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共感するものなんてなにもない

ミッシェル・ガン・エレファントはなぜ特別なバンドだったのか

もう思い出しても仕方のないことなのかもしれない。

くるり、ナンバガ、スーパーカー、ブラッドサースティ・ブッチャーズ、椎名林檎……
1993年生まれの僕は、いちばん日本のロックが盛り上がった、MP3時代前夜の熱量を知らない。
YouTubeで追体験はできたとしても、たとえば去年の夏は暑かったことを思い出せないようにおぼろげで、手元から滑り落ちたアイスクリームのように溶けかかったものでしかない。

それでも、2008年、身長がようやく160cmにようやく届いたくらいだった、そんな僕の人生をひっくり返したバンドがあった。

ミッシェル・ガン・エレファントだ。

「大事そうに並べてる ブーツの底には 水色のキャンディが へばりついたまま」(キャンディ・ハウス)
「暗がりでセビレしびれたいなら イナズマを呼んできて欲しいと言え」(バードメン)

体重が20グラムくらいしかないと見えるチバユウスケは、まるで意味不明な歌詞をがなり立てる。それを、アベフトシの爆音ギターをはじめとする巨大な砂嵐のような音像が、ひどくソリッドにぼかしていく。チバが愛していたパブロックのようにでたらめを並べていたのか、はたまたニューウェーブのように狙った言葉遊びだったのか。どっちでもいい。

共感するものなんてなにもない。ただ、縁日で売っているモデルガンや、兜飾りについている安っぽい模造刀のように、男の子の脳細胞を焼く、ちゃらちゃらと輝く言葉がちりばめられていた。それを撫でることで、僕も爪が研げるんじゃないかって思っていた。

あの頃の僕にとっては、共感を得ることよりもかっこいいもののほうが大事だった。
狂ったように、毎日通学路のなか爆音で聴いていた。家に帰ったらレコードで聴いた。
楽しみではなく、それはもはや自分が強くなるための作業と化していた。ノンウォッシュのジーパンを育てるみたいに、何度も洗いをかけて擦ったり、破れかけた穴に指を突っ込んで広げたり、そんな感覚だったのかもしれない。

アベフトシが死んだ日のことや、その数日後に、はじめてフジロックでチバユウスケに会えた時のこと。もうとっくに、ミッシェル・ガン・エレファントは解散していた。

「今日のライブは、俺たちの大親友だったアベフトシに捧げます」
(2009年フジロックグリーンステージ・The BirthdayでのMCにて)

あのとき僕は高校1年生だった。チバのキャリアは、もうミッシェルよりもバースディのほうが長い。

ボサボサになるまで髪を伸ばして、黒シャツを着てベースを買って、同級生とコピーバンドを組んだ。スリーピース、今考えてみれば3人でミッシェルをやるなんて無茶だったけど、僕は心の底から嬉しかった。

あれから10年が経とうとしている。ドラマーはラッパーになって、あまり大きな声じゃ言えないけどフジロックに出たりもしている。苦しい役回りだったギターボーカルは、今生命保険会社でネクタイを締め、頑張っている。

僕はといえば、まだぶらぶらとしている。映画『青い春』の青木みたいに、なんとなくおいてけぼりになってしまった。

「ぶらぶらと 夜をゆく なめつくした ドロップの気持ち」(ドロップ)

これらのことは全部つながっているはずなのに、いざこうやって思い出してみると、なんてとりとめのないことなんだろう、とすごくがっかりしている。

もちろんくるりやナンバーガールとかも大好きなバンドだけど、ミッシェルは不思議なバンドだった。音楽好きの友人と話していても、どこが「いい」かって話に、いまでもならない。くるりはここが「いい」。ナンバガはあそこが「いいよね」。さて、ミッシェルは……?

でも、それが夢中になるということだったんだろう。そして、彼らが特別だったというただひとつの答えだ。

ミッシェルの活動時期と重なる2000年、ガイナックスOVA「フリクリ」がリリースされた年だ。その「フリクリ」の続編が今年放映される。そのニュースを知ったときにふと考えた、ミッシェルが帰ってきたら…?その答えが、冒頭に書いた正直な僕の感想だ。

いま一番聞いているバンドはミッシェルではない。
ちなむと、世界でいちばん聞いたアルバムもミッシェルではない。
でもたぶん、あの時以上にほかのバンドを好きになることは、もう二度と出てこないと思う。

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