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ありふれた特別

1人のELLEGARDENファンの話

私とELLEGARDENの出会いは、決して劇的なものではなかった。
高校1年生。所謂、邦楽ロックと呼ばれるジャンルの音楽を聴き始めて暫く経った頃。
音楽雑誌や、ロックフェスの出演者欄で名前だけはよく目にしていたバンドの曲がたまたまラジオで流れて、気になったから友人づてにCDを借りてみた。
それが、ELEVEN FIRE CRACKERSだった。

初めて手にした彼らのCDをMDコンポに入れて再生ボタンを押した、ここでやっと身体中に電流が走ったような衝撃を受けた、訳でもなかった。
ただ、ああやっぱり格好いいなぁ、知り合いに貸してくれる人がいて良かったなぁと、そんな事を考えた記憶がぼんやりとある。

いくら思い返してみても、私と彼らの音楽との出会いは、他のELLEファンが語るそれらに比べるととてもありふれていて、穏やかな邂逅だった。
でも、借り物であるそのアルバムを友人に返した後、品揃えの悪い田舎のCDショップやレンタルショップを自転車で巡り、ひたすらELLEGARDENの文字を探し回った。
朝、家を出る前にウォークマンに差し込むMDは、いつの間にかELLEばかりになった。
嫌な事があった時、自己嫌悪に押し潰されそうな時、帰宅後の自室で1人、歌う曲も。

中学や高校時代、日に日に成長していく心と身体と、置かれた学校という閉鎖的環境が生む不和に翻弄され、もがき、神経を擦り減らした経験のある人は、恐らく私だけではないと思う。
10代の子どもの視野は狭い。その中であれこれ考えて煮詰まって、一時を万事に捉えてしまう場面も沢山ある。
そうやって行き詰まる度、ELLEの曲が救ってくれた。
ポジティブな曲は立ち塞がった壁を取り払い、ネガティヴな曲は壁の前で蹲る傍らに寄り添ってくれた。
世界は広くてシンプルだという事。
周りの声に埋もれがちな、自分自身の本当の声を聞く術。
自分にとって本当に大切なものなら、捨てなくていいんだという事。
夢見がちだと笑われる理想を持ったまま、生きていっていいんだという事。
周りの大人は誰も教えてくれなかったけど、ELLEの曲から教わった。

高校2年生の秋。地元に1つだけあった小さなライブハウスで、初めて彼らのライブを見た。
狭いステージに立つメンバーと、フロアを埋めたオーディエンス。
4人と大勢が向かい合って、互いの熱を交換し合っているようだった。
スローテンポな曲が演奏されると、フロア中の意識がステージに注がれているように鎮まり返って、アグレッシブな曲が演奏されると、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような大騒ぎになった。
初めは圧倒されてしまって身動きできなかった私も、いつの間にかただ楽しくて、幸せで、ELLE本当に好きだ、なんて心の中で叫びながら、見よう見まねで拳を突き上げていた。
終演後、幸せだった時間を何度でも鮮明に思い出せるようにと、数ヶ月分のお小遣いでTシャツとタオル、リストバンドを買って帰った。
でも、それらを身に付けて再び彼らのライブに行く事はなかった。

好きなバンドの活動を追いかけられなくなる経験をしたのは、ELLEGARDENの無期限活動休止が初めてだった。
これからも、新しいCDの発売を心待ちにしたり、ライブに行ったり、ラジオ、雑誌などで彼らの曲とその活動に触れていられると疑いもしていなかった私には、その発表が活動の終了を表す報せに聞こえた。
休止前最後のライブで、「これが最後じゃないから」と告げた細美さんの姿をテレビ画面越しに見た後も、その言葉をずっと信じ続けてきたかと問われたら、はっきりと頷く事はできない。

それでも、この先、彼らの作り出す曲も空間も更新される事はないのかもしれないと思いながらも、ELLEの音楽が大切なものである事は変わらなかった。
高校3年生、入学した年からずっと適当な大学名を書いてきた進路希望調査書に、初めて本気で進みたいと思った進路を書いて提出した。翌日、早速担任教師から呼び出された。
地元ではそこそこ名の知れた進学校で、入学時からそこそこの成績を維持してきた生徒が、3年目の進路希望調査書に突然、私立の専門学校の名前を書いた事を、担任教師は一時の気の迷いか、反抗心からの行動だと思ったらしかった。
でも、そうではないと分かると執拗に責めた。そんな仕事、就ける訳がない。お前は先生方の期待を裏切るのか。
私は小さい頃から、大人に叱られる事の少ない子どもだった。だから、よく怪我をして帰ってきたり、学校の成績は赤点スレスレ、思春期には親が学校に呼ばれるような事態を引き起こしていた兄と比べられた。先陣を切って誤ちを犯す兄の姿を観察して、自分は同じ道を選ばないようにしているんだろうね、と言われた事もある。大人の手を煩わせない、良い子だと思われていた。
でも、自分の本当の姿に、この時改めて気付いた。私はいつも、自分の意思で進む道を選んできた。やりたい事をやってきた。それが、たまたま周りから評価される生き方だっただけなんだと。そして、きっとそれは、今回の進路選択をもって終わるのだと。
でも、それを惜しいとは思わなかった。不思議と、不安もなかった。
 

Go cry go smile
It’s something good to do to live as you want
I’m on your side
Your life is all yours
So don’t let other people force you to be good
Be kind to yourself

【風の日/ELLEGARDEN】
 

私の人生は全て私のものだと、自分が笑顔でいられる選択が正しいのだと、知っていたから。

あれから10年経って、27歳。
高校最後の年に志した職に就く為に住み始めた、故郷である東北から遠く離れた土地で、ELLEGARDEN活動再開の報せを受け取った。
驚いた。本当に驚いた。ここ数年で一番取り乱して、興奮した夜だった。本当に嬉しかった。
そして、チケット公式一次先行。応募した日からずっとそわそわして、当落発表の日は朝からドキドキして。
13時、少し時間はかかったものの、スマホ画面に表示された当落結果を、何度も何度もログインし直して確認した。
結果は当選だった。

この10年、本当にいろんな事があった。
私にも周りにも沢山の変化があって、そのせいで受け入れられなくなったり、思い出せなくなってしまったものもある。
でも、ELLEGARDENはそうはならなかった。

新しいCDが発売されなくても、ライブが行われなくても、各メンバーが所属する新しいバンドが人気になって、私が高校生の時ほど彼らの曲を聴かなくなっても。
彼らの曲に何度となく励まされて、凹まされて、最後には背中を押されていた高校生の私が選んだ道の続きを歩く私も、その頃の記憶に、頭の中に鳴り響くフレーズに、何度となく救われた。

今でもしんどくなる事はある。
いろんな事を諦めるべきなんじゃないかって、思う時がある。
でも、心から笑える場所にいたい。ここが好きだと、胸を張れる場所に。
恐らくここがその場所なんだろうと思える限りは、踏み留まりたいと思う。
 

迷わずにすむ道もあった
どこにでも行ける自由を
失う方がもっと怖かった

【虹/ELLEGARDEN】
 

いつか、今は大事に持っているものも、手放す日が来るのかもしれない。
そうだとしても、今はまだその時でない事は分かる。
それなら、まだ持って歩けばいい。
そんな選択も含めて、私は自由だ。
ずっと自由だったんだと、教えてもらった。
 

周りで交わされる話し声、漂うBGM。
突然、落ちる照明と、沸き立つフロア。
きっと、爆音で包まれたステージに彼らは現れる。
そこから先には、どんな展開が待っているんだろう。

10年経った。
それでも、変わらないものがある。
いつも窮屈さを感じていた心を、自由にしてくれた場所。
捻くれた高校生に、こんな生き方がしたいと思わせてくれた音楽。
今でも、変わらず大切で、大好きだ。

大好きだ、ELLEGARDEN

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