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さみしさの中のBUMP OF CHICKEN

rayと宝石になった日が見せる光

 
さいたまスーパーアリーナのスタンド席から見える花道。
〈寂しくなんかなかったよ ちゃんと寂しくなれたから〉
その歌を聞いた時、涙が零れた。
寂しくないわけない。いつだって会いたい。触りたい。あの暖かい耳に。少し濡れた鼻に。
 

3年前の2月12日、私の弟はみんなに見守られて息を引き取った。21歳7ヶ月、犬にしては大往生。私の弟の大事な犬、りいふ。

りいふは2歳違いの弟として保健所からうちにやってきた。柴犬に似た雑種だけど、脚が長くてスタイルがいい。茶色い毛に赤い首輪がよく似合う。べたべたと甘えてはこないけど、ちょっとだけ距離を置いてそばにいてくれる。唯一の兄弟。

私の小さい頃の記憶では、いつも一緒だった。入学式も卒業式も成人式も一緒に迎えた。りいふがいない生活なんてしたことなかった。
20年一緒にいたせいか、友達にりいふと良く似てると言われた。

生きることと死ぬこと、今ここに存在することと、ここからいなくなってしまうこと、そんな唄を歌うBUMP OF CHICKENをりいふが好きになったのも、何か意味があるのかな。

りいふがいなくなって3年。間違いなく私の足元を照らしてくれたのは彼らの曲だった。

りいふは「ray」が好きだった。

私は小学生の頃からaikoファン。小さい頃からりいふは聞いてきたはずだ。寝たきりになって居間にいるりいふもずっと聞いていた。そのときは何も言わなかったのに、「ray」を聴いた時だけ寝たきりの身体でも耳を動かして目をパチリとした。目をパチリとするのは、りいふにとってYESの合図。
「rayが好きなの?」
そう尋ねるたびにパチリとする目。身体の自由が効かなくて上手く寝付けない時も、rayを聞くと少しだけ眠った。

その目が動かなくなって3年目の2月11日。
BUMP OF CHICKEN結成記念日。
そしてツアーファイナル。
そんな記念の日にライブに参加できたこと。
そして次の日はりいふの命日。
いろいろな意味を重ねたくなってしまう。

りいふが好きだったBUMP OF CHICKENのライブ。いつでもどこでも一緒にいる気持ちは持っているけど、今日だけはりいふの写真と一緒に記念撮影をした。りいふと行ったことを形に残したかった。

もうりいふがいなくなって3年経つのに、未だにりいふの話をしてるなんて、ペットロスだとか、早く忘れたほうがいいとか言われてしまうのかな。
だけどBUMP OF CHICKENの曲は、そんなふうには聞こえない。りいふが好きだった「ray」が教えてくれた。

〈お別れしたのは何で 何のためだったんだろうな
悲しい光が僕の影を 前に長く伸ばしている〉-ray-

悲しい出来事は強い光になって自分を照らしてくれる。目の前に広がる暗くて不安な未来を足元だけでも明るくなれば、1歩前へ進むことができる。

〈寂しくなんかなかったよ ちゃんと寂しくなれたから〉-ray-

悲しい出来事から1歩進むのに必要なのは、悲しい気持ちを見ないことじゃない。寂しい思いを無視することじゃない。
大切な存在はいなくなったこと、もう帰ってこないこと、全部確かめる。確かめて、悲しんで泣いて、寂しい気持ちを全部受け入れる。そうすれば、きっと足元を照らす光が見えてくる。大切な存在が残してくれた思い出や、これから先に繋がる楽しみがきっと見える。

大好きだったから、たくさん思い出がある。大好きだったから、その人のことを誰よりも知っている。
いなくなって寂しいと思うのは、その後ろにたくさん嬉しい楽しい記憶があるから。

〈思い出はその軌跡の上で 輝きになって残っている〉-ray-

残った輝きは、いつでも私を見守って支えてくれる。でも寂しい。でも前を向いて生きていかなきゃ。

〈楽しい方がずっといいよ ごまかして笑っていくよ
大丈夫だ あの痛みは 忘れたって消えやしない〉-ray-

空元気でもいい。楽しく笑って生きていきたい。
りいふが、私が笑って生きていけるようにと教えてくれたrayと、BUMP OF CHICKEN。こんなに好きになるなんて思わなかった。
好きなものがあると、前を向ける。楽しみは明日への力になる。

Butterfliesのアルバムに収録されている「宝石になった日」。初めて聞いた時から、これはりいふの歌だと思った。
〈あの温もりが 何度も聴いた声が 君がいた事が 宝石になった日
忘れたように 笑っていても 涙越えても ずっと夢に見る〉-宝石になった日-
歌詞の全部が、私のりいふへの気持ちとぴったり重なる。
なんで、こんなに気持ちがわかるんだろう。
寂しさと向き合って、受け入れて、十分に寂しくなったはずなのに寂しさなんて消えない。どこでも一緒に行けるなんて思っても、新しい写真や思い出は増えない。写真の中のりいふはもう動かない。

〈増えていく 君の知らない世界
増えていく 君を知らない世界
君の知っている僕は 会いたいよ〉
〈ひとりじゃないとか 思えない日もある
やっぱり大きな 寂しさがあるから〉-宝石になった日-

空元気だって負けそうになる日もある。寂しさに負けそうになる。それでも彼らの曲は、そんな気持ちさえも肯定してくれる。
そしてこの曲は最後にこう歌う。

〈忘れないから 笑っていける
涙越えても ずっと君といる〉

いつまでも寂しいと思うことは間違いではなくて、でも寂しさを受け入れて前に進むことも大切。そして悲しい出来事は道を照らす光になってくれる。

ライブで歌ってくれたray。
〈生きるのは最高だ〉
この言葉を一緒に歌わせてくれた。
寂しさも悲しさも、嬉しい気持ちも楽しみもある毎日。怖いと思うことも多いけど、光が後ろから照らしてくれるからその道を進む。
それが間違ってるのか正しいのかわからない。それでも生きるのは最高だ、と言いきったBUMP OF CHICKEN。それを一緒に歌ったあの時間。間違いなく生きるのは最高だと思えた。
大切な存在をなくした寂しさは、時間が経っても消えない。でも、生きるのは最高だと思える時間をくれたBUMP OF CHICKENがいる。これからの私の道に楽しみをたくさん作ってくれた。その道を照らす光の始まりには、必ずりいふがいる。

〈大丈夫だ この光の始まりには 君がいる〉

そんな素敵な道を歩いてるんだ。
そんなふうに思うと、私の道は、生きることは、きっとこれからも最高だ。
 

実はりいふのことを音楽文に書くのは2回目。でもどうしても書き残したかった。前の文章を書いた頃から月日が経った分、私の道も少し伸びている。
悲しい出来事は道を照らす光になってくれることを教えてくれたray。そしてその光によって照らされた道にたくさんの楽しみを落としてくれているBUMP OF CHICKEN。そして何より私の 光の始まりにいるりいふ。

さいたまスーパーアリーナの花道を飛び跳ねるように演奏する彼ら。それに合わせてたくさんの光が揺れる。

3年前に聞いたrayとは、また違って聞こえる希望の歌。あの暖かい耳や濡れた鼻には、もう触れないけど、それでも生きていこうと思う。
〈生きるのは最高だ〉
そう言い切った希望の歌と、大好きなりいふと。

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