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おかえり、私のStereoman

おかえり、ELLEGARDEN

 10年前、彼らは私の“たった一つ”だった。

 2008年9月7日。忘れもしないあの日、新木場駅の改札の前からSTUDIO COASTへと続く道の脇にずらりと並ぶ少年少女たちを見て、その異様な光景に圧倒された。誰もが“チケット譲ってください”と書かれたボードを掲げており、中には泣きながら道行く人に訴えかけている人の姿もある。その人々の間を通り抜ける私は、真っ直ぐ前を見ることができなかった。私だって、ひょっとしたら彼らの一員となって涙を流していたかもしれなかった。バッグの中にある今日のためのチケットを、できることなら彼ら全員に差し出したかった。でも、それはできない。そう思うと、心苦しさから彼らの顔を直視することができなかったのだ。下を向き見つめていた、アスファルトを這う自分の足元の映像を今でも憶えている。後にも先にも、バンドのライブであんな体験をした日は他にない。
 元々、ELLEGARDENのライブのチケットというのは常に入手困難なものだった。その為いつライブに行っても前述のような“譲ってください”のボードを持っている人は少なからず居たし、高額転売やネットオークションへの出品も後を絶たなかった。それゆえ活動休止前のラストライブに至っては、私の記憶の限りでは最高で20万円まで競り上がっているのをネットオークションで見かけたことがある。今振り返っても異常な状況であったと思う。

 そんな当時としてはインディーズ随一のモンスターバンドであったELLEGARDENの突然の活動休止から、10年が経とうとしていた今年。

『ただいま

 全員笑顔にすっかんな:-)』

(細美武士オフィシャルブログより引用)

 そんなあまりにもあっけらかんとしたメッセージと共に、彼らは私たちの前にふらりと帰ってきた――いや、“帰ってくるらしい”と言う方がしっくりくるか。なんだかまだあと少し、実感が足りていないのだ。
 遅いよ。遅すぎだよ。10年も待ったよ。待ちくたびれたよ。30歳になっちゃったよ。スタンディングのライブが最近結構疲れるんだよ。もうほとんど諦めてたよ。待つのに疲れて、このまま自然消滅するならそれでも仕方ないとか思っちゃってたよ。あれから新しい音楽にたくさん出会ったよ。日本のロック・シーンにはかっこいい音楽が他にもたくさんあったよ。だけど正直たまにはあなたの歌声も聴いてたよ。悔しいけどいつ聴いても心がぐらぐらと危なっかしく揺さぶられるんだよ。いつ聴いても10年前の自分に戻ったみたいになるんだよ。そんなの、ELLEGARDENだけなんだよ。
 そんな半ば小言じみた感情が、それでも湧き上がる例えようのない高揚感と綯い交ぜになって、たった一言「おかえり」の4文字にするりと収まってしまった。文句ばかり言いながら、結局は彼らが帰ってくるのをずっと心待ちにしていたのだ。彼らの名前を見ない音楽シーンは、やっぱりどこか寂しかったのだ。そう認めざるを得ない。
 まだほんの少し足りない現実味は、再びあの4人がひとつのステージに立つ光景をこの目で見れば、あの音を、歌を、この耳で聴くことが叶えば埋められるのだろうか。年甲斐もなく、そんなそわそわが止まらないのだ。

『僕のたったひとつの天国 それはサウンドの中さ
 目を閉じるだけでいいんだ
 僕のたったひとつの天国
 ステレオマンは元気だよ
 どこにだって連れてってくれる』

(「Stereoman」対訳詞より引用)

 おかえり、ELLEGARDEN。10年前の私の全てをさらっていった唯一のロック・バンド。また私たちをその音楽でどこへでも、どこまででも連れていってくれるのを楽しみに待っているよ。

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