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私は椎名林檎の本当の顔を知らない

デビュー20周年によせて

私、椎名林檎のことがめちゃめちゃ好き。13年前、私がちょうど中学2年生だった時から。こんな始め方で文章作っていいのか、とも思うけどめちゃめちゃ好きなんです。

椎名林檎という存在は、私にとって偶像でありいつも心の片隅にいる親友であり、私は常に椎名林檎に影響を受け続けてきた。椎名林檎がレコメンドする国内外のアーティストのCDはほぼ全てチェック、好きな音楽は椎名林檎を軸に枝分かれして増えていった。彼女の顔にあった黒子を真似て油性ペンで顔に書いたり、旧仮名遣いを使ってメールしたり、授業中に回文を作成したり、カラオケで周りの空気は読まずに荘厳なアルバム曲の『葬列』を歌ったり、いわゆる“黒歴史”的な、思春期ならではの行動に出た時期もあった(うれしなつかし恥ずかし)。
成人してからはさすがに落ち着いたが、作品を聞いたりライブに行ったりするのはもちろんのこと、椎名林檎が出ている媒体は一通り目を通している。

だけど、未だに椎名林檎の実体がよくわからない。椎名林檎という存在自体がフィクションのような気がする。
彼女が『本能』でナースの衣装を着てガラスを割っていた時、着物で英詞の楽曲を歌っていた時、バンド・東京事変を結成した時、向井秀徳とデュエットしていた時、東京事変が解散した時、朝ドラのテーマ『カーネーション』を紅白歌合戦で歌った時、ナースの衣装で久々に現れたと思ったら踊り始めた時……。現れる度にイメージが更新されていって、「あ、椎名林檎ってこういう人だよね」っていう事を言えない。逆に言えば、受け手を飽きさせないための彼女の戦略かもしれない。そうだとすれば、実に構築的な思考の元でエンターテインメントを発信していると思う。
また、更新された椎名林檎にしっかり影響を受ける私も、どこかしら更新されている気がしている。ずっと顔を知らない友達と文通を続けているような感覚に近い。

椎名林檎の好きなところは、合理的に作品作りを進めていながらも、完成した作品やパフォーマンスには血が通っていて体温が感じられるところ。瞬間的に世界に引き込む圧倒的な説得力も、「マジでウケるわ〜」と思えるネタも、身体の中に入り込んでぎゅっと心臓を掴まれるような感動も、椎名林檎の世界には散りばめられている。
『ありあまる富』の“価値は生命に従って付いている”という言葉は何回でも、動揺した私を落ち着かせ、諦めと前に進むための道筋を見せてくれた。『旬』の“誰もがわたしを化石にしても 貴方に生かして貰いたい”の「貴方」と呼べる人に出会いたい。『女の子は誰でも』は便利な言葉だな、と思った。エッジを利かせた巻き舌の歌い方は痛快だし、可憐な感じの歌い方やダイナミックな声色も、唯一無二な存在感で魅了してくれる。ライブ演出に垣間見える遊び心に、かつて自ら謳っていた“自作自演屋”魂をふつふつと感じる。

また、人生の中で印象的な思い出と結びついている曲もある。喧嘩別れで解散してしまったが、中学生の頃組んでいたバンドで苦戦しながら『群青日和』をコピーしたこと、海外へ行ってしまう会社の先輩に『自由へ道連れ』が収録されているアルバム『日出処』をプレゼントしたこと……、椎名林檎の全ての楽曲が私にとっては宝物のようだ。もしかしたら理屈抜きで好きなのかも知れない。

椎名林檎が他のアーティストに提供した曲も、彼女の“こう演出したい”という意図や、それぞれのアーティストが持つ魅力を彼女はこう捉えているんだな、という視点が詰め込まれていて、本当の贈り物のような真心が感じられる。日本のエンターテインメントを牽引してきたSMAPの華やかさを目一杯表現した『華麗なる逆襲』や、ともさかりえや広末涼子が元々持っているみずみずしさを際立たせた『カプチーノ』『プライベイト』、サスペンスのエンドロール感にあふれた『おとなの掟』といった提供曲の数々は、平易な言葉になるが、とても愛情に満ちていると思う。

椎名林檎の活動を今までずっと見てきても、なんだかよくわからない椎名林檎の実体を掴むことはおそらくこれから先も不可能だとは思う。ライブのMCやインタビューを見る限りではとてつもなくユニークで、お茶目なところもあるけど、音楽へは真摯な姿勢を貫く。そんな印象はなんとなくある。そしてやはりなんとなくだけど面白くて魅力的な人。でも親近感というよりは、決して埋まらない距離感を感じる。その距離感は埋まらなくて良い。

林檎さん、いつもありがとう。林檎さんの世界に出会えてとてもラッキーだったし、幸せに思います。遠くから応援しているから、日々アップデートされていく姿を見続けていたいと願います。デビュー20周年おめでとうございます。

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