1087 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

再び動き出した青春

ELLEGARDEN活動再開に添えて

衝撃的な出来事というものは、いつも何気ない日常の中に突然引き起こるものである。
10年前もそうであったし、10年後の今もまた、同じであった。

2018年5月10日、日本のロックバンド、ELLEGARDENが10年ぶりに活動を再開した。
これはどこにでもいる、ごく普通の27歳サラリーマンが彼らの音楽と出会い、過ごしてきた12年あまりの記録である。

2006年、僕は高校生になった。
ロックに興味を持ち始めていた僕は同じ高校に通っていた友人にバンドに誘われ、ベースを始めていた。
ちょうどそのころ、その友人からとあるバンドを紹介されることになる。

「ELLEGARDENって知ってる?」
「めっちゃかっこいいから聞いてみろよ」

少し前に「Space Sonic」をリリースした彼らはすでに飛ぶ鳥を落すような勢いであり、バンドをやっていなかったり、そんなにロックに詳しくない同級生たちにもその存在を認知されているほどの人気であった。
僕もその中のリスナーの一人になったのである。
しかし最初に聞いたときは、それほど衝撃的な出会いではなかった。

かっこいいけど、何で日本人なのに英語で歌っているんだろう?
それくらいの印象しかなかった。

ところが少し後になって、別の友人に「Marry Me」を聴かせてもらった。
 

なぜだか分からないけれど、僕は涙を流していた。
 

なんで涙が出るんだろう。
英語で何を歌っているのかも分からないのに、歌詞の意味も知らないのに、なぜか僕は泣いていた。
それまでにも曲を聴いて感動したことはある。
だけど歌詞の意味も分からないのに、最近知ったばかりのバンドなのに、涙が出てくるなんて初めての経験であった。

それから少しずつ、僕の中でELLEGARDENが特別な存在になっていった。

バンドに誘ってくれた友人とひたすら彼らの話をする毎日。

「この前出たSalamanderって曲聴いた?めちゃかっけーよな!」
「今日学校終わったら、おれんちでエルレのライブDVD見ようぜ!」
「今度バンドでエルレの曲やろうぜ!」
「またライブのチケット外れたよチクショー!」

学校からの帰り道、休み時間、片思いの女の子に彼氏がいて失恋したとき、部活の休憩時間、暑い夏の日も、凍えるような冬の日も、彼らの音楽はいつも隣にあった。
ELLEGARDENは、自分の中で、音だけでなく当時の匂いまで感じさせる唯一のバンドである。
ちなみに毎朝登校するときは必ず「Red Hot」を聞いていた。

「よっしゃいくかー!」

そんなことを言いながら毎日登校していた。

そんな思いが通じてか、とある休日、その友人と街中を歩いていると、偶然にも細美武士氏に出会った。
初めて「人のオーラ」を感じた瞬間である。
意を決して話しかけた僕らに、彼はとことん穏やかであった。
いつもDVDで見ている雰囲気とは違う。
それもまた衝撃であった。

「大好きでいっつも聴いてます!」
「もうバンドでコピーする曲エルレばっかですよ!」

そんな僕らの言葉に、彼はただ微笑んでいた。

「そっかぁ、ありがとな。バンド頑張ってね。」

その何気ない一言は、その後の僕の人生を支える言葉となった。
 

話し終わり別れた後、僕は人生で初めて腰が抜けた。
 

正直、僕はエルレに、はたまた細美氏に性格まで変えられてしまった人間の一人だ。
中学生のときまでは、目立つことも嫌いだったし、周りに意見を合わせていれば安心するような、そんな人間だった。
別に中学時代までを否定するわけではない。その時はその時で楽しんでいたから。

それでも彼らの音楽に出会って、はたまた細美氏のまっすぐに信念を突き通す姿を見て、僕の中で何かが変わった。
自分の意見を少しずつだけど、まっすぐに言うようになったし、周りになんと思われようが、好きなものをとことん貫き通す、そんな性格になっていった。
細美氏の書く歌詞は、基本的にダメ男についての歌詞が多い。
不器用で上手くやれなくて、それでも大好きな音楽聴いて笑いとばしてりゃ何とかなる。そのままでいいんだぜ。明日もよろしくな。
そんな歌詞に、言葉に出会ったのが初めてだった。初めて、僕のような男のために歌ってくれている曲に、バンドに出会った。本当に嬉しかった。
手を差し伸べて引っ張ってくれるんじゃなく、ただ横にいてくれている友達のようなそんな存在。
そのおかげで、僕は変わっていけたんだと思う。
 

そんなエルレ一色であった僕の高校生活に、突然悪夢のような出来事が起こる。
高校3年生になったある日、授業が終わってケータイをぱかっと開くと、卒業した先輩からメールが届いていた。

「エルレが活動休止するって聞いた?」

僕は頭が真っ白になった。
どういうことなのか良く分からなかった。

活動休止、って、もうライブやったりCD出したりしないってこと?
ちょっと前にライブも見たばかりじゃん。

それまで当たり前に存在していた彼らが居なくなってしまうなんて想像がつかなかった。
あまりの衝撃に涙も出なかったことを覚えている。

2日たって、ようやく理解が出来た。

そっか、バンドって、いなくなっちゃうものなんだ。

その日の夜、僕はベッドで大泣きした。

2008年9月7日、彼らは10年間に渡る活動に一旦終止符を置いた。
その半年後、後を追うように僕も高校を卒業した。
そういう風にして、2つの意味で僕の青春が終わりを迎えていった。

大学に進学して間もなく、エルレのメンバー4人は別々のバンドを始動する。
僕も軽音楽部に入部し、本格的にバンド活動を始めた。

彼らが始動したバンドは、それぞれ趣向が違っている。
彼らの潜在的な力が、より表にでるような楽曲たちばかりだ。
同じくして僕も様々なジャンルの音楽を聴くようになった。

それでも心の片隅にはどこか、ELLEGARDENが存在していた。
いつかもう一度4人でやってくれるのかな。
そんなにすぐとはいかないだろうな。

ちなみに僕にエルレを教えてくれた友人は、別の大学に進学後、周りに対する不信感から引きこもりになってしまっていた。

そして僕は大学を卒業し、社会人になった。
仕事に追われる毎日。色んな遊びも覚えて、休みの日はそれで過ごす日々。
時間が無くなって、バンドも楽器もやらなくなった。
普段聴く音楽も変わっていって、
 

そうしていつからか、僕はELLEGARDENを聴かなくなっていた。
 

そんなある日、会社から帰宅し、夕飯を済ませ、自室でスマホをいじっていた時である。
とあるSNS上で情報が飛び込んできた。

「ELLEGARDEN、活動再開」

僕は再び頭が真っ白になった。
どういうこと?活動再開するってことは、またライブをやったりCDを出したりするってこと?
その日は上手く情報が飲み込めなかった。
10年という月日は、あまりに長すぎた。自分の中では存在していたかも定かではないほど、遠い昔の出来事になってしまっていたのである。
翌日になって、ようやく状況が飲み込めた。
様々なSNS上で話題になっている。インターネットのニュースにも取り上げられている。ホームページも更新されている。
SNS上でこういった情報を知るようになったのにも時代の流れを感じた。

そっか、またあの日々が始まるんだ。
彼らがライブをやって、CDが出て、その話題で一騒ぎできるときが戻ってきたんだ。

「この前出た新譜聴いた?めちゃかっけーよな!」
「今日おれんちでエルレのライブDVD見ようぜ!」
「またライブのチケット外れたよチクショー!」

そんな日々が帰ってくるんだ。
ずっと止まっていた青春が、再び動き出したんだね。
もう僕はこんなに大人になっちゃったよ。
毎日仕事でクタクタだ。
周りの友達はみんな結婚し始めているような歳になったよ。
高校のときに好きだったあの子、この前子供ができたんだってさ。
ずっと引きこもってるアイツ、この話したら家から出てくれるかな。
 

「おかえりなさい」

一言だけ僕はつぶやいた。

そんなことを思っていても、相変わらず仕事の日々は続くのである。
エルレは活動再開したけど、今日も会社に行かなくちゃ。
僕はiPodを取り出し、「Red Hot」を流した。

「よっしゃいくかー!」

あの日と同じように、僕は駆け出した。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい