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暗いけどいい曲たくさんあるんだよ

BUMP OF CHICKENが歌うこと

「結婚式で流す曲を、一曲選んでほしい」

もう20年ほどの付き合いになる友人から、そんな旨の手紙が届いた。
彼女と私は福井と埼玉で文通をしている。文字どおり、手紙のやりとりを、20年間ずっと。

大好きなBUMP OF CHICKENの音楽を私に教えてくれたのが彼女だ。テレビでよく流れているような、学校で流行っているような音楽をなんとなく聴いていた私にBUMPの音楽はまさに衝撃だった。

〈あぁ 僕はいつか 空にきらめく 星になる〉
〈あぁ その日まで 精一杯 唄を歌う〉
(『ガラスのブルース』)

こんな歌は今まで聴いたことがなかった。それが最初の感想だったと思う。こんなことを歌う人たちがいるなんて。
私はあっという間にBUMPの虜になった。

初めて彼女に会ったのもBUMPのライブだ。京都まで高速バスで遠征して、大学の食堂で興奮気味に話す私を「すごい目がキラキラしてる」と友達は笑った。
大学を卒業し社会人になってもう何年も経つが、私の生活には変わらず彼女との手紙のやりとりと、BUMPの曲がある。

結婚式で流す曲。なににしようか。もちろんBUMPの曲がいい。それは決まっているけれど、思い入れのある曲も多く一曲だけ選ぶとなると難しかった。
定番と言ったらとっておきの唄かな? と思いながら、彼らの曲をひとまず全部聴いていった。改めて聴き返すとしみじみ思うのだが、基本BUMP OF CHICKENの曲は暗い。本人たちも笑いながら、彼らがパーソナリティを務めるラジオ番組で「7割が暗い曲、3割がちょっと暗い曲」と言っていたこともあるが、往々にして(初期の曲は特に)主人公たちは泣きっ面だ。繋いでいた手を離してしまったり、真っ暗闇の中でポケットに開いていた穴に気づいて大事なものを落としてしまったとベソをかいたり、扉を固く閉ざしてノックの音さえ拒んでしまったりもする。
藤原基央が描く歌詞のそのあまりの生々しさに、「これ自分の事だ」「まさに今の私だ」とBUMPの曲たちを聴きながら布団の中で泣いた夜もある。
それでも、

〈ひとつずつ ひとつずつ 何かを落っことして ここまで来た〉
〈ひとつずつ 拾うタメ 道を引き返すのは 間違いじゃない〉
(『ダイヤモンド』)

〈飛べない君は 歩いていこう〉
〈君が立つ 地面はホラ 360度 全て 道なんだ〉
(『Stage of the ground』)

〈ここが出発点 踏み出す足は いつだって 始めの一歩〉
(『ロストマン』)

彼らの曲は決して絶望だけで終わらない。絶望し項垂れて下を向いても、(あるいは下を向いたからこそ)足元の水たまりの中の新しい芽に気づく。その手を離したからこそ、そこに確かにあった温もりに気づく。
嬉しいことも悲しいことも、その全部で今の自分があるんだと、そんな当たり前の事を大事に丁寧に歌うのがBUMPだ。だからぜんぶ抱きしめてくれよと、うまく出来なくてもいいから、時間がかかってもいいから、一緒に生きようと歌うのがBUMPだ。

前出のラジオ番組で私のメールが読まれたことがある。彼女とのエピソードを伝え、「私たちの間に変わらずいて下さってありがとうございます」と締めたメールに、メンバーは口々に「とんでもない。こちらこそ」「間においてくれてありがとう」と答えてくれた。
どこまでも誠実で、謙虚で、真摯に音楽と、リスナーと向き合う彼らに何度だって言いたい。
音楽を続けてくれてありがとう。私たちに音楽を届けてくれてほんとうにありがとう。
大好きな人の大切な日に贈りたい曲がたくさんあります。

「明るい場面ならGO、ムードのある場面なら花の名で」
悩んだ挙句相手に投げてしまった。でもひとつに決められなかったんだから仕方がない。しばらくして彼女から返信があった。

「多分両方使うと思う(笑)」

彼女もどちらか選びきれなかったのならいいな、なんて思った。

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