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偽りのないショータイム

Official髭男dism・シングル『ノーダウト』に寄せて

髭が似合う歳になってもワクワクする音楽をとの願いを込めて名付けられた、Official髭男dismという一風変わったバンド名。通称・ヒゲダン。今回、月9主題歌のために彼らが書き下ろした“ノーダウト”は、同日発売されたアルバム『エスカパレード』から異例のシングルカットとなった楽曲だが、私たちにそのことが知らされたのは何とリリース前日。まさにプライスレスなサプライズが次々と飛び出すヒゲダンの新たな一手だが、その先駆けとも言うべき本曲を聴いた時、バンド名に託された彼らの願いがこの先ずっと虚しくならないことを確信せずにはいられなかった。

改めて考えることでもないが、多くの人が「あ、ヒゲダンらしいな」と感じるは、曲の中で良い意味で平凡な空気が流れる瞬間だと私は思う。近所の子が口ずさんでいるような親近感湧く藤原聡(Vo&Pf)の歌声、色鉛筆のように優しいカラフルさが心地好いピアノ、軽やかに歩き出したくなる絶妙なテンポ。それらはまるで、子供の頃、思いがけず四つ葉のクローバーを見つけたり綺麗な石を拾ったときのような、何の変哲もない日々の暮らしの中に確かにあった小さな幸せとよく似ている。しかし、“ノーダウト”は、これまでと同じようにバンド単位で言えるヒゲダンらしさではなく、あくまでも楽曲単位で勝負する「ムード」というものがある気がした。始めに言っておくが、先程挙げた彼らの良さはもちろん健在だ。しかし、これを聴いた人なら、この3分半のどこかしらのポイントでドキッとした瞬間があったのではないだろうか?ある人は、ワインレッドのステージカーテンが左右に幕を開けるようなレトロなオープニングに。ある人は、一目散に耳へと飛び込んでくる電子色の強いアレンジに。ある人は、一見何ともない歌詞に潜む意外な殺傷能力の高さに。

《仕方ない どうしようもない/そう言ってわがまま放題大人たち/どうぞご自由に 嫌ってくれて別にかまわない》

《怪しい おかしい それ以外なにも感じられない私/時代の声に 責め立てられる筋合いはない》

ヒゲダンらしさに恋の始まりのようなトキメキを見出す人がいるならば、ずっと彼らを追い続けてきたからこそ、慣れない近未来的なサウンドやそのムードにちょっと戸惑う人だってきっと少なからずいるはずだ。しかし、その直感的なトキメキも、後からジワジワくる根拠のない不安も、新しいという言葉で括ってしまえば全く違いなんてない。何より、こうしていろんな意味でドキッとすることが出来るのは、人々がワクワクを感じる幸せな音楽法則を徹底的に理解し尽くし、身近さという武器を握り締めてその道筋を踏み固めてきた彼らのこれまでがあったからこそ。新鮮味のある多くの打ち込みは、彼らが信じる音楽幸福論の上でこそ初めて成り立つ、新たなスパイスと言うべきものなのかもしれない。

今回のキーワードは、まさにプライスレスなサプライズ。発表当時はまだインディーズだったにも関わらず、否応なしに世間から注目される月9主題歌に大抜擢されたこと、その曲が初のフルアルバムから異例のシングルカットとなったこと。さらに、そのCDを誰もが別け隔てなくワンコインで手にすることが出来ること——。

彼らが起こすショーに、嘘は1つも存在しない。

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