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渋谷すばるというアイドル

関ジャニ∞がかき鳴らすロック

メロディアスに吠える歌声。渋谷すばるの特徴的な歌声は、デビュー当時から関ジャニ∞の武器だった。特にグループがバンドスタイルを打ち出して以降、リードボーカルである彼は、情感豊かで、時に危ういほど野性的なパフォーマンスによって、アイドルらしからぬ存在感を獲得してきた。そして皮肉にも、その強烈な存在感ゆえに、グループのセンターとでもいうような、いかにもアイドル的な立ち位置に自身を据えてしまった。

センターという言葉を、私はグループ像を体現するメンバーという意味合いで捉えている。そもそも「アイドルらしくない」「ジャニーズらしくない」は、三枚目キャラで売り出された関ジャニ∞そのものを形容する言葉だった。コミックソングを歌い、バラエティでガツガツと攻める彼らの良さは、気のいい兄ちゃん然としたものであり、一足先にブレイクした嵐やKAT-TUNが提示する「かっこよさ」とはどこか裏腹だった。そんなパブリックイメージに、一泡吹かせるかのようなバンドパフォーマンス。ジャニーズらしくないジャニーズが、他のグループには無い泥臭い男前さを提示してみせた。明るさの内側にある、2番手男たちのもがくような切なさと熱さ、そんなロック魂こそが関ジャニ∞だ。ライブでお決まりの「最高で最強の関ジャニ∞」という挑発的な掛け声は、そんな彼らの下克上精神をうまく表している。

アイドルでありながらアイドル像にある種のアンチテーゼを掲げる関ジャニ∞。渋谷がこの「矛盾」の体現者であるのは、単に彼のアイドルらしからぬ表象を指してのことではない。例えば、ギターの安田章大もそうだが、渋谷は他のメンバーと比べると頭ひとつ背が低く、ほっそりとしている。だから引きでメンバー全員を見た時に、どうしてもこの2人には女性性がつきまとう。安田はあえて両方に振り切って、スカート風の衣装に見事なギターテクという振り幅の大きさを武器にしてきた。一方で渋谷には、ダイナミックな歌い方で女性性を振り払おうとすればするほどに、むしろその声の器としてそぐわない華奢な身体がいっそう浮かび上がってしまう、そんなままならなさがあった。バンド曲で雄々しく振る舞うほどに、ダンス曲でジャニーズとしての出自が浮かび上がる。バラエティでの好々爺みたいな振る舞いと、どこかあどけなさを含んだ端正な顔。アイドルらしくなくあろうとすればするほどに、アイドルとしての自分もまた輝いてしまう。反発する両極の両方が魅力となって、関ジャニ∞の渋谷すばるを作りあげていた。
この離れがたい矛盾こそ、彼が生む爆発するようなエネルギーだったのではないだろうか。人は誰もが自分ではままならないもの抱えている。グループでの渋谷はそういう不自由を体現しながらも、その突き抜ける歌声で自由への希望を感じさせる、稀有な存在感の持ち主だった。彼の歌が関ジャニ∞のファンを震わせてきた理由はここあると思う。ギターとハープ、そしてその歌声でステージ上を暴れ回る彼は、どんなに小柄でも、勇ましいライオンのようだった。そんな「すばるくん」が私の憧れのアイドルだった。

バンドとして熟達してきたここ数年、彼らは唯一無二のグループとして更に上を目指し、アイドルとバンドの両極を飼い慣らしているように見えた。それでもなお、というか、だからこそ、渋谷はアイドルを辞めるのかもしれない。関ジャニ∞が神輿を失うのと同時に、矛盾から自身を解放する渋谷も、その半身を失うのだと、その覚悟をしたのだろうと私は受け止めている。
「すばるくん」のいない関ジャニ∞。アイドルでない渋谷すばる。そのどちらを想像しても今はただ寂しい。だから、失ったものすら飛び越えて叫ぶようなロックを、今こそ関ジャニ∞にかき鳴らしてほしい。渋谷すばるには、『宇宙に行ったライオン』の歌詞のように、サーカス団から放たれたライオンが一体どれほどもがけるのかを見せてほしい。そしてその段でもういちど、自分たちこそが、自分こそが、「最高で最強」なのだと高らかに宣言してくれることを、願わずにはいられない。

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