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ロック・シーンの現状を打開するのは

ジャック・ホワイトとアークティック・モンキーズの新作に寄せて

ホワイト・ストライプスとアークティック・モンキーズ。

ホワイト・ストライプスは2011年に解散、アークティック・モンキーズは現在も活動中という違いはあるが、2000年代に登場したこの二つのバンドは鮮烈な作品を発表することによってロック・シーンを代表する存在となった。

ヒップホップやダンスミュージック、そしてその影響を受けたポップスが隆盛する中でロックの衰退が指摘されて久しいが、ホワイト・ストライプスとアークティック・モンキーズがいなければ、ロック・シーンは今以上に退屈なものになっていたのではないかと私は思っている。

ストロークスやリバティーンズ等、2000年代に活躍したロック・バンドは他にもいるが、ロック・シーンの現状について考える場合、ホワイト・ストライプスとアークティック・モンキーズはその他のバンド以上に重要な存在である。

今年発表されたジャック・ホワイトの『Boarding House Reach』、アークティック・モンキーズの『Tranquility Base Hotel & Casino』の二つの新作を聴いてその思いを強くした。

ホワイト・ストライプスのソングライターであったジャック・ホワイトと、アークティック・モンキーズのソングライターであるアレックス・ターナー。

この二人に共通する特徴はロック以外のジャンルにも依拠した創作活動をしていること、そしてロックの文体に囚われないメロディーを作れることである。

ジャック・ホワイトがブルースやフォーク、カントリー等のルーツ音楽に造詣が深いことは知られている。

ギターをテーマとしたドキュメンタリー映画『ゲット・ラウド』でジャック・ホワイトはレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジとU2のジ・エッジと共演していたが、ルーツ音楽からの影響もしくは距離に注目する場合、最年少のジャック・ホワイトと最年長のジミー・ペイジが近い場所にいるように見えた。

パンクで破壊されたロックの刷新を意図したニュー・ウェーブを出自とするエッジと比べて、ジミー・ペイジとジャック・ホワイトはロックのルーツにより近接している。

U2の楽曲のギター・リフが既存のロックから「逃れていく」ような質感だとすると、レッド・ツェッペリンやホワイト・ストライプスのギター・リフはロックのルーツに「潜っていく」ような質感を持っている。

ルーツに戻ることが目的であれば単なる回帰志向だが、ルーツ音楽に潜む本質を掴み取り、それを現代に再生させることを目指したのがレッド・ツェッペリンでありホワイト・ストライプスの活動だった。

ジャック・ホワイトのソロ作『Jack White Acoustic Recordings 1998-2016』を聴くと彼の楽曲がルーツ音楽に根差した構造を持つことが分かるが、ルーツ音楽の現代的な解釈を可能にする批評的な視点を備えていることがロック・ミュージシャンとしてのジャック・ホワイトの特徴である。

こうした特徴はアークティック・モンキーズのアレックス・ターナーにも共通している。

アレックス・ターナーのソングライターとしての独自性は彼の別プロジェクトであるラスト・シャドウ・パペッツの作品からも明らかである。

往年の名作映画のサウンドトラックを思わせるその作風を特定のジャンルで定義することは難しい。

アークティック・モンキーズとは明確に異なる作風でありながら決して難解なものではなく、ラスト・シャドウ・パペッツの楽曲は一度聴けば忘れられないようなメロディーを持っている。

ブリティッシュ・ロックから出発してアメリカン・ロックへ進むという正統な道をアークティック・モンキーズの活動で歩んできた一方で、アレックス・ターナーはラスト・シャドウ・パペッツではロック・バンドの枠に囚われない自由なメロディーを展開している。

アレックス・ターナーのこうしたバランス感覚も、ジャック・ホワイトと同様、批評的・編集的な知性に支えられている。

ジャック・ホワイトとアークティック・モンキーズの新作には、狭い意味でのロック・ミュージックはほとんど収録されていない。

しかし、どちらの作品にも印象的なメロディーを持つ楽曲が多数あり、楽曲を聴いて得られるのはロック的な興奮に他ならない。

ジャック・ホワイトとアークティック・モンキーズの新作がどれだけ支持されるかは分からないが、ロックの現状を打開するのはシーンの内部に安住する者ではなく、外部の視点からシーンを革新することができる者である。

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