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闇の向こうに手を伸ばして!闇に!

今こそ聴いて、どうぞ。Mr.Children 6th Album『BOLERO』レビュー

宇多田ヒカルやDREAMS COME TRUE、福山雅治に続いて、またも邦楽の大物アーティストのサブスクリプション配信が解禁された。

そう、Mr.Childrenである。

通称ミスチル。
50歳近くなって流石に「チルドレン」味は薄れてきたものの、「ミスター」の渋味を増して、今なおピチピチギャルに黄色い声援を贈られる(羨ましい)桜井和寿率いる4人組ロックバンドである。
何せただでさえデビューから26年…26年といえばまだお父さんの金玉にいた子どもが、自分の金玉からピチピチギャルをつくるぐらいの歳月だ…も経つベテランバンドなのに、イチローか中村俊輔のフリーキックの如くヒット曲を飛ばしまくるもんだから、人によってオススメする作品も結構変わってくるだろう。
大体の人はベスト盤を薦めると思うが(ベスト盤って、そもそもそういうもんだし)、私はミスチルに限らず、初めて聴くバンドにもオリジナルアルバムを薦めたい。ヒット曲だけじゃ分からないことって、やっぱりありますからね。

前置きがAVのプレイ前インタビューのように長くなってしまったが、私がミスチル童貞にオススメするのは1997年リリースの6th Album『BOLERO』である。

トラックリストは…
1.prologue※インストゥメンタル
2.Everything(It’s you)※13th Single
3.タイムマシーンに乗って
4.Brandnew my lover
5.【es】〜Theme of es〜※8th Single
6.シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜※9th Single
7.傘の下の君に告ぐ
8.ALIVE
9.幸せのカテゴリー
10.everybody goes-秩序のない現代にドロップキック-※7th Single
11.ボレロ
12.Tomorrow never knows(remix)※6th Single
…となっている。「Tomorrow never knows」から「シーソーゲーム」まで、テーマに合わないという理由で前作『深海』から漏れたシングル群が、大人の事情か?本人たちの意図か?こちらに収録されている。

私がミスチル童貞にこのアルバムを薦める理由として先ず単純に、「ヒットシングルが多くて半分ベスト盤みたいだから」のと、「でもアルバム曲もキレッキレでオリジナルアルバムとして完成度が高いから」である。
まあ正直リアルタイムで聴いてたら「もっとアルバム曲入れてくれよ!」ってなってたんでしょうけど、随分経ってから中古屋さんで買ったんで…。
私自身、彼らの最大のヒット曲「Tomorrow never knows」が入っているのと、ジャケットの女の子にグエヘッヘッヘしたので初めて買ったミスチルのアルバムが本作である。

私は音楽を聴き始めの頃はエアロスミスやB’zのようなハードロックを好んでおり、何故ミスチルを聴いたのか明確な理由は覚えいない。
「たまには違うものも聴いてみるか」と思い手に取ったのが、ミスチルだった気がする。お気に入りの風俗店に甘んじず、新たなフロンティアを求めるように…。
しかしJ-POPに明るくない自分でも知っているバンド、という軽い気持ちで、炭酸が飲みたいからコカコーラを飲むような軽さで。
わずかにあるマネーで誰かの猿真似するような感じで。

結果、私は羞恥心のない十代に水平チョップを喰らわせられることになった。

もしこれを読んでいるあなたがミスチルをよく知らないとして、そのイメージはどんなものだろう?
「Sign」や「365日」など、「バラードばっかり歌ってる女子受けスイーツ(笑)バンド」と思っていないだろうか。正に『BOLERO』を聴く前の私がそうだったのだ。
彼らはスイーツバンドなどではなかった。その正体は日本のポップフィールドの最前線で傘の下でFuckする豚にドロップキックするヤバたんなバンドだったのだ。

アルバムはプロデューサーの小林武史のペンによる導入曲「prologue」で始まり、そのテンションが最高潮になったところで、曲間の繋ぎ目のないまま「Everything(It’s you)」に突入する。
いきなりバラードで始まるアルバムなんて当時の私には野茂のトルネード投法の如く衝撃的だったし、しかもそれがそれまでのミスチルのイメージであったピアノバラードじゃなくて、結構長いギターソロのあるロックバラードだったのだから驚きだ。当時メンバーがハードロックにハマってたから仮タイトルが「エアロ」っていうね(当時の私はその偶然の一致を知らなかったが)。

しかし真の衝撃は続く「タイムマシーンに乗って」、「Brandnew my lover」に待っていた。
重ねてお訊ねするが、あなたがミスチルに抱くイメージはどんなものだろうか?
「終わりなき旅」や実際に五輪ピックのテーマ曲になった「GIFT」のように人を励まし、勇気付け、鼓舞する歌を歌うクラスの中心にいるようなリア充バンド。そんな感じではないだろうか。

“管理下の教室(コヤ)で 教科書を広げ
平均的をこよなく愛し
わずかにあるマネーで 誰かの猿真似
それが僕たちの世代です”……(タイムマシーンに乗って)

“Brandnew my lover
Fuckする豚だ
果てない 愛欲のA.B.C”……(Brandnew my lover)

……なんということでしょう。彼らはクラスの中心のイケメンリア充なのではなく、【Mr.Children】という表面化したペルソナ…余りに巨大で強大過ぎる故に、それが主人格と世間に取られたペルソナ…と格闘するキモメンだったのだ。クラウザー様として祀られた根岸くんのように。違うか。
オイオイ、あのミスチルがFuckなんて歌っていいのかと思った。
そんな歌の乗るバンドサウンドがもちろん生易しいものであるはずもなく、ミスチルのディスコグラフィーでも初めて超サイヤ人になった時のカカロットのようなブチ切れたギターを聴かせている。
特に「Brandnew my lover」はグランジでもシューゲイザーでもハードロックでもメタルでもない、敢えて形容するなら【ハイファイ・ハードコア】とでも言うような、何とも不思議で不穏なサウンドだ。

「es」と「シーソーゲーム」は猿でも知っているので略。

攻勢は緩まない。
“あっぱれヒットパレード うわっぱりのオンパレード 憂いの歌は売れない”……(傘の下の君に告ぐ)、
ヒット飛ばしまくっている桜井和寿だからこそ逆説的に説得力を強固なものにするハードフォーク。
“迷いや悩みなど 一生消えぬものと思えたなら
ボクらはスーパーマン”……(ALIVE)
レディオヘッドがやっていてもおかしくないようなエレクトロニカの影響を受けたようなダークなナンバー。間違いなく本作の白眉であり、B’zの松本孝弘も賞賛を贈ったそうな。
恋の終わりをJ-POPらしい軽やかさで、しかしブルージーなギターがスパイスになっている「幸せのカテゴリー」。
よりによってコレをシングルにしてTV出演までするとか気が狂っていたとしか思えない「everybody goes」。

“今度こそ本物なんだって 君が言うのなら
小便臭い十代の恋を 笑い飛ばしてくれ”……(ボレロ)
モーリス・ラヴェロが元ネタのタイトル曲。オーケストラをバックに桜井は祈るように、囁くように歌う。あんまり人気がない気がする曲だけれど(そうでもない?)、個人的に大好きな曲の一つだ。
ミスチルのディスコグラフィーでも唯一無二の魅力があると思う。

「Tomorrow never knows」はミジンコでも知っているので略。

ミスチルの参入によって、日本でもサブスクリプション配信はますます身近なものとなるだろう。
事実先日、Spotifyのチャートはミスチルに独占されたそうな。
しかし私は「いつでもどこでも気軽に聴ける」ことで、「ライブの価値が見直されたように、逆にオリジナルアルバムも見直されるのではないか」と期待している。
ただでさえ配信の普及でベスト盤なんて卵のないチキンラーメンみたいに味気のないものになっていたのに、サブスクリプションで聴き方の選択肢が更に広がったからだ。
私が学生の頃にはMDで友達とオススメの曲を交換したものだが、今やSNSのフォロワーやネットで親切なおじさんに教えてもらえる時代。
ピンク・フロイドのような「有名だけど、ちょっと敷居の高いバンド」にも気軽にアクセスできる。
ロックからジャズへ、ヒップホップからアニソンへ、デスメタルから落語へと思いのままワープできる。
「だからこそ」、ミュージシャンがエゴだのコマーシャリズムだの予算だの週刊文春だのと格闘し、果てしない闇の中に七転八倒して産み出したオリジナルアルバムの価値は高まるのではないかと思っている。

そしてMr.Childrenはそれだけの求心力と説得力のあるバンドなのだ。

***
自分が初めて聴いたからだしぃ〜という理由で『BOLERO』をオススメしましたが、ミスチルのアルバムはどれも面白いので是非チェックしてみてください。
デビュー作『EVERYTHING』は和製ギターポップの隠れた(というにはバンドの存在が巨大過ぎるけど)名盤だし、目下最新作の『REFLECTION』はミスチル版ホワイトアルバムというようなボリュームと多様性、そしてここに来てキャリア最大にブチ切れている最高傑作です。

そして『Q』。エヴァンゲリオンのQもビックリのトチ狂いっぷり。
何をどうしたらダーツの点数で曲のテンポを決めようと思ったのでしょうか。最高。

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