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Museと夏の夜

サマーソニック2013大阪での僕の音楽体験

2018年。今年も6月に入りだんだんと蒸し暑い日が増えてきた。季節や温度、陽の傾きなどの情景や気分などさまざまな毎日だがその時、その瞬間にピタッとはまる音楽やついつい聴きたくなる曲がきっとある。海辺を走る電車から海を見た時くるりは旅を楽しむ僕の気持ちを盛り上げた。気分が沈んだ夕暮れには坂本慎太郎の歌声や彼が唄う虚無が何度も僕に「人間」を教えてくれた。そして陽気な春の昼間に聴くマック・デマルコは最高だ。そんな風にそんな音楽や大切な一曲がきっとある。その理由やきっかけが何であれ。
 

そして僕は蒸し暑い日に無性にMuseの「Madness」が聴きたくなる。
 

僕にとって蒸し暑い夏の夜は特別だ。今よりもっと蒸し暑かった5年前の8月の思い出だ。生まれて初めての音楽フェスに行った。”SUMMER SONIC2013”に当時15歳だった僕は一人で行った。周りに趣味のあう友達がいなくて寂しかったが、当時HR/HMを好んで聴いていた僕にとってこんなに魅力的なラインナップが揃ったフェスに行かないという選択肢は無かった。初めは目当てのメタリカやリンキン・パーク、BULLET FOR MY VALENTINEが固まる2日目にしか行かない予定だった。UKロックやインディーロックは何だかとてもつまらない音楽だと本気で思っていた。
 当時の僕の情報ツールはHR/HM系の専門誌のBURRN!と伊藤政則氏がDJを務めているFM802の深夜番組だけだった。当然ここでリアム・ギャラガーのような癖のあるダラダラとしたボーカルに出会うことは無かった。(僕がオアシスに真剣に向き合おうと思い「Rock ’N’ Roll Star」を聴いたときはダラダラ&マンチェスター訛りに本当にいらいらしてしまった笑)
 しかし何故かそのラジオ番組でたまたまMuseの「Supremacy」が流れた。「ラウドロックでもない」「メタルでもない」「プログレでもない」。深夜2時に僕は混乱と興奮をした。本当に生まれてから出会ったことがない音楽だった。毎週のことでその日も3時には寝落ちしていたが目が覚めても衝撃的なイントロだけ忘れられなかった。その日からはMuseをひたすら聴きまくった。その時点でサマソニの1日目に観たいバンドはMuseだけだったがチケットは2日通し券を買った。どんどん好きになる曲だらけだった。現在進行形で伝説を作っているバンドだと思った。ツェッペリンのような過去の伝説ばかりに惚れていた僕には新鮮でうれしい感覚だったしこの感覚を大切にしたいと思った。
 

 部活漬けの夏休みだったがその日だけは部活をサボって舞洲に向かった。猛暑ではなく酷暑と呼ばれる夏の日だ。生まれて初めて見るオーシャンステージは広場に突如現れた無骨なオブジェのように不自然で、でも僕を興奮させた。フェスどころかライブ自体に不慣れではあったがあっという間に時間は過ぎ陽は傾きはじめた。THE SMASHING PUMPKINS、Mr.Childrenと続きいよいよMuseの登場だ。大がかりなプロジェクターやレーザー、機材の多さは他のバンドと違って転換時から僕をワクワクさせた。陽も落ちはじめステージにはスモークが焚かれだした。暗転したステージにはブルーの照明が照らされていた。SEから突然歪んだギターがかき鳴らされた。気づいたときにはマシューがスモークの中から現れ、僕とMuseが出会った「Supremacy」でライブは幕を明けた。信じられないほどの爆音でただただかっこよくてやっぱり興奮した。
 「Supermassive Black Hole」、「Panic Station」とノれる曲に続き「Bliss」のような初期群の曲や「Hysteria」や「Plug In Baby」などの定番曲で盛り上げ『The Resistance』や『The2nd Law』からの曲も披露された。20歳になった今の自分がこれまで観てきた様々なライブの中でも視覚的な効果や演奏自体のレベルは他のどのバンドとも桁違いで、1つのエンターテイメントとして確立されていると当時の15歳の僕が感じるほどのものだった。フェスのステージなのに巨大なロボットが登場したり、マシューもかなり調子が良く透明のピアノの鍵盤の上ではジャンプをしまくり、おしりを振りながらソロを弾きこなす姿やギターでバスドラを破壊する様子は狂気的なものでもあったが僕たちを魅了した。
 蒸し暑い灼熱の8月の夜だ。オーディエンスの熱量も限界を突破し倒れる人も中にはいたし、警備スタッフが無料でボトルの水を配りそれを客同士で回していくというような光景も初めて目の当たりにした僕には新鮮でショックだった。そんなハイボルテージな空間に突如エレクトロな低音とリズムが響き渡った。「Madness」だ。落ち着いたテンポと音数、涼しいメロディとコーラス、そして“気持ちいい”としか形容できないギターソロ、一瞬にして場内の雰囲気は変わった。そして僕はその時のすべての状況とあまりにも美しすぎるこの曲に胸がいっぱいになりライブ中に初めて涙を流した。“今の自分”の血となり肉となった音楽の本質を身をもって体験した初めての瞬間だったのだとそう思う。
 そしてちょうど5年前の夏休みが過ぎた頃から自然と音楽やロックに求めるものが「かっこよさ」や「激しさ」だけではなくなった。「気持ちよさ」であったり「サイケな感じ」であったり、より抽象的にはなるけどより音楽が身近な感覚で自分と共存していくものだと思えるようになった。もしあの暑い夜に聴いたあの「Madness」が無ければ、、、
 
 
 
 2018年の汗ばむ蒸し暑い夜、僕は今年も「Madness」を聴きたくなる日が近づいている。楽しみだ。

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