曲を歌うためにどれだけ生と死を見つめ直し続けてきたのか、ということにも思いを馳せてしまう。
 

ここで、もう一つのテーマのことが想起される。それが、「愛する」ことである。
ボーカルの後藤正文はインタビューで次のように語っていた。

”後藤:男の人と女の人の愛情に逃げないで、まっすぐ愛について歌いたかったんですよね。”

すなわち、この「生者のマーチ」という曲は、ラブソングなのだ。それも、男女の細やかな関わりの描写がなされるものではなく、もっと、そう、この楽曲のタイトルのように、「生きる」ことと直結している「愛」について歌っている。

”そこにただ在るだけで
そのまま ぎゅっと引き寄せて
わけもなく抱きしめて”

という歌詞は、まさに「愛」のことを歌っているのだろう。「愛する」ということの、アジカンなりの解釈なのだと思われる。そこに余計な解釈を加えるつもりはないが、この一節は、ただ、ただ、優しい。と、そう思うのだ。

”いつの日か こと切れて
朽ち果てるまで”

「こと切れるまで」は、「死ぬ」ということの表現であるが、それまで張り詰めていた線が、突然ぷつりと切れるようなイメージが浮かんでくる。一方「朽ち果てるまで」は、死んだあとで、長い長い年月が経ち、やがて風化していくというイメージだ。

愛は、その抱きしめていた肉体がなくなってしまったからと言って、なくなったりはしない。おそらく、まだそこに在るものなのだろう。朽ち果てるまで、そこに在り続けるものなのではないか。いつの日か、誰かが発見して、再びぎゅっと引き寄せて、抱きしめてくれる。そうやって人の営みと共に続いていくーーなにやら、そんなイメージが浮かんできた。

MVの女性も、男性が抱きしめていた愛を、いつの日かその両手に抱きしめる日がくるのだろう。
 

アジカンが2012年より歌い続けてきたことの一つに、これらのような要素があるのではないだろうか。ベストアルバムを繰り返し聞いていても、不思議とこの曲と似たような雰囲気を感じる瞬間が少なからずある。この楽曲をもってして、ベストアルバムが閉じられていくのもとても納得のいく話に思えた。この打ち立てられたメルクマールを境に、まだまだアジカンは歌い続けてくれるだろう。次のアルバムがとても楽しみだ。

***

例えば、これから先の未来、死を意識せざるを得なくなるような大きな喪失がやってくるかもしれない。そうでなくとも、漠とした不安や、砂を噛むような気持ちにこころがやられてしまうかもしれない。その時はアジカンが歌ってくれて、僕が受け取った「それでも、生きて、生きて、愛し続けよう」というメッセージを思い出そうと思う。

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