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前を向くということ。

wacciという私の居場所

幼い頃少々複雑な家庭環境で育った私は、
「人」というものに期待しないように求めないように生きて来た。
 

人に”裏切られた”というような、
立派な理由があるわけじゃない。
 

誕生日
クリスマス
授業参観
 

子どもが楽しみに待つような日も、
おめでとうの言葉もプレゼントも見てくれる人もおらず、「そういえば昨日だったね」と後で言われてしまうような。自分以外の人にとって私は、そんな風に簡単に忘れられてしまう存在だったからだ。
 

期待をすれば、求めてしまえば、
自分が悲しい思いをするだけ。
自分が傷つかない為の防衛本能だった。
 

幼い頃は、自分だけがそうで、自分以外の人は幸せな日々を送っているのだと思っていた。
 

38年。
それなりに長い人生を生きた今思う。
 

世の中には、私のように忘れられてしまうような存在の人の方が多いのではないだろうかと。
 

努力を認められたり、
誰かに必要とされたり、
そんな人の方が少ないのではないだろうかと。
 

そんな事を思うようになったきっかけは、
ひとつのバンドとの出会いだった。
 

「wacci」
 

とても穏やかで、優しい雰囲気の5人組だ。
色々な巡り合わせがあり、初めて行ったライブ。
私はそこで、沢山の涙をみた。
 

「大丈夫」という曲では、MV通りの振り付けをみんな楽しそうに踊っていた。そんな人たちとは対照的に、タオルで顔を隠して肩を震わせてる人もいた。
 

 涙を流した君にしか
 浮かべられない笑顔がある
 そのままの君で大丈夫
 こぼれおちた分だけ 強くなる
 

そんな、文字にしたら綺麗事にしか思えないような歌詞の歌に、その人は涙していた。
周りを見ると、涙しながらも笑顔を浮かべている人もいた。
 

私だけじゃない。
 

泣いてる理由を聞いたわけでもないのに、
そんな事を思った。
 

そんな風に涙する人たちを、
ステージにいる5人は慰めることもなく、
声高に励ましたり応援したりすることもなく、
ただ優しい笑顔で見つめていた。
 

「歌を聴いて泣く」という感情はあまりなかった私にとって、その光景はとても穏やかで優しい気持ちにしてくれた。
 

この場所は、とてもあったかいなぁ。
 

そんな幸せな気持ちでライブを楽しんでいたはずなのに、始まった曲に、私は周りを見る余裕もないほどに号泣してしまった。
 

「東京」という曲だった。
 

 ねぇ
 いつでも どこでも 居場所を探し続けて
 負けちゃだめだと 一人ぼっちで唾つけて
 寂しいって もうダメって 雨格子 籠の中で
 うずくまってる君はそう 僕みたいだ
 

言葉が、
次々と胸に刺さった。
 

期待せず求めず、
「私は可哀想ではない」と必死に生きていた幼い頃の自分が思い出されて苦しかった。
 

必死に堪えた涙も、
次の言葉と優しい歌声に崩壊。
ぼろぼろと溢れだした。
 

 ねぇ
 上手な言葉の一つも言えないけれど
 せめて心を迷いなく開けるように
 無理矢理に励まさず 君と一緒に泣きたくて
 君の目に映る 東京を生きたくて
 

うずくまって泣いている幼い頃の自分の隣に、
一緒にしゃがみこんでくれて、
私が泣きやんで顔をあげるまで黙って待ってくれているような、そんな不思議な感覚。
 

泣いているのに、
心はとても温かかった。
 

曲が終わりに差し掛かり、
涙が止まったところで私は顔をあげた。
 

ボーカルの人と、
目があった気がした。
 

彼はじっと目を見た後、笑った。
声もないその視線と笑顔から聞こえてきたのは、
頑張れという力強い励ましではなく、
「大丈夫」という優しい言葉だった。
 

止まったはずの涙がまた溢れだした。
だけど、私は下を向かず泣きながら彼に笑ってみせた。
 

自分の中で、
何かが変わった気がした。
 

それは人生が変わるような大きなものではない。
ただ、前を向いて笑えるようになったという程度の、小さな小さな変化。
 

だけど、その小さな変化のおかげで、
色褪せて見えた毎日が少しずつ楽しくなっている。
 

人が生きていくのに必要なのは、
一緒に手を繋いで歩いてくれるような
優しい音楽なのかも知れない。
 

そんな、
大袈裟な事を考える余裕も出て来た。
 

大丈夫。
 

根拠はないけど、
そう思って笑っていたら、
 

きっと私は大丈夫。
 
 
 
 

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