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アラサー女子、まんまと釣られる。

寺嶋由芙「結婚願望が止まらない」を聴いて

会社の休憩室で飛び交う会話が思わず耳に入ってくる。
「この間の合コン最悪だった。少しは会話を盛り上げろって感じ。」
「また友達が結婚するんです。ご祝儀代で金欠ですよ。」

人間ひとりとの関係でそのように悩む姿が逆に羨ましく思えた。
冷えたミネラルウォーターをコップに注ぎ、そそくさと自分の席に戻った。

恋愛というものは人間を狂わせる。
10代の頃のような相手が好きだからとか恋している気分が好きとかそういったものはとうになくなった。
むしろ人と関わることすら面倒だと感じてしまう。

年齢を重ねるうちに恋ではなくて愛とか、今後の人生とか家族計画とか深くて重い言葉が頭の隅から離れなくなってきた。
目や耳を塞いでもふとした瞬間に心の中に入り込んで身体を循環していく。

そんな私が逃げ込むようにはまっていったのはアイドルだった。
中でも寺嶋由芙を特別視している。

彼女の好きな部分はたくさんあるが、とにかく楽曲が良い。

4月に発売されたアルバム「きみが散る」の中でも、4曲目の「結婚願望が止まらない」が刺さる。

「ああ 友達がひとり幸せになるたびに 自分がすこし不幸せになる気がするよ」

これである。
これを言ってのけるアイドルが他にいるものか。

外面でおめでたがっている独身女性はみんな同じことを思っているはずだ。

結婚式なんてほんとうは行きたくないって。
結婚は正解じゃないなんていうけど羨ましいんだって。
形だけでも人より幸せでありたいんだって。

「背中のチャックが上手く下ろせない なんだか涙が出て来るよ」

わかる、わかりすぎてしまう。
なぜパーティードレスは着づらい仕様なのだろうか。
こんな些細なことも上手にできない自分に泣けてくるのだ。

30代ともあれば近しい人の結婚式に出席するイベントが発生してくる。
歌詞の冒頭のように奇しくもブーケを拾ってしまうこともあるだろう。
嬉しさが寂しさと孤独に飲み込まれてしまう瞬間。

これをアイドルである彼女が歌ってしまう。

うちに潜めている毒をこんなにあっさりと美しくさらけ出してしまう彼女に見事に釣られた。

アイドルという立場を利用してこの曲を歌うということはかなり勇気のいることだろう。
これは寺嶋由芙というひとりの女性を偶像でなく現実に確立するための一曲である。

狙ったようにCDジャケットと表題曲「きみが散る」の衣装、がウエディングドレス風であることも緻密に計算されているのだろう。

人間は寂しいから美しいのだ。

アイドルの定義が不明瞭な昨今、寺嶋由芙にはこれからもこの生き方を貫いてほしい。
等身大の自分をいちばん美しく表現してほしい。

彼女の存在が私はこれでいい、と肯定してくれるのだから。

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