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叶えた夢、続く夢

Shuta Sueyoshi 初のソロツアーに寄せて

2018年4月11日、Shuta Sueyoshi 初のソロツアー「Shuta Sueyoshi LIVE TOUR 2018 -JACK IN THE BOX-」が日本武道館でファイナルを迎えた。初日を福岡で迎え、その後は大阪難波、仙台、札幌、名古屋、東京とライブハウスでの公演が続き、この追加公演を含む全7公演の約2ヵ月に及ぶツアーがいよいよ、これで見納めとなる。

会場の明かりが落ちた瞬間。
今宵この舞台に立つ1人のアーティストが、映像として大きく映る。
悲鳴や歓声、手を伸ばす光景に身体が震えた。幕に映し出されたそれは、物語の始まりを示すような映像だった。
 

ゼンマイが巻かれ響くオルゴールの音。フワフワと舞う光のようで、ファンタジーな要素を含む美しさの中に何処と無く妖しさを感じ、不思議な気持ちになる。アルバムと同じように【JACK IN THE BOX -Introduction-】が流れ中央だけ幕が開き、椅子に腰掛けたオフィシャルキャラクターである Hearty Bear のぬいぐるみが姿を見せた。顔を隠した4人の男が赤いロープを首や体に掛けていく。
会場内に響く鼓動と共に充満するスモークで全く見えなくなったステージに光が当たり響き出すギター音によって、会場は、目眩がする程の熱気に燃え上がった。
ぬいぐるみだった筈のそれはShutaに変わり、赤い糸の中で項垂れゆらゆらと揺れていた。

《煩ってイヤになって なんもかんもシャットダウン/グルグルに巻き付けた赤い糸/サナギさながらの窮屈状態/「アソビ、足りてますか?」》

オープニングの演出は【Shall We!!】のこの歌詞の伏線で、いい意味で憎い始まりだった。夢にまで見たShutaの世界は今ここで現実世界に重なり、私の目の前に広がってギラギラと輝いている。絡み光る赤い糸を操りながら、そして椅子に立ち高々と歌うShutaに圧倒された。
《千夜に一夜の夜を始めようか》と、煽るように投げかけられた曲の最後のこのフレーズを、歓声と右腕で弾き返す。ステージ上の彼に、期待しか出来なかった。

2曲目には【Let it ride】が続いた。グルーヴィーなサウンドにShutaの声が相まった爽快感。頭の一音が一筋の光のように響き渡り、その光に照らされるように大掛かりでセットが姿を現した。らしさ全開。Shutaの世界観がそのままに、落とし込まれていた。
そうしてShutaは、4人からなるダンサーズ(通称“SSDancers”)と共にステージのあちこちで歌い踊る。

《Hey Girl 歩き出して/大事な物はここにはない/どこまでも行こう その足で踏み出せ/もう戻れないから》
《君だけが 知ってる未来への羅針盤/語りだす言葉は君だけの物語》

強要することも押し付けることも無い、ある種の優しさでありShutaの真情が垣間見えるその声で“これは私だけの人生なのだ”と教えてもらったような気がした。この物語もきっと、私だけの思い出に変わる。

浸るのは後だ。間を空けず【Run Away】が始まり、思わず息を飲んだ。真夜中のサプライズ、と言いアルバム発売前に突如先行配信され爆弾のように落とされたこの曲は全編英語詞となっており、まさにShutaが新しい一歩を踏み出した徴だった。武道館に集まったオーディエンスを巻き込む力。Shutaを中心にして並び客席を見据え踊る5人に無敵感を覚える。ダンスシーン有りのミュージックビデオが存在するだけあって、振りと同じように拳をステージに向ける人もいたり一緒に声を上げたりと、一体感が生まれていた。

その一体感を守りながらお馴染みのイントロが流れ始め、ここで交わすShutaとの挨拶。BGMに合わせ手拍子を続ける先走りたがりな私達に戸惑いながらも、わかり易く気持ちが高揚するShutaは素直で、擬音語を交えながら次の曲の振りを説明し、一緒に踊ろうと誘う姿は本当に楽しそうで、思わず頬が緩んだ。

【Switch】は、憂鬱で窮屈で普通な毎日から抜け出したい私を非日常へ導き、そして勇気づけてくれた。ここに集まった見ず知らずの人たちが、たった一瞬で仲間になった。何の変哲もない毎日の中でいつの間にか意識せずとも再生するようになったこの曲を直接受けとって、予想より遥かな元気を貰った。楽しい事ひとつで人生最高と言える清々しさは持っていなかったのに目の前に広がる音楽ひとつでこんなにも幸せになれると知った。人と人を繋ぐ音楽が幸せを生み連鎖するのだ。

“ありがとう”と曲を締め、始まるアクト(本人曰く寸劇)。猫になりきったShutaの投げキスと共にハート型の紙吹雪が舞う演出は可愛いがすぎるし、つい先程までキレキレに踊っていた人間がキャッキャされているあざとさにはやられた。衣装を変えたShutaが両手を客席に向けたと同時に照明が落ち無数の光が武道館の天井や壁、客席に映し出され、まるで宇宙のようで綺麗すぎるその光景に視界が滲んだ。花束を投げ入れるサプライズのココロを掴んで離さないずるさ。決して言葉を発さず、音楽とダンス、表情だけで、こんなにも。クスッと笑ってしまうオチもありながら会場全体をハッピーで包み込む。

物語の終盤、Shutaがピアノを奏でるように手を動かすと階段状のセットが光りだし共に聴き覚えの有るイントロが奏でられた。少しザワつく会場、思わず悲鳴をあげる人。皆それぞれのリアクションで見守る。

アカペラで始まった、aikoさんの【カブトムシ】。
公演を重ねる度に自然とアレンジが加えられるようになっていたこのカバー曲は、初日と武道館を比べたら、全く違う聴こえ方になるだろう。

《少し癖のあるあなたの声 耳を傾け/深い安らぎ酔いしれるあたしはかぶとむし》

それはまるで、今のこの瞬間のことを言っているようだった。後ろのスクリーンに映る横顔のシルエットは美しく、セットに腰掛け歌うその声は、涙を誘う。

大きな拍手に包まれながらそっと喋り出し、“楽しんでますか?”と優しく問いかけ、その応えに安堵する。長いライブは性に合わないから、と説明し、時間的にも、映画一本観る気持ちでと伝えてくれた。

次々と流れ込む曲達は忠実に作り込まれ、展開されていく。まさにオルゴールのゼンマイが巻かれたその瞬間から、物語は始まっていたのだ。終わって欲しくない気持ちと続きが気になって仕方が無い気持ちとでごった返し矛盾した気持ちになりながら、次のページをゆっくり捲る。

しんみりとしながらも、どこか温かい雰囲気を残したまま歌い出した【My First Love】。歌詞から思い浮かぶ情景を、セピア調で、絵本のような温かみのある映像に落とし込み、それに合わさるピアノ音とファルセットが堪らない。このラブバラードは冒頭で歌った曲とは正反対のイメージなのに、曲中の感情に移り変わり自然と声色を変える高い表現力に脱帽した。

今回のツアーで初日に観てから、いや、それ以前にアルバムとして曲を聴いた時から、すっかり虜になってしまった【体温】は、ストレートな言葉でよりリアルに綴られた共作の歌詞、問いを投げかけるように終わる曲編成、孤独に佇む悲愴感がありながら寄り添ってくれるような歌声が雰囲気を作り上げていた。元々Shuta1人だった演出がZeppツアー中にダンサーズも加わる様に変更されており、更に新たに試みた昇降ステージ上での動きはアリーナ席後方からでも見易く、一度に全体が見渡せる何とも贅沢なパフォーマンス。具体的な歌詞に沿う、指の先まで目が離せない仕草の一つ一つと、間奏で魅せるダンスがフワッとする気持ちよさ。

そこから続く見応えのあるダンサータイム。心地良い音楽と順に踊り出す一人ひとりのダンサーにライトが当てられ客席から名前が挙がる。自身の強みを活かし特に気持ちの込める箇所が違ったりするダンサー個々それぞれの良さを見た。なんてかっこいいのだ。決して衣装替えの繋ぎとは言わせない、どの瞬間も目を離させないステージに、心から拍手を送りたい。誰だって主役になれる。

再び登場したShutaと踊り、サイドに運ばれるセットと時を刻む音が【秒針Re:time】を察させた。ファンからの人気も高いであろうこの曲を、待っていた人も多い様だった。自身が作詞にも携わり、初のミュージックビデオが作られた思い入れの強い曲。ストーリーを想起させる込んだ演出であると踏んでいたが、実はその真逆であった。円形のビジョンに映し出された時計と歯車のセット、そして、中央にスタンドマイク。大掛かりに見えてシンプルなそのステージで伝わる音楽が、記憶に刻まれた。

《このまま ただ心を紡いで/選んだ未来はまだ霞むようで/溶けて滲んでいく/空に隠れた星に願いをかけて》

ただ、心を紡いで。
ありとあらゆる想いを織り交ぜながら縦横の糸で丁寧に築く関係性。お互いを許し合い、尊敬すること。信頼し合い、必要とする存在。Shutaが私たちファンを誇りだと言ってくれたことが何にも変えられない程嬉しかった。

「Baby Don’t Cry」というタイトルだったのを変更して作られた【Sad Story】。表情とは裏腹にそこから広がる声はしっかりとしていて嘆く後悔と同時に立ち直る力強さが感じられた。歌詞に沿った照明や振り付けもまた印象的である。
先程まで使っていたスタンドマイクをダンサーの1人が振りと共にさりげなくステージ外へ捌けるシーンに、毎回目を凝らす。一瞬も隙を作ることなく誰かが魅せているステージは、目がいくつあっても足りないほどだった。ダンサーズも入れ替わりが多くステージを行ったり来たり。そして僅かな時間で階段を降りそのまま踊り出す。そのパフォーマンスが素晴らしかった。

曲が終わると先程の雰囲気とは打って変わり、遊び心が散りばめられた【Can’t Stop Me Now】が始まる。
ライブを前提に作られている様な曲だっただけに、クラップを誘う明るいサウンドに心が躍った。
《Key is “S”/Key is “H”/Key is “U”“T”+“A”》と、合いの手を入れるようなこの部分は改めてみるとド直球さに思わず口角が上がってしまうけれどそれは、ステージ上でキラキラしている人の名前を呼べた嬉しさを思い出してしまうから。

今私が生きるこの現実世界にサヨナラを告げて明日からもう1度頑張ろう、足早に飛び出した私は、誰にも止められない。
こんなに楽しい世界が存在したなんて。まだまだ捨てたものじゃなかった。Shutaの笑顔は眩しくて、照らされるように励まされた。

まだ終わらせないと言うように煽られ、挑発的で強い【to.ri.ca.go】が最後の追い打ちを仕掛ける。放たれる赤い光線によってタイトルの通りステージ全体が鳥籠へと変化した。黒、白、赤を基調としたステージの後ろのビデオの中で、次々と流れていく歌詞が演出するスピード感。
キラキラと宙に舞う赤色のテープは、このライブの冒頭を彷彿とさせた。
 

物語はクライマックスに差し掛かり、ここで想像しなかった思わぬ急展開が巻き起こる。そういうのは大体、物語の終盤に待っているものだ。

神様には敵わない。
ツアー中に制作し初披露された新曲はその瞬間に一番輝いた。涙を零さないように上を向くと、あの夜の中で星となって瞬いている。
手を伸ばしたって、決して届かない。

夜が明けても、目を擦り頬を叩いてもやっぱりその事実は変わらなくて、悔しさで押し潰されそうになった。私なんかより本人の方が絶対にそうだ。全て嘘ならとも願ったけれど、Shutaの放った言葉は決して嘘にはしたくない。
 

“人生において、自分を作るのは自分だけだ”
 

匙を投げることは誰だってできる。止まってもいい、でもいつか必ず前に進まなきゃ行けない時が来る。それが今なら?

多くは語らないし口下手で、流暢では無くともゆっくりと時間をかけて選び、ひとつひとつ吐き出す嘘偽りの無い言葉を覚えている。それに、そう語った1人のアーティストを信じている。

『必ずいいもの届けるので待ってておくれ!』(2018/01/27 Shuta Sueyoshi オフィシャルツイッターより)

“必ず”は一種の約束で、自信ややる気にも見える。その言葉で繋ぎ止められて必死に着いてきたその先の景色を見て、とてつもない幸せを感じる。武道館は通過点でしかないのだと、まだまだ見せたい景色が沢山あると言ってくれた。人生は短いし、当たり前なんてない。俺だっていつ死ぬか分かんない、明日死ぬかも?人生残酷なんだよなんて余りにリアルすぎる冗談を語り、“前を向いて頑張ります!”と頷いた。どんな夢でもいい、夢なんて、大きいも小さいも関係ない、その夢に向かって頑張って、諦めないで欲しい。そう伝えてくれたShutaの【夢】は、あの空で輝く。

《ゆらり ゆれる 月のように/愛は色を変えるけれど/頬を伝う雫がほろり/ふわふわ灯った日々は泡のよう》

愛は色を変える。
昨日までずっと温められていた愛が突然冷めきって棘のように刺さる。一度は永遠を誓った愛も予想しなかったほんの些細な出来事でもう二度と会えないような仕打ちを受けたりする。
それでもきっと。

変わらない愛も存在する。
彼はいつでも戻ってきてくださいと言った。“俺に押せる背中があるならいつでも押す準備は出来てます”と覚悟を示した。この日々が泡みたく消えてしまわない様にそっとこの胸に仕舞い込んだら、背中を押された私は進み、その先でまた彼と彼の音楽と出逢う。

間違いなくいいものだった。Shutaの魅せたい自分は、私の見たいShuta Sueyoshiそのものだった。救われたい程に辛いエピソードを持たず、ただ彼の音楽が好きだからと楽しみたい思いだけで参加した筈のこのツアーは刺激と感動を与え、自分でも気が付かなかった事を教えてくれた。ここに私の物語が加われば、また違う見え方があるのかもしれない。このツアーの受け取り方だって、人それぞれでいい。

歌い終わりスモークの中でそっと振り返り、また後ろを向いて歩き出す背中に、行かないでとは思わなかった。Shutaの姿が Hearty Bear に戻り、日本武道館の真っ赤な幕が閉じられた。

アンコールは要らない。“Fin”という文字が映し出され盛大で鳴り止まない拍手の中明るくなった会場には、多幸感しかない。
 

ファイナルを終えた1人のアーティストは、“幸せだった。”と呟いた。苦しみ踠き乗り越えた先の夢はこの一言で磨きをかけ、次のステージへと向かう。声が出る限り歌い、身体がある限り踊り、死ぬまで音楽をやりたいといつか話した宣言がこんなにも嬉しいなんてこの夜を迎えてやっと分かった。溢れるほどのありがとうをくれたShutaに、恩返しがしたい。だから私も誓うのだ。死ぬまで、諦めないことを。

《願えばあの空/流れ消えゆく/君は夢のよう》
《想い馳せるは/君と夢模様》
 

Shuta Sueyoshiという1人の大切なアーティストによって映し出された夢模様は私の宝物になる。この日だけじゃない、この先の思い出もきっとそうだ。
 

私はずっと待っていたい。

感謝を胸に、物語に想いを馳せて。
歩み出した彼のこれからに、変わらない愛をこめて。

叶えた夢のその先で。
Shuta Sueyoshi の、続く夢の向こうで。

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