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新しいアルバムを用意するとき

私とGalileo Galilei、そしてBird Bear Hare and Fishの誕生

 

私にはここ10年程、好きで好きでたまらないバンドがある。
 

中学に上がると同時に出合ったそのバンドの音楽を、私は青春のすべてをかけて聴いてきた。
そして私が20代になり、もう子供ではないと実感すると同時に、そのバンドも「終了」した。
私の暗く、みじめで、焦りが付きまとい、でも確かに楽しかった10代の青春の日々は、彼らで彩られていた。
私の人生のアルバムのページをめくるとき、その時聴いていたアルバムが流れ出す。
 

初めのページは、さわやかな色で、希望に満ちていた。
メジャーデビュー前のミニアルバムで、私はロックンロールの世界に足を踏み入れた。
まるでそれは、少し年上の兄の影響でロックを聴き始めるような感じだった。
音楽雑誌のインタビューを食い入るように見て、発売日にはCDショップに行き、ブログを毎日チェックし、少しでも近づきたくてツイッターも始めた。
転校先で不安だらけだった毎日が、いつの間にか、CDの貸し借りを通してできた友人たちと過ごす楽しい日々に変わっていった。
 

次のページは、メルヘンで優しく、どこか暗さも漂っていた。
私はそのころ自分をとりかこむすべてが嫌になって、反比例するようにどんどん音楽にのめりこんでいった。
彼らの音楽的好奇心に満ちたアルバムは私に別の世界へと抜け出すための抜け道を提示してくれたようだった。
日本の北の北から届く彼らの音楽を、日本の片隅の行き場のない田舎で擦り切れるほどに聴いていた。
死とセックスの香りが漂うおとぎ話のような彼らの音楽は救いだった。
 

そして、振り切るように力強く愛を謳歌しているページ。
演奏も曲構成もけた違いに良くなって一番最初のページに帰ってきたようだった。
私は高校生になって、人生の新たなスタートを切っていた。
つかの間の楽しい青春を謳歌していたりもした。
 
 

最後のページは、濃い紺色の中からかすかに波の音のするページ。
「終了」宣言後の、最後のアルバムで彼らは、自らの闇ととことん向き合った。
くしくも私も身内に不幸があり、大学入学後も将来に不安を感じて日々模索を続けている途中だった。
 
 
 

アルバムの最後のページが埋まってから、もう2年もたつ。
私も21歳になった。
もう浅はかで自らの境遇を呪ってばかりの痛い中学生ではない。
いまは大学生として、自分の短所とそれなりに折り合いをつけながら、それなりに楽しい生活をおくっている。
だけどあの時、勝手に孤独だったわたしの救世主は、尾崎雄貴だった。Galileo Galilei だった。
彼らも彼らで、稚内から東京、そして稚内とUターンし、ロックから方向を転換し宅録バンドとして活動、重なるメンバーチェンジと様々な波を越えてきた。
もう本当に勝手に、一緒に成長したと思わせてもらってる。
10代の心情なんて日ごとに代わる。
先月好きだった音楽が今月はもうダサく思えたりする。
知ってる音楽はどんどん増えていき、以前感動した音楽も陳腐に思えてしまうことだってある。
だけど彼らはものすごいスピードでその音楽性を進化させていく。
周りのもの全部取り入れて、自らの持つ闇すら音楽に変えてしまう。

ひとつとして同じページはなかった。

彼らが「終了」すると聞いた時は、もちろん悲しかったが、納得もした。
私も自分の人生をここで区切ろうと思った。
後ろのページに最後の武道館公演の思い出をそっと記し、アルバムを閉じた。
 
 
 
 

今日、新しいバンドBird Bear Hare and Fishの1stシングル、「ページ/次の火」を聴いた。

「さぁ火をつけろ 最初はロウソクの火だった」
「足跡は燃え上がって 価値のある道になった」
-「次の火」より

新しいバンドの誕生が非常に力強く宣言されていた。
むき出しのドラムの音、低音でうねるベース、幻想的に響くギターと、尾崎雄貴の優しく力強い声が、まるで遠い昔から一つのバンドであったかのように混ざりあう。
Galileo Galileiは終了したが、彼らの音楽はずっと色あせることはない。
それでも、ああ、この二年、私はずっとこのワクワクを待っていた。
次のページの色を考えて夜も眠れないような、何度もブログを見に行ったあの時のようなワクワクを待っていた。雑誌を切り抜いて大切にとっておいたあの時のような熱が、再び胸の底からあふれ出すのを感じる。
私たちファンは今、Bird Bear Hare and Fishという新たな歴史誕生の場に立ち会っている。なんて胸が躍るんだろう。
 

くしくも私は先日から、生まれ育った母国を離れひとり異国の地で留学生活をはじめたところだ。私の新しいアルバムの一ページ目がオレンジに塗られていくのが分かる。

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