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世界中の賛辞を安室奈美恵に!

引退公演でキャリアの頂に上り詰めた希代のカリスマシンガーに身震いするほどの感動を覚えた

突然の引退宣言は国民的な事件となった。当然、チケットは争奪戦になった。言ってみれば、日本の芸能史に於ける重大な歴史的引退ライヴといって過言ではない。セミファイナルとなる2018年6月2日の安室奈美恵の東京ドーム公演を見た。

安室の東京ドームは五年前の20周年でも見た。その時と比べて格段に年齢層が上がっていること、男女比率が均一化されていることに気付く。彼女の去り際に対する関心の高さを物語っている。近年の安室人気は10代20代の若い女性を中心に支持を集めていた。なので、最近の公演も約8割と思えるほどの多くの若い女性が客席を占めていたが、今回はまるで日本の縮図のように老若男女が集っていた。元アムラーも母親世代となり子連れで参加している人もいたかもしれない。安室が駆け抜けた時間というのは、それだけの長い時間だということだ。そんな時間を第一線で活躍してきた国民的歌姫は、最後の公演で何を見せるのか? 本当にその瞬間、瞬間を心に刻むように見守った。

冒頭、巨大なステージの上部に聖火のような炎が点された。同時に昨年の紅白でも披露された「Hero」が歌われる。想像以上に静かな幕開けだった。同時に、しょっぱなから、壮大でドラマティックで、今回のライヴのひとつのクライマックスのような感動があった。そして、続く「Hide & Seek」で大きな旗を振りかざしながらダンサーがステージを練り歩く。まるで東京ドームの空間を安室奈美恵の王国に変貌させるかのようだ。そして、ステージ中央を多くのダンサーを従えて闊歩する安室の荘厳さたるやカッコ良いのひと言。続いて、「Do Me More」や「Baby Don’t Cry」など、彼女のキャリアでは新し目の楽曲たちが披露されていく。

この日の構成は前半が、このような新しい時代の楽曲で構成され、後半がデビューから小室プロデュース時代の名曲で成り立っていた。これだけの大規模ツアーで、しかも東京ドームという広さである、自分の周囲の反応が全てではないことは十分に承知した上で言うが、後半の「TRY ME ~私を信じて~」や「You’re my sunshine」「Don’t wanna cry」の方が歓声が大きかったのが印象的だった。
安室は過去を避けてきたことで、小室プロデュース時代以降で、再び新しい時代を築くことが出来た。しかし、最後の公演である。自身のキャリアの25年間を凝縮させた総括的な完全な安室奈美恵を見せ切る覚悟を垣間見たように思える。「CAN YOU CELEBRATE?」では純白のドレスのような衣装で登場した。ビヨンセが双子を妊娠した時に世界中に披露した聖母マリアのような神妙性に匹敵する美しさだった。

そして、ライヴの終盤。流石だなと思ったのは、昨年リリースされたベスト盤に収録されていた新曲群「In Two」「Do It For Love」を怒涛のように披露する。懐古主義や懐メロ大会では終わらせない。あくまで現在の自分を見せる姿勢が素晴らしい。その新曲群のパフォーマンスの完璧さを見れば、本当に引退するのが惜しいと思えるほどで、同時に最後の最後まで自身をアップデートし続けるパフォーマーとしての安室奈美恵の凄味を感じた。

事実、安室奈美恵に年齢の話をするなど不毛だと十分に理解した上だが、40歳とは思えないほどのキレキレな動作である。あれだけ踊りっぱなしで、息切れをしない。客席にマイクを向けるようなこともしない。完璧に踊り上げ、歌い上げる。以前、安室はテレビ番組のインタビューで「歌だけなら私よりうまい人はたくさんいるし、踊りだけでもやっぱりかなわない人はいる。でも、歌って踊ることに関しては、絶対に一番になれるという思いがある」という旨の発言をしたことがある。正しく、その発言をステージの上で証明し続けたことには脱帽としか言いようがない。
そのプロフェッショナルなステージングは、安室が憧れと公言している、ジャネット・ジャクソンを彷彿とさせた。2015年11月に来日した際に見たジャネットの圧倒的なR&Bの女王としてのオーラが、この日の安室にも感じられた。彼女は引退公演でもって、歌手・安室奈美恵としての頂に上り詰めていた。

個人的には、残念ながら彼女のような女性シンガーは、もう現れないんじゃないかと思っている。様々なプロモートによって小室時代の安室のような旬の売れっ子アイドルは、これからも現れるだろう。しかし、そこからダンスにせよ、ヴォーカルにせよ、自身の道をストイックに極めて、そのシンガーの人気や世間からの関心が落ち着いた数年後に復活を経て、再び多くの支持を集めることなど奇跡そのものだ。マドンナのように、楽曲やイメージ・コントロールなど、セルフ・プロデュース能力に長けているとか、そういった戦略的なものではないし、プロモートとか業界チックな業績ではない。安室がしているのは鍛練そのものである。その源は、彼女の生き様とか意思の問題である。それが憧れとなり共感を呼べるほどのカリスマは、安室奈美恵にしか成し得ないことだ。

MCをしないことでも有名な安室だが、最後に観客に向かって、今まで支えて来てくれたファンやスタッフへの感謝の思いを述べた。そして、音楽好きな観客に、これからも素敵な音楽に出会えることを願っていると、自分が表舞台から去った後のことまで言及する。心の底から感動した。このような発言を引退ツアーで述べるシンガーが日本にいたこと、そんな存在がもう見れない切なさに心打ちひしがれながら、自分で贈ることができるだろう、ありったけの感謝と賛辞を贈って会場を後にした。

最後に、
安室ちゃん、本当に25年間ありがとうございました。
貴方が残した楽曲と思い出は我々の宝物です。
さようなら。いつまでも皆の憧れでいてください。

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