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2017年4月21日

トウコ (35歳)

巡り逢えた瞬間

NONA REEVESの歌詞に嫉妬しながら

時刻は19時半。
私は19時開始のライブチケットを握りしめていた。残業が終わった達成感と、その残業のためにライブ開始に間に合わなかった焦りを感じながら、会場まで送ってくれる彼氏の車に乗っていた。

「何て人のライブなの?」

付き合ってまだ1週間の彼にはまだ私の趣味嗜好は分からない。

「NONA REEVES っていうバンドなの」

ノーナのファンになって数年、私の住んでいる地域でライブがあれば、必ず足を運んでいた。なのに今日は何てことだろう。ライブ開始に間に合わない。

1曲めは何だろう?最初のMCはどんな感じだろう?私の頭の中はそんな事で一杯で、付き合いたてのラブラブな筈の彼氏の言葉が頭に入らない。

「もう間に合わないなら、いっその事、これから遊びに行かない?」

他の何かに間に合わないなら、この言葉にYESと答えるだろうが、そうはいかない。NOな!いや、ノーナのライブが優先なのだ。

彼氏の言葉を適当にあしらって車から飛び降り、慌ててライブ会場に向かった。ドアを開けると既にボーカル西寺郷太のMC中であった。

「新曲です。」

そう言って始まった曲のタイトルは「重ねた唇」だった。

『あたためられた心は また誰かをあたためていく あなたと巡り会えた瞬間、すべて見つけた』

私はどちらかと言うと、音楽は、歌詞よりメロディでひと聴き惚れするタイプだ。でもこの曲は歌詞に惚れた。好きな人に巡り逢えた時の、あの感じが見事に言葉になっている。

私はこの曲に巡り逢えた事により、「全てみつけた」気持ちになれた。

『あたためられた心は また誰かをあたためていく あなたと巡り会えた瞬間、地図も捨てたよ』

「すべて見つけた」でヤラレタ!と思ったのに、「地図も捨てた」でまた唸った。
そう、運命の人に出逢うまで、人は地図を広げて彷徨っているのだ。私もいつか地図を捨てる相手に巡り逢うのだろうか…そんな妄想もできた。

どうしてこんな歌詞が書けるのだろう。羨ましくて嫉妬してしまう。それだけならまだ良い。メロディも素晴らしい。

それからこの曲のリリースを待ち、ほぼ毎日のように聴いた。そして曲のように運命の人に巡り逢う日を想った。
 

曲に巡り逢えてからもう13年になる。
 

今私は「すべて見つけ」、「地図を捨てた」。可愛い子供もいる。かけがえのない存在に出逢えている。

『「死ねば忘れてしまう」だなんて 言えないと思い知る 愛してる人に 愛されたなら』

やっぱりすごい!こんなに気持ちが上手く言葉になるなんて。
 

何だか悔しいな。

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